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16歳だった!ー初めての肝試しー①

これは記念すべき私の初肝試しのお話。  

高校一年の秋。

その週の金曜日、クラスメイトのミカと他校の友人達と廃病院へ肝試しに行く予定だったが下記の理由により行き先は霊園(スンゲー広いらしい)に変更となった。


※当時の手紙が残っている奇跡


手紙にも書かれているように、その日は金曜日で学校があったためわざわざ私服を持っていって着替えるのも面倒なので放課後は制服姿のままミカの家で時間を潰していた。


最近行った男子校の文化祭の話をしながら現像したての写真をポスカでデコる。
BGMは最近発売されたケミストリーの「愛しすぎて」。
使ってるケータイはN503i。着メロはあゆのseasons。


※懐かしきN503i
今までのケータイ&スマホの中で1番好きかも。


「今日何時にみんなと集合になった〜?」
デコレーションのセンスがなくて上手くデコれない私は早々に飽きてミカのプリクラ帳を見ながら聞いた。

「メールしてみるよ!」
ミカはケータイをパカっと開いて高速でメールを打った。


この日のメンツは以下の通り。


ミカ
ユウ(ミカの地元の友達)
やまちゃん(ユウと同じ高校の男子)
おサル(同じくユウと同高男子)
センセイ(同じくユウと同高男子)

ユウもやまちゃん軍団も何度か遊んだことがあった。

コートから靴下まで指定がある校則が厳しいうちの学校とは違い、制服なんてあってないような感じの校則緩めな学校の4人。


見ため化粧っけがなく真面目そうなのだが、なぜかヤンキー風味な友達が多いユウ。

16歳なのに何だかホストっぽさがある、だけどお茶目なムードメーカーやまちゃん。

背が低くてすごい明るくて元気、ニックネームが全てを物語るおサル。

ひょろっと背が高くみんなより1歳年上だけど出しゃばるようなことはしないセンセイ。(早々に1年を留年してしまいもう一回1年生をやっていた。)



コンビニで買ってきたリプトンのピーチティーを飲みながらお菓子をつまんでいるとミカのケータイから16和音のfragileーELTーが流れた。

※青春の味。マジで何リットル飲んだだろうか。



「ユウとやまちゃん達はもう一緒にいるみたい!最終のバスに乗ってくからそんくらいに駅で集合しようって!」



終電の時間が近づいてきて家を出る前に2人で入念にメイクを直した。

2階から降りる時、ミカのお母さんが階段の下からメイクバッチリな私達を見あげて
「盛れてる盛れてる!」とグッドポーズをしてくれた。

こんな時間に制服で出てくのに怒らないどころか「盛れてる!」と言ってくれるミカママに感激した。


私達は自転車を2ケツして最寄り駅まで行きそこから電車に乗り、予定通り最終のバスに間に合うように待ち合わせの駅でユウとやまちゃん軍団と合流。

多分ミカがリクエストしたのであろう彼らも全員制服(を着崩した格好)で登場した。

初めて降り立った駅だった。私以外の5人は土地勘があるようで私は皆んなにくっついて行った。

少し待つと最終のバスが来てそれに乗り込んだ。



私達以外に乗客はいなくて、一番後ろの席一列に横並びで座って皆んなでワイワイ「バスの運転手さん、首なかったらどーする?」とか、「霊がいるとケータイの電波なくなるらしいよ!」など肝試しに向けて気持ちを盛り上げていた。

制服姿の高校生男女6人が他に乗客のいない“○○霊園行き“の最終バスとかフラグ立ちすぎ。


内心、このままバスが停まらなくてパラレルワールドに連れて行かれたらどーしよ。とかちょびっと思うくらいにはやはり不気味だった。

そんな心配はよそに20分程でバスはちゃんと目的地の霊園に到着した。

真夜中というにはまだ少し早い時間だったが、辺りは真っ暗で霊園の中は入り口のひらけている場所こそ電灯が数本立っているがその先は暗闇だった。

「全然バリ3だわ!ヨユーだな!」
やまちゃんが紺色のケータイ(やはりN503i)を取り出して顔の横でチャラチャラ振ってみせた。

※バリサン。何歳位まで通じるのでしょうか。



私達はしばらくその入り口の電灯の灯りの元で最近あった面白い話や、学校での話などでひとしきり盛り上がり、ついに霊園の奥へ進むことにした。

今いる場所からフォークの先のように三本の道が伸びていた。


※こんな感じ

霊園内の案内板を見るとそれぞれの道は霊園の真ん中あたりにある今いるような大きめの広場で合流する形になっていた。

ちょうど男女3:3なのでペアになってそれぞれの道を進み、真ん中の広場で落ち合うことになった。

ミカはやまちゃんの事が少し好きだったので、そこはペア。

ユウはいつもおサルと子犬のように戯れ合ってて、そこ付き合わないの??とツッコミを毎回入れられるような仲のため、ペア。

と、いう事で私はセンセイとペア。

ユウおさるペアは左、ミカやまちゃんペアは中央、私センセイペアは右の道を進むことになった。

ミカとユウは一緒に夜の井の頭公園を散歩をしてるだけでも「あ!あそこに誰かいる!」とか「あの木の上から黒い影がこっち見てるよ」とか嘘か本当か分からぬが霊感があるような事をたまに言う。

