夢を追いかけ続ける事はエゴである
私が留学した時期に一緒に留学した日本人は全員年上でした。
近くて2歳、40歳以上離れていた方もいました。
まだ10代だった私には、社会人で家庭もある人達が、医師として働ける時間も現役医師と比べてはるかに短い彼らが、なぜ今更、6年間という長い年月をかけて異国で医師を目指そうとするのか意味が分かりませんでした。
その人達と留学生活を共に過ごして、
『何かを達成できなかった』『本当にやりたい事を選択をできなかった』
そういう気持ちは人の心の中に巣食って、年々大きくなるのではないか、留年しようが、自分の実力に気づいて大学を去ろうが、一度は医学部に入学したという事実が、人生にとって大きな意味があるのだろうなと感じました。
ただそれって当事者視点で見た話で、人生は一度きりだから好きなことを思いっきりやろうと決めたとしても、巻き込まれた家族とかパートナーってたまったもんじゃないと思うのです。
実際、私も自分のやりたい事を追求した結果、家庭を壊した一人です。
医師という理想を追求して、仕事が面白くてたまらなくて、結婚したけどこどもを持ったり家庭を築き上げるイメージも沸かず、家庭がある事がかえってプレッシャーになって、そこにいろいろな問題が重なって同業者のパートナーと離婚しています。
私は医師になってからの夢があって、『なぜ病気が起こるのか、その機序の一端でもいいから解明したい』『人が知らない事を1番初めに知ってみたい』そんな夢を持っていました。
元パートナーに『君は医師として成功すると思うから、自分の思う通り頑張って』なんて言わせてしまった事もあり、せめてその言葉を守ろうと、離婚して数年、私の医師としての夢を叶えるために仕事に邁進していました。
だけど最近、医師の仕事に限界を感じています。
もし私が本当に自分の夢や理想を追い求めるなら、自分の極めたい専門に特化した病院に転職すればいいのです。
今の私の体調でそれが出来るのでしょうか。
そして何より、今後、共に家庭を築きたいと思えるパートナーが出来ました。
転職したら、自分の時間の多くをパートナーではなく、患者さんや知識を得るための勉強に割くことになるでしょう。パートナーの意志を尊重しきれない事も多くなるでしょう。精神状態もさらに悪くなるかもしれません。
そういう私に納得してもらえるほど、今の私に夢を追いかける覚悟や本気の気持ちがあるのでしょうか。
このまま突き進んだら、後に夢の亡霊に苦しめられることもなく、自分はとことんやれた、結果を出せたって将来的に満足できるかもしれないですが、その過程ってパートナーにとってどれほど価値のある事なのでしょうか。
何も考えず夢を思いっきり追いかけられるって若さの特権ですね!
『何かを手放さなければ新しい物を持つことが出来ない』
私は小さいころから医師になりたくて、医師になるために生きてきて、医師になって医師として生きてきて、ずっと医学という囲いの中に囚われていて視野狭窄してるのかもね。
こういうのって中途半端が一番よくないからさ。
これを機にすっぱり全部手放してみようかな!