大学時代、フランス語クラスの例文として出てきました。
平易な文章ですが、内容は思索に満ちています。
人気漫画「アオアシ」にも登場する有名なフレーズですね。
葦は、強風や大水で折れたり枯れたりするため、弱いと表現されたのでしょう。
ただ実際は、葦は成長が速く、繁殖力の強い植物です。
地下茎を伸ばして芽を出し、群落を形成します。
水辺に生える葦の群落は、水を濾過し、小動物や鳥、魚、水生昆虫の生息地となります。
古事記の世界
多くの生き物の命を育み、生命力あふれる葦の姿は、古事記にも登場します。
豊葦原水穂国
同じく古事記の、日本ができた時の記述です。
豊かに葦が茂った、稲が豊かに実る国。
これが、日本につけられた美しい名前でした。
豊かな水と葦が生い茂る、古代の日本の景色が見えるようです。
ヒルコの葦舟
続いて、イザナギとイザナミの婚姻の場面です。
葦舟で赤ん坊を流した行為の解釈については、諸説があるようです。
悪いものを祓う、追放する乗り物とする説の他、葦の生命力によってヒルコを守護する船、あるいは葦舟を神聖な乗り物ととらえ、太陽信仰との関連で、太陽神の蛭子が海を往来するための太陽船とする説もあるそうです。
参考元:公益財団法人 淡海環境保全財団『ヨシとは?』
國學院大學 古典文化事業『水蛭子』
葦舟は、古くから使われている原始的な舟ですので、この場面に登場することに不思議はありませんが、それぞれの説を見ると、葦そのものにも意味があるように思えてきました。
調べてみると、葦が神事と関わる情報が見つかりました。
葦と神事
福岡県宇原神社の例大祭では、山笠鉦卸し(かねおろし)という清めの行事があり、葦が使われます。
愛知県津島神社の天王祭では、神葭(みよし)流し神事という、厄神を流す神事があります。
参考:尾張津島天王祭ー神葭流し神事
葦船社、蛭子社という蛭子がまつられた神社もあります。
茎の一方にのみ葉がある片葉の葦には、いろんな伝説があるようです。
ただし、牧野富太郎博士は、片葉の葦の存在自体を認めていなかったようです。
人間は一本の葦である、と発言したのが日本人だったとしたら、人間は神聖な力を持っている、という意味になりそうです。