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ブルガリアでは溺れた人は助けない

酒は薬

ブルガリアでは酒は薬であることを何度か紹介してきました。

アルコール事情

WHOによると
ブルガリア人の2.3%がアルコール依存症で
6.9%がアルコール使用障害のようです。

また
State of Health in the EU Bulgaria
Country Health Profile 2017には
ブルガリアにおける
2014年の1人当たりの飲酒量は12L以上で
EU平均のなんと6倍と報じられています。

這い上がれない医療システム

ブルガリアにはアルコール依存症専門病院がありません。
指導医曰く『自分の行動の問題だから』だそうです。
ブルガリア人医師
びっくりするほど病気に対して精神論を述べることが多い!
自分で選択した行動の代償を他人がするほど
医療経済に余裕がないという事なのでしょう。

また、残念なことに
ブルガリアでは生体移植は法的に禁止されています。
(健康な体にメスを入れることはあってはならないことだそう)
脳死患者からの肝移植も国内で年間2、3例しか行われることがなく
慢性アルコール中毒からアルコール性肝炎や肝硬変に移行した場合
手の施しようがなくなってしまうとのことでした。

*日本ではアルコール中毒患者も生体肝移植の適応があります。

あるアル中内科医との出会い

消化器内科研修で初めて彼の病床に訪れた時
彼が元内科医だったなんて誰も想像できませんでした。

ベッドに横たわる彼は
すでに肝性脳症を発症し会話をすることが困難でした。

以前どんな人物だったかどんなふうに働いていたのか分からないけれど
賃金の悪いブルガリアで医師として働いていたのだから
誰かを助けたいという気持ちがあったはず...

本当に残念です。
自己責任で切り捨ててしまうのは。
誰しも心に付け込まれてしまう事ってあるじゃない。

移植医療は死生観とかあるからしょうがないかもしれないけれど
アルコール依存症専門病院くらいあってもいいんじゃないのかな。
需要ありそうだし。
だけど、専門病院を作ったところで治療費とか回収できなそうか...

賃金の低いブルガリアで
慢性アルコール中毒っていう治らない病気のために
専門病院に入院させて継続した治療費を払うことを是非とする
ブルガリア人家族はどれくらいいるのでしょう。

医師でさえ『自分の行動の問題』と切り捨てるのだから
一般家庭のアル中家族はなおさらだろう。

医療資源的にも人材的にもまだまだ不足しているブルガリア。
公衆衛生的な変化が起こるのはまだまだ先のようです。



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