「性別を聞くこと」が面白い、という感覚~読売テレビ『ten.』について2つのこと~
「性別を聞くこと」が面白い、という感覚をテレビ制作者が本当に持ってるとしたら、それはヤバいと思うんです。
100歩譲って面白かったとして、それを『報道番組』でやる意義がどこにあるんでしょうか。
読売テレビの夕方のニュース番組『ten.』が炎上しました。
「保険証を提示させて胸を触って性別確認」
実際の映像も見ましたが、まずこの企画のどこが面白いのかまったく分からないんです。
「人権への配慮を欠いた」という部分がクローズアップされてますが、僕は人権やジェンダーの専門家じゃないので詳しく話せません。
ただ、僕もテレビ業界で生きる端くれです。
「テレビは面白くないといけない」(※お笑いだけに限らない)とだけは考え続けています。
この企画は成立段階で少なくとも十数人の目には触れられているはずなんです。
「この企画、どこが面白いんだろう?」って思ってたスタッフも絶対に居るはずです。
プロデューサー、演出、放送作家、ディレクター、AD、出演者・・・
いろんな制約(OAに間に合わせないといけない、予算がない・・・)の中でみんな口に出せなかったということは容易に想像できます。
僕も似たような経験をいくつもしてきました、後悔もあります。
そこを自覚したからこそ、番組サイドは速やかに謝罪したんでしょう。
「面白い」感覚を誰もが失ってしまった環境が、結果的に人権への配慮を欠いた企画を生んだ、というところじゃないでしょうか。
もしスタッフ全員がこの企画を本当に面白いと感じていたとするならば、もはやテレビは「面白くないもの」でいいと思います。
そうは信じたくないですが。
あと、もうひとつ。
日本独特な「報道情報番組」というジャンルについて。
日本のテレビは「報道番組」と「情報番組」がまぜこぜです。
仮に『ten.』が「報道番組」だったとして、「性別を聞く」企画のどこに報道の価値があるのでしょうか?
夕方、どの番組でもやってるグルメ特集も同じです。
あんなのやってるの日本だけです。
僕には、大盛り料理自慢の店を報道する意義が未だにわかりません。
こういう「報道情報番組」というジャンル自体、視聴者から見放されつつあることをテレビマンはそろそろ自覚すべきです。
今回の件を通じて、もっともっと変わらなきゃ。
自戒も込めて。