「四季の里演劇祭」に参加した話
久しぶりに noteを更新。
気がついたら1年以上も更新していなかった。
誰も待っていなかったと思いますが、一応、「お待たせしました」と言っておきましょう。
2024年7月13日(土)に茨城県小美玉市で開催された「四季の里演劇祭」に参加してきました。
「茨城劇王」と「四季の森シアターフェスティバル」の同時開催でして、私は「四季の森シアターフェスティバル」に参加してきました。
「20分以内の作品」という縛りの中「ラクカラーチャ」という作品を持って行きました。
香川県では何度も上演している作品でしたが、今回、茨城県ver.に演出も一新しました。
個人的にもかなり久しぶりの県外公演だったので「大丈夫かなぁ」という不安がありましたが、お客さんも暖かく迎え入れてくれて、スタッフの方々も献身的にサポートしてくれて、何にも心配することなく全力で芝居に向き合うことができました。
お部屋がいっぱいになってしまい、でも、少しでも多くの人に見ていただきたく、かなりお客さんに無理をさせてしまったなぁ……と思うところもありますが、皆さん嫌な顔ひとつせずにご協力いただいてありがたかったです。
初めての場所でしたが作品が受け入れられた気がしてとっても嬉しかったです。
車で片道12時間以上の道のりでしたが「来て良かったなぁ」「また行きたいなぁ」としみじみ思います。
「四季の森シアターフェスティバル」という名前からもわかるように「演劇祭」なんですね。
なので、自分が出演する合間は色んな劇団さんの観劇に走り回っていました。
自分たちの作品の準備があって出番の前後は動きが取りにくかったり、観劇したい作品が被ってしまったりで「身体、もしくは意識が分裂しろ!」と思いながら奥歯を噛み締めていました。ぐぎぎぎ。
そんな中で観劇できた作品についても観劇時系列で書いてみようと思います。
いつもは「X」に投稿するのですが、今日はなんだかちゃんと文字で書きたい気分。
……というか、いつも苦悩しながら文字数を取捨選択しているくらいなら、ちゃんと書きなさいよ。反省。
(1)ガラクタ宝物殿(東京/福岡)「遠投」
「せっかく野外エリアがあるから見てみようかなぁ」と軽い気持ちで観劇。
最初は「?」がたくさん浮かんでいましたが、話が進むにつれて「!」になって、状況が回収されていくのは痛快で気持ちよかった。
しかも謎解き的な気持ちよさではなく「馬鹿だなぁ」と笑いながら気持ちよくなれる、何だか初めての感覚。
私も何回か野外劇を見たり演じたりの経験があるんですが「どれだけ集中力をこちらに向けてもらうか」とか「声をどうやって届かせるか」ということに苦心していた記憶があります。
そんな中で野外といえどクローズドな空間を選択したり、作れるようにしたりしていました。
けれど、ガラクタ宝物殿さんは吹き抜けの芝生エリアで始まったので「マジで!?」と困惑しましたが、その広々とした空間を全面的に使用し、暑い中、走って山を駆け上がって大声出して、とっても気持ちのいいお芝居でした。
同時に新しい野外劇の可能性を提示してもらった感じがして嬉しくなりました。
思わず「元気元気協会」のステッカーを買っちゃいましたし、追加でお使いをお願いするほどにハマってしまいました。
私は役者の身体性が強いお芝居ほどハマる傾向にあるね。
役者がしんどい思いをしていればしているほど好きになる。
(2)TeamSwit©︎h(千葉)「竜の棲むいえ」
次も「野外エリアの芝居が見たいなぁ」と思って観劇。
開演前にペストマスクを着用した役者さんが舞台を行き来し、上手側にトイピアノが置いてあり、観劇前から世界観を想像させてくれました。
野外でゴリゴリのファンタジーで大部分がひとり芝居なので、大変だったと思うのですが、こちらの想像力を信じて渡す情報の取捨選択を綿密にしているんだろうなぁ、と想像しました。
その中で中庭に生殖している一本の大きな木が物語の起点ポイントとなって展開されていき、尚且つその木自体もファンタジー感が会って、途中から本当にその世界観に迷い込んだように錯覚しました。
その木がとっても素敵で、作られた舞台美術とは違って、生命感というか統制されていないフォルムから感じる自然感というか……うまく説明ができないのですが、とにかく美しかった。
その場に存在しない子どもの竜が草や花、音や音楽を吸収しながら大人になって、最後に成長した実体の竜が舞台に現れた時はワクワクしました。
あと、あまりお芝居の内容に関係はないのですが、Youtubeのずんだもん解説動画ばっかり見ている自分にとって、前説の音声がずんだもんだったのはちょっとクスッとしました。
(3)楽園王(埼玉)「宮沢賢治「よだかの星」」
我々と同室の劇団さん。
「同じ和室をどうやって使うのかな?」って興味があったのもあるのですが、何とて「宮沢賢治」で尚且つ「よだかの星」となれば見るしかない!と思って突撃!!
