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「風流踊」 ユネスコ無形文化遺産に登録決定 〜小河内の鹿島踊〜

「風流踊」 ユネスコ無形文化遺産に登録決定

2022年11月30日、風流踊がユネスコ無形文化遺産に登録決定、というニュースが発表されました。

今年9月に、知り合いと一緒に奥多摩ツアーに参加し、そこで見学したのが、今回登録されたた風流踊のひとつで東京、奥多摩に伝わる小河内の鹿島踊でした。

ダムに沈んだ村の芸能

日本各地に伝わる郷土芸能は、それぞれの土地で、そこに住む人たちによって大切に受け継がれてきたものですが、後継者不足が深刻なところも多いとききます。小河内の鹿島踊もその例にもれませんが、さらにこの地の特殊な事情が、状況を難しくしています。

小河内の鹿島踊発祥の地、小河内村は、その大半が、1950年代に建設された小河内ダムの底に沈みました。村に住んでいた人たちは、離散を余儀なくされ、鹿島踊も一時途絶えてしまったそうです。

その後20年近く経過し、鹿島踊を中心に村人たちが集まる機会を希望する声が上がり、鹿島踊保存会が結成され、鹿島踊は復活しました。今もなお、小河内神社の奉納祭などで舞われています。

土地があり、そこに住む人がいてこそ継承されていくのが郷土芸能です。それなのに、小河内の鹿島踊には故郷を失い、その地に住んでいた人々は、あちらこちらの土地への移住を余儀なくされました。

別々の土地に暮らす旧村民が、忙しい日常の合間を縫って集まり、守る努力を続けているところに、他の郷土芸能とは違う困難が伴います。

後継者問題

コロナ禍が始まる前にも一度、奉納祭を見に行ったことがあります。神社に集まった見物客は10名くらいだったでしょうか。国の無形民俗文化財に登録されている貴重な郷土芸能、という華々しいイメージからほど遠く、観光の目玉になっている様子もなく、寂しい印象を持ちました。

見学者に配られたチラシには、踊りの説明とともに、

★鹿島踊参加者を募集中です★(年齢、男女は問いません)

とありました。

郷土芸能は本来、地元の人々のものであり、小河内の鹿島踊は、男性が女性に扮して舞うところが特徴の踊りです。それなのに、よその人でもいい、女性でもいい、というメッセージから、後継者不足の深刻さと、踊りを守ろうとする人たちの必死さが伝わってきました。

将来への希望

今回、数年ぶりにこの踊りを見に行き、演目を終了したばかりの踊り手さんや、保存会の方から直接話を伺うことができました。

踊り手不足は依然深刻で、その日も囃子方の本来の人数を確保できなかったそうです。旧小河内村の住人も代替わりが進み、小河内村の記憶を持たない世代に、故郷の村の芸能に目を向けてもらうことの難しさも語られました。

それでも、その日の最後の演目には中学生2人が加わり、もう少ししたら、彼らも舞台を踏めるようになるだろうと、地元の方は嬉しそうでした。

もしかすると、将来的には女性が舞う日もくるかもしれないが、できる限り男性が舞い続けたい、とも話していました。

まだまだ厳しい状況の中ですが、地元の方達の努力により若い後継者が育ち始め、男性が舞う伝統を続けよう、と思えるくらいには、事態が好転したのかもしれません。

郷土芸能を応援するということ

今日、一緒にツアーに参加した知り合いに会い、早速この話題になりました。

「ニュースを見た時、踊り手のおじさんたちの顔が思い浮かんだわ。
おじさんたち、喜んでいるでしょうね。」

その言葉を聞いた時、郷土芸能を応援するとはこういうことか、と腑に落ちました。

地元に足を運び、見て、話を聞き、関心を持ち続ける。踊りを継承するとか、寄付するとか、大げさに難しく考えなくても、ご近所さんのように気にかけ、よいニュースがあれば喜ぶ。そういう人が増えていけば、地元への関心も高まり、後継者育成も活性化していくのではないでしょうか。

小河内の鹿島踊は、安土桃山から江戸初期にかけて、京の都で流行った若衆歌舞伎の流れを汲むともいわれる、長い歴史を持つ芸能です。小河内の鹿島踊に関心を持たれたら、ぜひ奥多摩を訪れ、ひととき江戸の文化に浸る贅沢な時間をお過ごしください。

小河内の鹿島踊 見学のご案内

小河内の鹿島踊は、毎年9月の第二日曜日に、小河内神社と、奥多摩水と緑のふれあい館ホールで披露されます。
事前申し込み不要、誰でも自由に見学することができます。


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