永遠に届かない気持ち

先日あった友人の結婚式で、10数年ぶりに昔好きだった人をみた。
以前会った時は僕が結婚した後、何かのきっかけで中目黒でみんなで飲んだ時。会話はなく、トイレですれ違った時も一瞥と無言ですれ違っただけだ。

会の途中で、友達の子供から
「30歳くらいにしか見えないお姉さんだね!」
と言われていて、その時の驚きと嬉しさが混じった顔を久しぶりにみた。
久しぶりに彼女の笑顔を見てしまい、忘れようと蓋をしていた気持ちがとめどもなく溢れてしまった。

ずっと彼女への気持ちを忘れようとして、結果この10数年忘れていたのだけど、改めて思い返してしまった。そのせいで2ヶ月以上たった今でも胸が苦しくなってしまっている。お互い結婚もして、子供もいる中、今更こんな話を誰にできるわけでもないから、ここに綴って気持ちの整理をしたい。

彼女とは学生の頃から社会人になって数年間、フラれてまた付き合ってを何度か繰り返していた。いつも僕や周りを気遣ってくれて、言葉が多い人ではなかったけど、芯のある優しい人だった。
しっかりと自分の基準がある人で、僕が間違えている時いつも諭してくれた。僕は自分にない価値観を持っていた彼女が大好きだったのだと思う。

一度目の別れは、勤めていた販売の仕事を辞めて、僕がお金にだらしない時にふられてしまった。情けない話、お金に関してまるで無頓着で、彼女からお金を借りていたこともあった。そんなことが積もりに積もって、不満が爆発したのだ。若くて貧しかったとはいえ、生活の仕方を間違えていた。その頃のことを思い出すと恥ずかしい気持ちになる。

その後お金を返し、生活を少しだけ立て直してデートへ誘った。お台場にできた子供向けの科学館だった。今のようにネットで場所の詳細な情報がわかるようなことはなかったから、コンビニで立ち読みしたタウン誌かなにかでよさそうだなと思って選んだ。入ってみて子供しかいなかった時、やべーとこにきてしまったと思ったけど、、意外と楽しかった。そこを出た後も、出来立てのジョイポリスとか周りを散策した。吹き抜けの通路で周りを見ている時、僕の肩にふいに彼女が顔を乗せた。別れていたし、ボディタッチをするような感じの性格の子じゃなかったから、僕は驚いて顔を見た。彼女も驚いた顔をしていた。

帰り道電車の中で、彼女が急に泣き出して一度電車を降りた。理由を聞くと、今付き合っている人がいるけど、僕の方が好きだ。と言われた。
顔を肩に乗せたのも気持ちが溢れての行動だったのかと思って泣きそうになった。そんな気持ちを伝えてくれたことは、僕の人生で最も嬉しかった出来事の一つだ。

その後数週間して、彼女とまた付き合う事になった。
その時の複雑な気持ちは今も覚えている。ものすごく嬉しかった反面、付き合っている人がいるのに僕とデートしていたことをに少し嫌に思った部分もあった。今思えば、もしかしたら自分も同じようなことをされるのかな?と疑心暗鬼になってしまったこともあったように思う。

共通の友達はたくさんいて、毎日みんなで遊んで、休みの日は2人で過ごすことが本当に楽しかった。一緒にたくさん笑った。僕は怒ることがあまり得意ではないから、いつも何かあると怒られていた。彼女も言葉が多い方ではなかったけど、大事なことは考えを整理してから僕に伝えてくれていた様に思う。僕を正そうとしてくれた時は一緒に泣いたり、寄り添ってくれる素敵な人だった。

けれど、楽しい時間を過ごしていても、仕事を真面目に頑張って社会性のあった彼女と、斜に構えて社会に馴染めずどう生きるかを考えてた僕との距離は開きはじめていた。
僕は当時まともな仕事はしていなかったから、人から「彼氏ってどんな人?」って聞かれる度に嫌な思いをしたり、将来のことを考えると不安になったりしていたのだろう…当時の僕は自分の趣味や娯楽を優先して、彼女がどう考えているのかにまじめに向き合えていなかったと思う。