しかし、幼少期に読んで以来だったので話の内容は殆ど覚えていない状態でした、が、そんな心配は必要なかったです。
宮沢賢治の素敵な設定と文章、絶妙な音量で薄く流れている音楽、薄暗い和室に吊るされた照明……その状況だけでも最高なのに、役者さんの圧倒的力量とリーディング形式であることを忘れさせるような演出。
床に散らばった台本が話が進むにつれてよだかから抜け落ちていった羽根に見えて胸が苦しくなり、そして、墨汁で書かれた「市蔵」と「よだか」の文字と使い方に完全に涙腺が破壊されました。
涙と共に魂が浄化されていってしまい、再度、本番前テンションに持ち上げるのに苦労するほどでした。
あの文節の区切り方はどういう発想なんだろうか?あの演出がすごく効果的で文字がスルスルと自分の中に入ってくるのを感じました。
言葉を発すれば涙腺が崩壊してしまう!と感じて、無言で感想を言わずにおひねりを投入してしまいました。無愛想。ちゃんと感想を伝えたかった。
そのフラストレーションは劇団内で熱く語り合って共有して解消しました。
今でも思い出して泣ける位には深く心に突き刺さっています。
(4)ケモノミチ(香川)「ハラハラプラプラ時間旅」
茨城県で同郷のお芝居を見るってどういう状況?って思うでしょう。
でも、実はケモノミチを観劇するのは初めてだったりすんです。初めましてが叶って嬉しい。
本番後のバタバタした中で駆けつけたのですが、安定感抜群のオトナの方々のお芝居はとっても精神的に安心して見ることができるのが良い。
だからといってしっとりとしたオトナなお話とお芝居ではなく、ファンタジーなわちゃわちゃしたお話と積極的に笑いを取りにいくお芝居。
設定もわかりやすくて、とても見やすく聞きやすいお芝居で、すんなりと頭の中に入ってくる。
茨城県にお芝居を持っていくから水戸で、その繋がりで水戸黄門一行が出てくるお話を作家さんの個性も組み合わせながら書き切る力量は流石としか言えない。
ユカリーヌさんにしか書けない脚本だな、と思った。
しかし「香川」なのは女性陣であって、男性陣はみんな香川県外で、しかも結構遠い。
そんな中、どうやって稽古してここまでの完成度に高めているんだろうか。
そう考えると役者陣の力量の高さも凄いよね。
(5)架空カンパニーあしもと(大阪)「ゆらぐ」
再び野外へ。
「オブジェクトシアターカンパニー」という聞き慣れないワードに興味を持って観劇へ。
「モノとの関係性を問い直す」という試みはコンテンポラリーではたまに聞くワードだけど、演劇でそんな試みをしている人たちはいなかったような気がするな?と考えながら歩いていく。
靴の面白さを説明してもらいながら「そんなこと考えたことなかったなぁ」とぼんやりと思っていましたが、作品が始まったら「なるほど!」と膝を打つ。確かに靴があるだけで、そこに架空の人物が現れる。
でも、そこからどうやって展開するのかな?と思っていたら靴が縦横無尽に動き、役者の身体をも踏み台にしていく。役者が靴を操作するのではなく、靴に役者が操作されているような錯覚に陥る。
言葉を発することなく、音楽が流れる中、ただただ靴とのセッションが続く。
穏やかに、だけど初めて見る刺激的な時間が流れる。
身体性の強さに興味を持ってお話をさせてもらって、バックグラウンドを聞かせてもらって「なるほど」思った。
もっともっと、この人のいろんな作品が見たい。素直にそう思う。
やっぱり身体性に惹かれる。
