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憂うつと雪の日のまっしろうどん
ーどんなに落ち込んでいてもお腹は空くー
この前の真冬、とても心が沈んでいた日があった。
ちょっとした長旅を終えて家に帰ったら家族も数日留守にしていて、冬の薄暗い部屋でずっと一人でいただけで気分がすごく落ち込んでしまった。
旅の後の喪失感と現状の孤独が重なったからなのか。
人ってこうやって病んでいくのかなって、本気でね。
今考えたら「それだけのことで何言ってんの!」って思うし、ばかげているようにも思えるけれど、あの時は深刻に考えてしまっていた。
それでもお昼を少し過ぎたらお腹が空いた。
食欲はあまりないけど街に繰り出す。
真冬の街には雨まじりの雪が降っていた。
不思議だ。
少し歩いただけで、さっきまでのふさぎ込んだ気持ちが少し忘れられた。
本も読みたいし、noteも書きたい。
お腹もぐーぐー空いてきた。
しまいには昼ごはんを食べる前から夜ごはんの心配をし始める事態に。
とりあえず昼ごはんのお店、水天宮前にある讃岐うどん屋さん「谷や」を目指す。
メニューを見る。
きつねうどんは人形町の「双葉」というお店のあげを使っているらしい。
明太釜玉もこんな雪の日にぴったりでおいしそうだ。
でも私は初対面のお店では必ず冷たいぶっかけを食べる主義。
ぶっかけを食べずにその他のうどんを食べるというのは、お互いのことをまだよく知りもしないうちから「即興でダジャレ言ってください」っていうムチャブリをするようなものだと思っている。
なのでこの日も冷たいぶっかけをチョイス。
好物のちくわの磯辺揚げもプラス。
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美白うどん。
角があるうどんは見た目通りのもちもちさ。
ちくわの磯辺揚げがなんだかとってもおいしくて、毎口食べたいからめちゃちっちゃく食べ進めた。
何がこんなにおいしいんだろう。
青のりの匂いと衣の絶妙な分厚さかな?
隣にはサラリーマンの方々が座っていた。
「この前杏仁豆腐に醤油かけてる後輩がいてさあ」って話をしていた。その子の言い分は「豆腐だから醤油でしょ」ってことだったらしい。
何その一休さんみたいな子。
もう片方の隣では上司と部下のコンビが。
部下が「自分の仕事にやりがいを見出せない」と呟いて、
上司が「お前の仕事はスパイスなんだ。なくてはならないんだ。だから大昔には海を渡っていたんだ!」
って、昼からやけに饒舌だった。
・・・
食べ終わった頃には今朝の憂鬱なんてもうどこにもないくらいに復活していた。
「食べることは生きることだ」
ってありふれた言葉がなんだかよく沁みた日だった。
・・・
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