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とみしんの夢

最近Netflixオリジナルの『サンクチュアリ-聖域-』が流行っているので昨日から見始めた。

大相撲を題材としたドラマだ。

相撲は身体の大きさはとってもとっても大事ですよね。

どんなトレーニングして何を食べたらあんな身体になるんだろうか。
四股ふんでちゃんこ食べるだけでは絶対に無理だよね。

小さいけど強い力士も沢山いて、努力や技が物を言うのは分かっているが、やはり生まれながらの相撲体型ってものはあると思う。

サンクチュアリを観賞していて私は小中学校時代の同級生、とみしんを思い出していた。

とみしんは背も大きくて恰幅もよく力持ち、だけど穏やかな性格の男の子だった。

寒い冬の日の体育の時間は
大きな身体のとみしんの周りに数人のクラスメイトが集まり、とみしんの腹や肩に引っ付いて暖を取っていた。
私もよくとみしんで暖を取っていた。
とみしんの身体はいつもホカホカで温かかった。

私の地元の大阪では面白いクラスメイトは周りから「吉本入り!」と言われるのが鉄板であった。
実際そのような事を言われて吉本に入る人はおらず、何故か私が今所属しているのだが・・まぁそれは置いておいて

身体の大きなとみしんは「相撲取りになり!」と周りから言われていた。

力も強く身体も大きい彼にはピッタリ!と安易な周りからの勧めに彼はいつも

「俺は実家の酒屋継ぐねん」

とはっきり明言していた。


とみしんの家が酒屋さんなのは皆知っていた。
駅前にある「富岡商店」と言う酒屋さん、そこが彼の家のお店。
酒屋だし、私の使う最寄り駅の一駅隣の駅なので私は利用することは無かったが、店の前は何度も通っていたしクラスメイトの家の店ということもあり、いつも前を通る時はとみしんちの店だなぁ〜と意識して通っていた。

お店にはとみしんのお父さんが立っていて、クラスメイトのお母さんが買い物しに来る事もよくあったらしい。


中学生になるととみしんの身体は成長とともにもっと大きくなっていった。

中学では私達の通っていた小学校と、もう1つ隣の小学校から生徒が来る。

新しい友達も増え、とみしんに望む皆の希望進路は「相撲取り」という感じだった。


私も皆と同じ安易な理由もあるが、とみしんは相撲取りに向いているのでないかと勝手に思っていた。
格闘技等、屈強な肉体を持ちその身体を武器として戦う人は心が優しい人でないと(怖いし困る)勤まらないと思っていたからだ。

「実家の酒屋を継ぐねん」という発言からも滲み出ているように、とみしんは心優しい男子であった。
いつもにこにこしていて、ふかふかな身体はいつも温かくてマスコットの様な存在でもあった。

綱引きでとみしんが加わった瞬間に勝ったり、掃除の際棚を持ち上げてくれたり、とみしんが力強さを披露するたびに「相撲取りになり〜!」と言われ続けたが、彼は最後まで

「俺は実家の酒屋継ぐねん」

とにこやかに言っていた。




私は中学3年の冬1学期だけを残して転校した。

東京で受験して東京の学校へ通っていたが、大阪から急に東京に来て今まで通りのノリで話しても話が通じない(ボケてもツッコんでもらえない)事がストレスで肌がめちゃくちゃ荒れてしまった。
大阪の空気が恋しくて高校1年生の夏休みに大阪へ逃げ帰るように遊びに行った。

約半年ぶりの大阪はすぐに私のストレスを洗い流してくれ、滞在1週間程で驚くほど肌荒れが良くなっていった。
少しニキビが残ったが、それは思春期のデフォルトの肌荒れだと思う事にした。


大阪滞在3日目の夜、私は友達と自転車をニケツして駅前方面へ走っていた。

久々の風景にキョロキョロしながら自転車の後ろに乗っていた。

まぁ駅前といえども田舎の方なので何もない。
あるのはとみしんの店位のものなのだが。


駅前に差し掛かりいつもと様子が違うことにすぐ気がついた。



あれ????




ここはとみしんの店のハズ、、、






とみしんの店が〜!
※実際の写真ではありません





なんととみしんの店はセブンイレブンになっていた。



半年でこんな事になっていたとは。



友達に自転車を止めてもらい、店の前で降りた。

友達は中学から一緒になった子だったのでとみしんについてあまり知らない様子で
「あ〜、せやねん、セブイレになってんなここ。」と言った。


店内に入ると、レジのおじさんが「富岡」と書かれた名札を付けていた。

会ったことはないがこの人がとみしんのお父さんだとすぐ分かる。

「とみしんの店セブイレになったかぁ〜、、
、、まぁお酒売ってるしね。富岡商店に違いはないよね」

私はカルピスサワーを選んで最初で最後富岡商店(現セブイレ)でお酒を買った。


そして店先でカルピスサワーを飲みながら思った。



とみしん、やっぱり相撲じゃない?









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