(6)集団たま。(東京/福岡)「シンドラーのリフト」
ちょこっと見えたリハーサルと、楽屋で見える姿に興味を引かれ観劇。
最初に思ったのは「シンドラーのリフト?シンドラーのリストじゃなくって?」という感想。「シンドラーのリスト」は見たことないけど、言葉としては知ってたのでハテナが浮かぶ。
お芝居の中の言葉遊びを見ながら「なるほど」……と思いたいけれど、そう簡単に納得したり理解した気にさせてくれない。
「シュール」とか「不条理」とか「前衛的」とか……そんな言葉が安っぽく聞こえてしまう。カテゴライズされることを拒否してるかのような独立した強さを感じる。
感想を捻り出せば出すほど「なんか違う」と思ってしまう。私から出てくる言葉がどれも当てはまらない不思議な感覚。でも、だからと言ってとっつきにくかったり見にくいわけでもなくファニーなところもたくさんある。
例えるなら「高熱でうなされながら見るサーカスの一幕の夢」みたいな。
意味わからないかもしれないけれど、私の中では上手に説明できていると思う
心を鷲掴みにされた。
多分、一瞬でファンになってしまったのだろう。
交流会でお話しさせていただいてありがとうございました。とっても嬉しかったです。
徳島県にも来ることがあるとのことなので見に行きたい。
(7)シアフェス特別企画「インプロチャンバラ」
「インプロ」なのか「チャンバラ」なのか。
そんな疑問を持ちながら会場へ。
そして理解した。「インプロ」でも「チャンバラ」でもない「インプロチャンバラ」なんだ、と。
新しいカテゴリーが爆誕した瞬間でした。
うまく回っているか回っていないかは別にして「大人が本気でチャンバラ」している姿はめちゃくちゃ面白い。インプロせずとも。
そして決勝戦でようやく観客含めてルールを理解して出演者がインプロに全振りしたのも面白い。一度で二度楽しめるお得感。
全国各地の代表者が「初めまして」の状態から本気でチャンバラしたりインプロして鎬を削りあっている姿はワクワクする。
そして、その謎の高揚感をそのままに、小高い山の上から白装束の男女が現れ、急に繰り広げられる「高速マイムマイム」。
周囲の演劇人が我先にと輪に入っていき、速度が上がるに連れてひとり、またひとりと脱落していく。
それを見ながらひとりで「いや、ミッドサマーかいっ!」ってツッコミ入れてました。
しかし、皆が楽しそうで、特にイチニノさんたちが楽しそうで「いや、イチニノ可愛いな!」ともひとりでツッコミ入れてました。
私は陰キャなので輪から離れた遠くでツッコミを入れるしかできないのです。嫌なやつですね。
(8)劇団ヒロシ軍(長崎)「今更、おまえが青春のことをアオハルって言ったところで誰も何も思わんよ」
実は何気に劇団ヒロシ軍も初観劇。
噂の「ペットボトルナックル」は見れるのか?とワクワクしながら席に座っていました。
コメディとは聞いてるけど、どんな感じなのかな?コントかな?と色んな想像をしていましたが、前節というか開演まで時間があったので一発ギャグ?を披露してくれて「なるほど。そんな感じなのね」と心の準備ができました。
ショートショートのコントが中心で、昔、下北沢で「鉄割アルバトロスケット」を見たことを思い出しました。懐かしい。
仄かなアングラ臭を感じながらも、気兼ねなく一緒にニコニコと笑えるような作品の数々。
荒木宏志さんの繊細な演技というしっかりとした土台と、フルドライブ林こと林年行さんの飄々とした演技がクセになる。あっという間の20分間でした。
