16歳だった!ー初めての肝試しー最終話
〜ここまでのお話〜
刺激を求めて深夜の霊園に肝試しに来た高校生6人!
ちょっとしたハプニングはあったものの、震え上がるような霊的恐怖はまだ感じられていない…
そんな中聞こえてきた、霊園内で鳴り響く鞠をつく音の正体を追う6人!
音はある墓石の裏から聞こえてくる…
墓石の裏で見たものとは…!!!
「この墓の裏だ!!」
私達は墓石の裏にそーっと回り込んだ。
そこにいたのは...
・・・・
ドラムを叩きまくるおじさん!!!!!!!!!!!!!!
(おそらく3〜40代)
!!?!?!!?!!
目元ギリギリまでニット帽を深く被り、その上からヘッドフォンを着けている。
私達には気が付いていない。
墓石の裏はギリギリ車が通れるくらいの広さがあり、ここまでそれで来たのであろう軽バンが停まっていた。
(ちなみにボールをつく音と間違える位の早さのBPM+バスとハイハットがしっかり出来てなかったのでかなり初心者とみた。
※私学生時代は軽音楽部
バスとハイハット音がほぼ出てこない為ドラムの音だと気が付かなかったのだと思う)
意外な結末に私達は呆然とドラムを叩くおじさんを眺めた。
何故こんな所でドラムの練習...?
スタジオノア行きなよ...
広くて誰にもうるさいって言われない場所を探してるにしても深夜の霊園のど真ん中って!
もしやバンドメンバーの墓か?!
にしても!!!
まだ16歳の私達は(さっきホームレスのおじさんに追いかけられた事も忘れて…)興味津々でおじさんに話かけに行った。
「あの〜、何してるんですか?」
「何でここでドラムやってるんですか?」
「怖くないんですか??」
「いつもここで練習してるんですか?」
おじさんはハッと顔をあげた。
(こんな深夜の霊園で人に会うとは思ってないだろうに、びっくりした事でしょう…)
ドラムスティックを持つ手が止まり辺りに静けさが戻り緊張感が少しだけ広がる。
おじさんのヘッドフォンから音楽がシャカシャカ漏れて聞こえてくる。
おじさんは何も言わずすぐに顔を下に向けてしまった。
そしてヘッドフォンの音楽は消さずに、停めてあったバンの後ろの扉を開けてドラムセットを片付け始め、2分くらいでそそくさとその場から居なくなってしまった。
その場に残された私達は仕方なくおじさんが車で走り去った方に歩き出した。
が、ドラムおじさんとはもぅ会えなかった。
その後皆で入り口まで戻る途中で写ルンですで写真を撮ったりして遊んだ。
やまちゃんを撮影した際に写り込んだ墓石の横を指さしてユウとミカが「うわ!!そこに髪の長い女の人がいるよ!!」
「ホントだ!こっち睨んでる!!怒ってるよ!!写真撮ったから怒ってるんだ!!」と二人して怖いことを言い出して多少盛り上がったりした。
バス停で始発まで待つ事にしたがまだ1時間半程時間があり、男子達は眠すぎてコンクリート(道…)の上で寝てしまった。
周りは上品な住宅街。こんな時間に歩いている人はもちろん通る車さえ無く誰にも目撃されずに済み、1時間半後に来たバスで私達は無事帰路についた。
すっかり明るくなった外をバスに揺られながら眺めていた。
とてつもなく眠かったが今日あった色々を思い出していた。
何だか奇妙な事も起こったが、目に見えて震え上がるような霊的な何かは無かった。
心に残った出来事はホームレスのおじさんとドラムのおじさん…
おっさん達の思い出しかない…
私は一体何しに来たんだ…
後日、この日の写ルンですの現像が出来上がった。
B級映画ならばプロローグ(多分行きのバスとか)で全員死ぬであろう若者6人の楽しそうな写真。
例の墓石入りのやまちゃんのショットは彼の綺麗な金髪がフラッシュで輝いていた。
こちらを睨む霊は写っていなかった。
16歳、人生初めての肝試しで学んだことは生きている人間の方がよっぽど奇妙だと言うことであった…。
終わり