ウーマン・村本さんが無知をさらけだす先にあるもの~テレビからどうでもいい不倫スキャンダルや相撲報道が消えないワケ~
ウーマンラッシュアワーの村本さんが無知をさらけだす先にあるものが…不倫スキャンダルや相撲報道です。
誤解を生まないよう先に言っておくと、僕は村本さんの活動の大部分に賛成で遠くから応援しています。僕はチャップリンだったりモンティ・パイソンだったり、社会を風刺する笑いが好きだし、社会への無関心が蔓延する中そういった笑いこそ必要だと思っています。
昨年末のTHE MANZAIでの漫才は最高でした。今後もガンガンいってほしいです。だからこそ、一旦立ち止まって確認しておきたいことがあります。
年始の夜中、寝る前に見かけた朝生。そこで村本さんはこんな問題提起をしていました。
村本「なぜテレビでは沖縄の基地問題を扱わないのか?」
田原「沖縄の問題を扱えば視聴率が取れない」
まあその通りです。僕もテレビの片隅に生きている人間ですので、恥ずかしながら認めるしかありません。
よく「テレビは政権寄りなの?反政権なの?」みたいなことを聞かれます。僕はいつもこう答えます、「いえ、テレビはあなた寄りです」。
忘れがちですが、テレビはすべて株式会社(NHKは除く)です。市場原理が働きます。とあるコンビニで美味しい挽きたてコーヒーをレジ横に置いて好評なら、同業他社がすぐに横並びでそれを取り入れるのと同じですね。これが市場原理です。
いつかある飲みの場でニュース番組のプロデューサーから
「俺たちは商人(あきんど)でっせ!」とドヤ顔で言われたことがあります。殴ってやろうかと思いましたが、勇気が足りず無理でした。
では、テレビのいまの市場原理は何か?それは「わかりやすさ」です。
テレビの制作現場で一番よく聞かれるのは「これ、わかりやすいかなあ」です。わかりにくいものは徹底的に排除されます。
「わかりやすさ」はネタ選びから重要視されます。正直、沖縄や原発などの話題は、いまテレビが求める「わかりやすさ」からはほど遠いものです。なぜなら、それぞれとてもナイーブで複雑だからです。(だからこそテレビで取り上げられるべきだと思うのですが・・・)
「わかりやすさ」を追求した結果選ばれたものが、グルメであり、旅であり、お役立ち便利グッズであり、簡単お掃除術であり、不倫スキャンダルであり、大相撲の暴行問題です。これらがわかりやすい理由は僕たちの理性でなく感情に訴えるからです。
いかに視聴者に考えさせず「わかりやすさ」を提供するか、これがいまのテレビの市場原理です。もちろん「わかりやすさ」重視がすべて悪いわけではありません。しかし、テレビ嫌いな人のほとんどはこの「わかりやすさ」が嫌いなのでしょう。わかりやすいと必然的にくだらなくなりがちです。
忘れてはいけないのが、この「わかりやすさ」を求めている人はかなり多いんです。特にご年配の層に。
年始の朝生に戻ります。番組終盤で確かこんなやりとりがありました。
村本「なぜ自衛隊が違憲なのか?」
井上(東大大学院教授)「君は憲法9条 第2項を読んでないのか?」
村本「読んでません」
※この発言は確信犯でしょう
村本さんが憲法9条を読んでないわけありません
田原「憲法9条くらい読めよ」
井上「君、少しは無知を恥じなさい」
村本「ちょっと待ってください!
これはテレビですよ!
お年寄りから子どもまで見てるんです!
わかりやすくないとだめなんですよ!」
書いていて恥ずかしくなるくらいテレビ的なプロレスの会話ですが、もう勘のいい人はお気づきですね。
ウーマンラッシュアワー・村本さんは漫才でも「テレビが本当に報じるべきは不倫問題や相撲問題ではなく、社会問題だ!」と訴えていました。
しかし、
村本「ちょっと待ってください!
これはテレビですよ!
お年寄りから子どもまで見てるんです!
わかりやすくないとだめなんですよ!」
と村本さんの言う通りにした先にあるのが、芸能人や政治家の不倫報道であり大相撲の暴行問題報道です。
村本さんが社会に関心を持ってもらおうと無知をさらけだし、テレビに「わかりやすさ」を求める限り、沖縄や原発の問題は半永久的にテレビで扱われないのです。
地獄の無限ループですね。
では、テレビはどうあるべきか。
このことを考える際にいつも思い返すある言葉があります。
いま絶賛低迷中のフジテレビが全盛期の頃、当時音楽番組の名プロデューサーが「なぜ音楽番組ではフルコーラス歌を流さないのか?フルコーラス流せばもっと視聴率が取れるんじゃないか?」と問われたときに返したという言葉です。
「テレビの役割はいま起きていることただ報じるだけ。
歌の続きが聞きたいひとはCD買うなりコンサートに行けばいい。」
テレビなんて「少しわからない」くらいがちょうど良いと思ってます。
もっと知りたければ視聴者自身が本買うなり勉強すれば良いんです。
と、ここまで長々書いてきましたが、僕もテレビの片隅で生きる人間です。
「じゃあ、視聴者にそう思わせるVTR作ってみろよ」って自分にツッコミを入れてしまいました。自戒の念も込めて仕事に励みたいと思います。
はぁ、しかしこれが難しく前途多難だなあ。