全体的には「くだらないなぁ」と笑ってしまうのだけど、ちゃんと「気兼ねなく笑わせてくれる」と言いうのは実はかなり難しいんじゃないかな。そして、そんな難しいことをいとも簡単(に見える様)に軽々と軽やかに超えていっている。
改めて振り返ると凄さが身に沁みます。でも、やっぱりくだらなくて面白い。
あと念願の「ペットボトルナックル」が見れて大満足でした。
(9)バカバッドギター(東京)「グッバイ三ツ山」
カブフェスに出現する謎に包まれた存在、佐藤ホームランさんの謎を解明するために観劇。
名前はもちろんだけどビジュアルが強くてずっと気になってた。
なんだか懐かしさを感じるようなお芝居。舞台の感じもそうなんだけど、セットとか小道具とか衣装とかからも懐かしさを感じる。
「ザ・段ボール」って小道具を久しぶりに見たし、急にピンスポットに切り替わって独白っていう演出も久しぶりに見た。しかし、それが作風に合っていて面白い。
話も難しくなくすんなり理解できて、何も考えずに笑える。でも、最後にはちょっと涙ぐむ。いい作品。ラストで全てが救われた感じがした。
個人的には亡くなった後の表現が「ピンスポットの中で両手をパタパタさせる」というのがかなりツボ。
あと佐藤ホームランさんの乳首が光るのはズルい。あんな力技、笑わないわけない。ズルい(2回目)
初めて見るけれど、舞台から感じる全てのものが「バカバッドギター!」って感じで好き。
(10)劇団タイコバン(茨城)「作り話」
絶対に夜の「噴水エリア」の作品を見るんだ!と意気込んでいたので、最後に観劇する作品は決めていました。
「噴水エリア」という四方八方から見られる可能性があり、尚且つ4方向にオブジェクトが立っており、さらに野外という環境をどのように克服するのかにとっても興味があった。
ギターの生演奏とループマシーンを駆使した演奏が素敵。
その中で役者陣が物語を構築しては、壊して、再構築しては壊し……を繰り返す。
何が現実で何が虚構なのか段々とわからなくなる。
現実を虚構が蝕んでいく感覚。
照明との兼ね合いでどうしても顔が見えにくい場面が多々あったけれど、それも作品のスパイスとして機能してたように思う。
4方向囲み舞台というデメリットを4人の役者で上手くカバーしていて、男女2人2人のバランスも最適。
最後の台本を破り捨てる演出も観劇環境に合っていて、現実なのに非現実的な感じがして素敵。
夜の風が通る涼しい噴水エリアで、落ち着いてゆったりと、でも巻き込まれながら観劇ができたのはとてもいい経験だった。
書けたぁ!長すぎ!!
でも、これで自分の中の思いも消化できて大満足です。
最後まで読んでくれた人、いるのかな?
すいません、ありがとうございます。
観劇後の交流会も楽しかったです。
普段は陰の者なので積極的に交流することは苦手なのですが、県外ということもあるのか、お酒の力もあるのか、色んな作品を観劇した興奮もあるのか、色んな人に相手をしてもらいました。
交流してくださった皆様方、ありがとうございました!
色々とお話ししてくださって本当に嬉しかったです。
そしてそして、最後にこの演劇祭を主催してくださったイチニノさんに最大限の敬意を!!
最後までお付き合いただきまして誠にありがとうございます。 「サポート」も嬉しいですが「スキ」も嬉しいです。 思ったり感じたりしたことがあれば、是非「コメント」もしていってくださいね。 本当にありがとうございました。