貸切の喫茶店と臨場感
ー 音も匂いも私のために作っているものだけ ー
ここは京成線沿線にあるお花茶屋駅の喫茶店「カフェ&パスタ べべ」
少し勇気を出して、中が見えないガラス張りの扉を開けた。
店内はお客さんはおろか、店員さんもいない。
わあどうしよう、と思っていたら、カウンターの中に座っていたマスターらしきおじさまが立ち上がって声をかけてくれた。
二人がけのテーブルにつこうとしたら、「広い方にどうぞ」と四人がけの席に座らせてもらうことに。
隣にはなんともミステリアスな水槽が
この写真の左上にいる黄色い魚とか本物なんですよ!
ガイコツ2体も沈められてるし、、。
なんか悪いことしたらガイコツにして水槽に入れられちゃう魔法とかありそう。
あ、言い忘れてましたが、このお店全体的にミステリアスでして、、
店内のあちこちにも、この水槽の中にいるガイコツのキャラクターが何千といるんですよ!
(ディズニーの「ジャック」というキャラクターらしい。)
とりあえずメニューを見るけれど、実は食べたいものはもう決まっている。
「オムライス」
Q:なぜですか?
A:地元の子におすすめされたからです。
こういうローカルな街のローカルなお店のオムライス紹介してくれるローカルな子とか、どんだけ説得力あるんですかって感じ。
(ローカル連呼しすぎてローカルの意味がだんだんゲシュタルト崩壊してきた。)
注文するためだけにカウンターの中にいるマスターをわざわざ呼び寄せるのも悪いと思い、
「すみません、オムライスひとつ!」
と控えめな大声で頼むと、
「セットでドリンクおつけできますが」
と言いながらわざわざ下界(という名のフロア)に降りてきてくださるマスター。
セットにしてもらった。
注文を終えて一息ついた。
お店の中で音楽が流れていたことに気づく。
「♪〜 今 私 恋をしている 裸の心 抱えて」
(あいみょんじゃん、、)
「♪〜 今も新たに 羊は迷う」
(米津玄師じゃん、、)
(店の雰囲気の割に選曲はナウいな、、有線かな?)
極めつけの
「ドルチェ&ガッバーナのその香水のせいだよ」
( 、、、 )
だがしかし次の瞬間
「ジュッ、ジューワーー(フライパンに卵を流し込んだ音)」
そして次の瞬間
ふわ〜ん(卵の焼けた完璧な匂い)
静かな店内がいきなり慌ただしくなった。
うわ、これ絶対私のオムライスじゃん。と思った。
(というのも現在貸切中)
そして、マスターが私のためにオムライスを作ってくれている「この瞬間」を二人だけで共有している感じが、普通に考えれば当たり前のことなんだけど、なんか贅沢なもののように感じた。
ライブ感!
この静けさじゃないと聞こえなかった音だし、
この近さじゃないと感じられなかった匂いだし、
何より貸切じゃないと分からなかったこの「私だけのために作ってくれている」感。
とことん贅沢である。
お待たせしましたと言って運ばれてきたのは
オムライス、
そしてサラダ、
そしてティーカップに入った白い飲み物
(ん?ホットコーヒーと間違えられた?私アイスコーヒー頼んだのに?)
と思っていたら
アイスコーヒーも運ばれてきた。
(白い飲み物の正体はスープでした。)
セットを頼んだつもりはなかった私、思いがけないフルコース感にあわてふためく。
(サラダとドリンクだけならまだしも、800円のランチセットにスープがつくってなかなか。)
一口食べてわかる間違いないおいしさ。
気取ってないふわふわ卵とケチャップライスとデミグラスソース。
このお店を教えてくれた子へのなりやまない拍手
(スタンディングオベーション)
ゆっくりこの雰囲気に浸りながら食べているとおじいさんがご来店。
チキングリル的なものを頼んでいたのだろうか?
キッチンはいきなりけたたましい音を立て始めた。
「ジューーーーーー!!」(さっきの卵より激しめ)
そして肉を焼いている時特有の煙と匂いがフロアまで立ち込める。
(喫茶店で服に匂いがつくことを心配する時代が来るとは思っていなかった。)
今思ったけど、最初から換気扇回ってなかったのでは??
でも一人一人のために作っている感じが伝わってくればもうなんでもいいよ。
キッチンの冷蔵庫に貼られた手書きの格言みたいなのもかっこよかった。
「毎日成長していこう」みたいなことがこの何倍もかっこいい言葉で書かれていた。
何歳になっても一日一日に進歩を見出そうとする姿勢に憧れた。
今20歳の私が毎日成長していったら、50年後には確実にスーパーおばあちゃんになれるよな〜って思った。
(今すぐやれ)