妻が家を出て行った。
妻が実家に帰った。
ご安心いただきたい。筆者の実家にである。筆者の仕事がとても忙しくなると、妻は娘の面倒を一人で見切れず、たびたび筆者の実家に帰るのだ。筆者の両親は妻のことをいたく気に入っている。でも、肝心要な長男であり、夫である筆者のことはないがしろにされている。きっと妻に隠れて、母に金の無心ばかりするからだと思う。しかも、筆者は自分のことが何もできないので、晩ご飯が食べられない。だから、お腹がすいてこんな時間まで起きているのだ。妻は今日、焼き肉をごちそうしてもらったそうだ。
妻と泣きバナナ(※黄色いパジャマを着て夜な夜な号泣している娘の愛称)がいないので、Youtubeばかり見ていると、ある通知に気付いた。「あなたがサポートされました」。ママ活の興じた覚えはなかった。確かに筆者は驚くほどセクシーであるが、サポートされる覚えはなかった。
なんと、筆者の拙著「私の妻は元風俗嬢」の第2話を読んで下さったフォロワーさんがお金を恵んで下さったというではないか。ありがたい限りである。感謝のあまり、神に祈りを捧げていたら、マック赤坂が初当選した。サポートしてくださったフォロワーさんに申し訳ない。あなたへ降り注ぐべき幸運はマック赤坂の歳費に変わった。筆者が悪いのではない。
これは「第3話を書かなければ」と思っていたのだが気分が乗らなかった。これも申し訳ない。妻がいないからだ。筆者があの連載を執筆する時には必ずといっていいほど、妻が隣でヨガをしている。「Bライフのマリコさん」という動画をみながらヨガに興じるのだ。
あんまり毎日見るものだから、マリコさんも家族の一員のような気がしてくるくらいだ。今日ばかりはBライフのマリコさんも不在だ。喪失感は増すばかりである。そんな喪失感にさいなまれて連載をお休みしようと思う。
筆者はエッセイというハッシュタグで検索をかけていろいろな人の文章を拝読させていただいている。失恋に悩む大学生、転職を自己肯定する若手会社員、謎の仕事をしているお姉さん、そもそも仕事していないお兄さん、安倍政権に怒っている人。それぞれが「私はこう思う!」的な熱量の作品を投稿されている。中には「皆さん、世の中にはこんなに良いモノがあるんですよ!」「皆さんのライフがハックされますように!」的なものまである。
筆者の書く話といったら、おっぱいを触ったらフられた話や、妻が風俗嬢だった話、娘がバナナである話など、きっと皆さんの人生に何の足しにもならないことばかりである。これについても謝罪したい。そもそも、筆者はダメ社員であるから、皆さんに何かを持ってかえってもらうような文章は書けないのだ。「こんなイカレた人生を送っているヤツが生きているなら、私も何とかなる」と考えていただき、日々のストレスを発散していただきたい。
時間はもう朝4時である。しばらく寝たら筆者は仕事に行かなければならない。明日も密漁された象牙を輸入し、反捕鯨団体に高値で売らなければならないのだ。しかも、12時間後には妻と泣きバナナとBライフのマリコさんが帰ってくる。賑やかな夜を楽しみに布団に入ろうと思う。