僕は彼女といれたらよかったけど、彼女の望みはもっと付き合っている時間を楽しみたかったんだと思う。2人で旅行や、思い出をもっと作るべきだったと今になって思う。一緒に夕飯を考えたり、作ったり、日々の楽しみを共にできていればよかったと思う。僕は生活もだらしなかったし、お金もないのに外食して、割り勘ばかりで…自分の余裕が無くてそんな事すら気付いてやれなかった。別れた後、共通の友人から、デートのご飯が割り勘だったことや、旅行に行きたいけど、彼はそんなこと考えていなさそうだと、悲しそうに言ってたと聞かされて、自分のことを本当に情けないと思って死にたくなった。

ずっと仕事や生活のことは彼女からも言われていて、このままじゃだめだと思って、求人の応募や面接は何度もしていた。そんな些細な動きも共有していれば少しは不安が少なくなったのかもしれない。でも当時は受かってから話せばいいやくらいにしか考えていなかった。彼女に寄り添えていなかったなと思う。
でもなかなか見つからず半年くらいがすぎた頃、彼女からもう好きじゃなくなった、また付き合うことも嫌だと言われ別れた。

本当に漠然と、彼女と結婚したいと思っていた。その気持ちを諦めきれなくて…定職についたあと、生活を改めようと行動した。
就職した会社の仕事は忙しく、やりがいもあった。
周りの友人には、フラれたし、彼女はもうなんとも思ってないのだから諦めろと言われ続けて、表向きは彼女を忘れたように振る舞っていた。この頃から自分の気持ちに嘘をついて、気持ちに蓋をして、彼女に対してどうでも良いように振る舞っていたんだと思う。でも全然まだ好きだった。

頃合いをみて何度か食事に誘って2人で話をした。
しつこいやつだと思われたくなくて、半年に一度くらいの頻度だったと思う。年明けに一度食事に誘って新宿で飲んだ。
年末が彼女の誕生日だったから何かお祝いをと思ったけど、、お金がなさすぎて自作のコンピCDを作って渡したことは死ぬほど恥ずかしい思いでの1つだ。就職した年頃の男からそんなプレゼントをもらって彼女もさぞがっかりしたことだろう。このことを思い出してしまい、穴があったら今すぐ入りたい気持ちになった。本当に自分はダサくて情けない男なのだと今更思う。

ご飯を食べ終わるくらいのタイミングで、年末に彼女のお父さんが亡くなったって話を聞いた。付き合っている時に彼女の家庭が少し複雑な環境だったことは聞いていて、何度か話を聞きたいと言ったことがあった。でもあまり彼女から話してくれなかった。むしろ嫌がられ、機嫌を損ねたこともある。
そのせいなのか、お父さんに関して話を聞きたかったけど、「そうか、大変だったね。」くらいのコメントしかできなかった…このタイミングで「お父さんのこと、聞かせてくれないか?」くらいのことも聞けなかったのは本当に悔やまれる。多分彼女からしたら「お前興味ないのか?」くらい思われても仕方がない。大事なことに後になってから気が付くような男だからフラれて当然だったのだと今は思える。

でも思えばそんなふうにお互いの生い立ちや生活を色々話したいと思ってもえらえてなかったのかもしれない。彼女から度々、信用できないと言われたことも思い出した。日々楽しく適当に生きていた僕は、彼女に対して誠実じゃなかったのだろうか?
好きだと言ってくれるのに信用できないと言われ、何が正しかったのか未だわからない。好きな人から浴びせられた信用できないという言葉は、ずっと心に残っている。だからこの時期は真面目に、できるだけ誠実に彼女へ接したかった。でも真面目に考えれば考えるほど、どう接するべきかわからなくなってしまっていた。空回りしているけど、共通の友人が多い中、誰にも相談できず、1人でずっと間違った方向に進んでしまっていたように思う。

また、彼女から、察して欲しいともよく言われた。「言われなきゃわからないの?」とも。僕の男性としてのスペックの低さからなのだろうけど…
そんなエスパーみたいなことできないから、お互いのことを話そうと伝えればよかったのに、、僕は文句も言わずそうなれるようにどうすればいいのか考えた。そのおかげでどうでも良いようなことも疑問に感じてしまっていた時期もあった、、今思うと完全に間違った行動だと思う。