私は霊だとか超常現象だとかUMAとか人並み以上に好きではあるが(その夜の井の頭公園探索は私の希望でツチノコ探しをしていた、、)霊など一度も見たことも感じた事も無い(ちなみUFOはある。私の出身地方面ではUFOが目撃されることが珍しくなく、友人は塾の帰りにUFOに追いかけられ、チャリで死ぬ気で巻いて逃げ切っていた。)し、できれば一生見ないで過ごしたい。

肝試しなんて幽霊を探しに行っているようなものだが、マジもんの幽霊を見て今後正気で生きていける気がしない。
私にとっての肝試しは、‘’幽霊なんていない‘’と確認しに行っているのに近かった。


さて、人生初の肝試しはスタートした。

この先は電灯はもちろんなく、真っ暗。

他のペア達の楽しそうな声が遠退いて行く。
私とセンセイはそんなキャッキャするような仲でもないのでわりかし静かに落ち着いて歩き出した。

真ん中の道より左右の道の方が細くて怖みがあった。真ん中の道はアスファルトで舗装されているが左右の道は木と墓に囲まれ地面が土なのも怖い。木や墓石の奥に見える白っぽいものは何なのか、今足に触れたのはただの草なのか、振り返って確かめたいけど確かめたくない・・なんて腹が括りきれない思いで進んだ。


「うおぉぉっっ!!!?」

「え!何ぃぃぃぃぃぃーーーーーーー?!?」

いきなり大きな声を出して後ずさるセンセイ。
センセイの声に驚く私。


「あの木の下の白いやつ、、、」

センセイは少し先の木の下を指差した。
暗闇に溶け込めていないぼや〜とした白い袋が目に入った。砂だか枯葉だかが入っている袋のようだ。

「・・・やめてよ!ただの袋じゃん!」

「え!?まじ?ご、ごめん、頭かと思ったーーーー」

パニクったら終わるパニクったら終わる…と心の中で繰り返し、怖い気持ちに蓋をするように無理やり笑った。

ただの袋、周りの風景に馴染めていないその袋が視界に入った瞬間に、反射的に反応してしまう気持ちとても分かるから
(それが何なのか脳が理解する前にパニクリそうになるよね…これって怖がってる時って脳が機能しづらくなってるって事?中野信子さんの本読みたくなる…)
そうならない為に私は周りをあまり見ないようにしていた。
(違和感なく馴染んでてちゃんとしっかり見たら“いる”ってのが一番怖いが、、)

とにかくパニクったら終わる…

見てはいけないものを目が捕えて認識しないように、わざと感覚を鈍らせながら歩き続けた。




しばらく歩くとすこし明るく開けた場所に出た。電気が付いたコンクリート作りのトイレとベンチがある。

「トイレ行きたいな」と私が言うと、俺も。とセンセイ。

明かりがついていると言うだけで安心感が出て、トイレという本来ホラー要素のある空間に抵抗がなくなっていた。

「終わったらトイレ前で待っててね〜」
脅かしたりしないでよ、の意味で言って私は左側の女性用入り口から、センセイは右側の男性用入り口から中へ入った。

中は右手に手洗い場、左手に個室が二つあり、奥の個室のドアを開けようと押したら開かなかった。あぁ、掃除用具入れか。と手前の個室に入った。

個室のドアを閉めた瞬間なんだか急に怖くなってしまった。
あぁ、、トイレは本来怖い空間なんだった。。と思い出した。

トイレで怖いな〜と思う時はいつも扉の上や特に隣の個室と繋がっている上の空間をチェックしてしまう。
多分昔学校の怪談だか何かでそこからお化けが覗いているシーンを見たんだと思う。
ちなみに大人になった今でもトイレの上の空間嫌いです…子供の頃に植え付けられた恐怖って根深い…(笑)

隣の掃除用具入れと繋がってる上の空間をチラッと見たが当たり前に何もいなかった。

一度怖いと思ってしまうともう無理。用を足さずにトイレの外に出て、「ちょっとこっちのトイレ使うわ!」と男子便に駆け込んだ。

ちょうど洗面台で手を洗っていたセンセイは少し驚きながら「え、なんで?壊れてたの?」と言った。

「ん〜いや、何となく!」

「男子便使う女子初めて見たわ(笑)」

私はなるべくセンセイがトイレ内にいる間に済まそうと思ったが、センセイはすぐに出て行ってしまった。

センセイも大丈夫だったし何も起こらないだろうと自分に言い聞かせ急いでトイレを済ませて出た。

センセイは隠れることも脅かすこともせずトイレの前でケータイをいじりながら待っていた。 

「お待たせ!」「おう、いくか〜!」

私達はまた暗い道を歩き始めた。




大分暗闇に目も慣れてあまり暗く感じなくなったが、歩いているのは墓地に変わりはない。
しかし特に怖い思いもせずここまで来てしまい、合流地点までは後少し。

なーんだ。と何だか少しガッカリする気持ちとほっとする気持ちの中、何か変わったことはないかとミカにメールしようとケータイを開いた。



霊がいると電波なくなるらしいよ〜


行きのバスでの会話が思い出されて背筋が寒くなる。




さっきまでバリ3だった電波が圏外になっていた。


…。





続く

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