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Dear KOBE

私が中学3年の時に両親が離婚した。

その後、高校2年の終わりから高校卒業までの1年ちょっとの間、私は母と離れ、ひとり、母方のおじいちゃん家に預けられることになった。
 
両親が離婚したのは中3の時だったが、それまでも父はほぼ家にいなかったので、姉2人が東京に出てからは、私と母は文字通りの二人三脚だった。
母が辛い時は私が支え、私が辛い時は母が支え、私たちは二人で一つだった。


だから、私は母と離れて暮らすということはとても心細かったけど、当時、NOと言える状況ではなかったということと、私の性格上、心配をかけまいとするところがあり、「1年間だけだし、大丈夫」と私はおじいちゃん家での生活を快諾したのだった。
 
おじいちゃんちでの生活では、お風呂のお湯が汚れで真っ白になっても1週間同じお湯に入り続ける、自分のものは自分で洗濯していたのだが、洗濯機が二層式で使い方慣れるまで大変だったりなどの数々のジェネレーションギャップがあった。


でも、朝には毎朝おじいちゃんが牛乳で丁寧にココアを作ってくれたし、
毎朝、おばあちゃんが『朝はパンがいい』と言う私に合わせて食パンとお手製のサラダを出してくれた。
『パンに塗るのはブルーベリージャムがいい』と言う私のために、必ずアヲハタのブルーベリージャムを用意してくれた。
休日のお昼ご飯は、3人で必ずのど自慢を観ながらおばあちゃんお手製の焼うどんを食べた。めちゃくちゃ美味しかった。
 


母と離れた生活は寂しい時間がたくさんあったが、そういう時間を紛らわせるためにたくさんのエンタメをひたすらDigった。

学校から帰ると自転車に乗って、決まって国道沿いのリサイクルショップに繰り出した。
USHERの「8701」を買ったのもそのリサイクルショップ。
近所のスーパー、ベイシアで50centのファーストアルバム「Get Rich or Die Tryin'」を買い、アメリカのゲットー感に衝撃を受けた。
歌手のDoubleの「Rollin' on」はCDを買ったらPVが収録されているDVDが付いてきておじいちゃんちの自分の部屋で擦り切れるほどPVを見て真似して踊っていた。スターウォーズエピソード1を観てハマり、同じくスターウォーズマニアだった叔父さんにメイスウィンドウのフィギュアを買ってもらって、飾って喜んでいたりした。

そして、私がNBAにハマったのもこの頃。

同じクラスの苗字読みの席順で後ろ前の席だったある男の子の影響でNBAにハマった。彼の実家はwowowでNBAの試合がリアルタイムで見れるため、私におススメの試合をVHSに焼いてくれて貸してくれていたのだ。

のちに大学入学時も、NBA好きだからバスケサークル入ろう!と不純でミーハーな動機で見学に行きまくった結果、結局、体育会のバスケ部にまんまと入部することになったくらい、この時期にNBAにハマった。

そんな中、私がファンになったのがコービー・ブライアントだった。

当時、コービーは弱冠23歳にしてNBA史上最も若くして3連覇を成し遂げていた。
NBAの頂点に君臨し、自身のキャリアも絶頂期を迎えていた。

圧倒的な得点力、カリスマ性のある端正な顔立ち。完璧な顔と身体のバランス。

黒人なのにタトゥーが入っていなくて、なんて真面目な人なんだ!!

コービーは完璧だった。

ブザービーターにめっぽう強く、勝つために自分が点を決めてやろうとすべてを背負って、鬼気迫る形相で試合に臨むコービーの姿を、家族の危機に一人おじいちゃんちで生活せざるを得なかった私の当時の境遇と重ねあわせていたのかもしれない。

コービーが頑張るなら私も頑張る。そんな勝手な感情を抱いていた。

 
私にとって、この単独おじいちゃん家生活中にハマったエンタメは、こんな家庭事情もあり、私を支えてくれた親友のような存在だったのだろう。その時の思い出が今の私を形作ったと言っても過言ではない。

また、自分が青春時代にファンになった有名人は、会ったことはないがそれこそ学生時代の友人と同じ感覚、気持ちを覚えるものだと思う。

いつも頻繁に会うわけではないがたまに会うといつでも何十年も前のあの時に戻れる友達。

母と離れたあの期間の私を支えてくれたかけがえのない友達。

それが私にとってのコービーブライアントだったのだ。


神様は本当に無慈悲だ。

往年のコービーは2017年にNBA引退後、社会奉仕活動にも力を入れ、女性プロバスケットボールリーグWNBAでコーチをしたり、病気のファンの病室にお忍びで訪れたり、現役時代のセルフィッシュなイメージとは反対に社会貢献に力を入れていた矢先のこの事故だった。

コービーの死を知ったときのあの感覚は、他の有名人の死を知ったときのそれとは全く違った。

初めての感覚だった。

私のあのかけがえのない時間が奪われたような気がした。寂しさとしようがないやるせなさが拭いきれなかった。

いまでもコービーが死んだなんて思いたくない。どこか別の世界でジアナと一緒に生きていると信じたい。

コービーは永遠に私の中に生き続けているのだ。

あの金色のユニフォームをみればいつでも思い出す。

たくさん勇気をくれてありがとう。

私が辛いとき生きる活力を与えてくれてありがとう。

あなたのあきらめない姿をみてどれだけ励まされたことか。

本当にありがとう。

どうか安らかに。


Black mamba forever.

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