その後、仕事を頑張る中で、生活は少しずつ改善していった。
でも、気持ちを隠す中で少しづつ自分の考えもひねくれてしまったように思う。少しお金が貯まるようになった頃、もう1度食事に誘った。
彼女の家の近くのなんてことはない居酒屋で2人で飲んで、どうでもいいようなことを色々話して解散した。
家の近くまで送っていく時、彼女は「また行きたい」と言ってくれた。僕に気をつかってくれてそう言っただけなのかもしれないけど、すごく嬉しかった。。でもなぜか僕はこの日の帰りに「またね」じゃなくて「さよなら」と言ってしまった。2人でご飯を食べて、楽しく話せたのはその日が最後になった。

少し時間が経ってから、彼女が男と歩いていたって話を友人から聞いた。
いてもたってもいられなくて、mixiで彼女にメッセージを送ろうか毎日悩むような日々が続いた。mixiにしたのはメールではもし彼氏といた時に嫌だろうなと思ったからというのもある。
でもなんて送れば良いかわからなかった。何日も悩んだ結果、mixiでの彼女とのつながりを断ってしまった。事実も確認しないまま、今度こそ彼女への気持ちへ蓋をして、全部忘れようと思った。

生活環境も変えたくて遠く離れた二子玉川のはずれに引っ越しをした。一度生活をリセットして、また自分に自信がついたら、その時考えようと安易に思っていた。

共通の友人はいたから少ないながらも会う機会はあった。でももう話しかけることも怖くなってしまっていた。
彼女がどう思ったかは知らないが、きっとmixiを外されて、みんなといる時は普通に周りと話している僕を、いよいよ理解不能だと思ったと思う。また、嫌な気分だったことは容易に想像がつく。大事に思っていたはずなのに、捻くれた行動をとってしまって意味のない不快感を生んでしまった。このことはずっと後悔している。

思えばこの頃、仕事もあまり順調ではなかった。
毎日いろんなトラブルがあって、それを解決するのに疲弊していた。
1年くらいで結果がでてきて、少し心に余裕ができたころ、また会った時に話がしたいと思っていた。でも全然タイミングがなかった。
共通の友人の結婚式でまた会えるのを楽しみにしていたのに、祖母が亡くなってしまって葬儀と式の日程が被ってしまったり、友人の家に来るって話を聞いてたのに、熱がでてしまって行けなかった。

熱の出た翌日、朝起きると40度近かかった。急いで駅の土日もやってる病院に行くとインフルエンザだった。。タミフルをもらって帰る途中、改札の近くで彼氏の服をきて、彼を待っている彼女がいて目があった。その時の彼女のギョッとした顔と蔑む様な目線。
謎に国交を絶った人間がいきなり現れたらそりゃそうなるんだろうけど、その時の僕は全然頭が回ってなかった。

実際、彼女が違う人と付き合ってるんだという事実を見て、唇が震えるくらい動揺した。言葉も何もなく、そのまま家に帰って人生で1番くらい泣いた。今まで生きてきて、あれほど辛かった日はないと思う。インフルで1週間会社を休んでいた間、生きてる感じがしなかった。

その数ヶ月後、彼女は子供ができ、結婚してしまった。
子供ができた話を彼女と共通の友人から聞いた時、つまらないプライドからか、「もう知ってるよ」と嘘をついた。

友人から
「もう彼女ことは諦めたの?」
と聞かれても
「もういいよ。」
と嘘をついた。いいことなんか何一つなかったのに。。

その後いくつか新しい出会いがあって、数年後僕は今の奥さんと出会って結婚した。その翌年に娘が生まれて、ずっと楽しい日々を過ごしている。奥さんのことや子供の事は大切だけど、先日からぶり返しているこの気持ちはなんなのだろうかと考えた。

思うに、悔いがあったことに納得していなかったんだと思う。そしてそのことから目を背けてしまっていた。もしまた同じようなことがあれば、次こそ諦めないで進みたい。それで結果が同じだったとしても、今のような沈んだ気持ちがずっと残るようなことはないと思う。

話し合うことも、歩み寄ることも、促すことも、生活に大切な要素なはずなのに…当時はその大切さを全然わかっていなかったことを今更痛感している。

その上で彼女への交流を絶ってしまって、もう2度と普通に話すことなどないのかもしれないと思うと今更ながら切ないのだ。
気持ちに蓋をしていたから、全然当時の自分の感情と向き合えていなかったのかもしれない。

こんなに時間がたってから己のダメさに気がついてしまった…
後悔なんかしてもしょうがないことだとわかっているのに、この気持ちが収まらないのはなぜなのか、、せめて書き綴ることで消化できると信じたい。

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