風呂

お風呂にのんびり浸かるのってなんでこんなに気持ちいいんだろう。一人暮らしの時はシャワーでサッと済ますだけの生活で、それでいいやと思っていたけど、今更ながら、その気持ちよさを実感している。多分、旦那が風呂好きな影響を受けているのかもしれない。お風呂に浸かりながら大声で歌うのが気持ちいい。あとは、好きな映画やドラマをつい夢中で観てしまい、のぼせることもある。抗がん剤やるとすごく体が冷えるので、いくらあったまってもあたたまりにくい。今回使っている抗がん剤は、手足症候群という症状が出やすいと散々脅されたのでビビりまくり、全身に回らないように、点滴投与した直後はなるべくさっと済ますようにしていた。でも、点滴中に冷やして、皮膚に必要以上に負荷がかかるようなことを避けて、充分に保湿することで避けられている気がして、最初のびびり具合はだいぶ緩和され、今となってはじっくりどっぷり浸かっている。
それで、浴室の電気を暗くして、お気に入りのキャンドルをつけて入るとか、オサレなことを雑誌や芸能人の話で見たり聞いたりして、なんかいいじゃん!と、自分では買うことは決してないけれども、海外のお土産やら素敵な女子からのプレゼントのキャンドルでリビングの棚の置物と化しているキャンドルでやってみたことがある。

①普段使いしてないので、棚に飾ってあったキャンドルの埃を払う。ずいぶん置いてあるので、水分や油分を吸っていて、結構取りにくくて埃が張り付いている。ティッシュとかで拭いちゃうと、ポロポロ落ちる。
②お風呂に入って体を流して、さあ、浸かるぞという時に、冬なら寒ーい脱衣所に置いておいたキャンドルを、半身乗り出して寒い思いをしてキャンドルを取る。ここで手を拭くためのタオルをおいておかないと、寒い思いをして一旦びしょびしょの体で出る羽目になる。
③火をつけるものを用意しておくのを忘れようものなら、びしょびしょの体をさっと雑に拭いて、リビングのライターを探しに出る。喫煙者ではないので、そのライターが全然見つからない。うろつくオランウータンは、リビングでTVを観ている旦那に冷たい目で見られながら風呂に戻り、冷えた体をいったん温め、②へ戻る。
④浴室の中でライターで着火しようとするもんだからなかなかつかない。やっと着いても、埃の落とし残しが焦げ臭く、それが燃えきってからいい香りがやってくる。
⑤ついたら風呂の縁に置いて、湯に浸かり、ようやくリラックスタイム。
なんだか気分はハリウッド女優。
⑥湯から出て火を消し、脱衣所にいったんおく。
⑦全身を拭いてパジャマを着て、キャンドルの火が消えてなかったらとそれが気になってしまい、いったんキッチンに置く。水をかけたいけど次に使うことを考えて我慢する。または、脱衣所に置き忘れて行って、後で旦那にすげー怒られる。 
と、まあ、私はこんな感じ。全然オサレじゃないし、オサレに入る人はもう浴室に置くための棚とかあって、置きっぱなしなんだろうか。キャンドルジュンさんとかに聞いたらなんかいい方法教えてくれるだろうか。ハリウッド女優気分になるよりも、使い慣れない火気への懸念と、風邪をひく要素の方が多い。ということで、シンプルに清潔を保って、体を温めるために湯に浸かるのが一番ということになった。
実家には猫がいた。この猫が本当に風呂嫌いで、いつもは小さいハスキーボイスでなあなあいってたが、こいつを洗おうと風呂場に入って戸を閉めると、
ぬうううううなああーーーごおおおおお、 
と地に這いつくばって何かに取り憑かれたように鳴き始める。洗うのを許してくれるのは、私の妹だけだった。許してくれるといっても、手には引っ掻いたキズがよくできていた。風呂は嫌いなくせに、私が風呂に入って浸かっていると、全面擦りガラスの戸の向こうにブチ模様がいるのが見える。開けると入ってくる。なんだ風呂好きなのかと最初は思ったが、洗い場でさんざん床を舐め回すと、満足げに出ていく。彼女にとって風呂は水飲み場だった。

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