ドルトムントvsシャルケ~スペースの共有~
かなりご無沙汰してました。コロナウイルスによる自粛期間いかがお過ごしでしょうか。切実に、切実に、早く終息してほしいものです。
今回久しぶりに分析記事を書くのですが、実際のところ試合を観るのも久々なもんで分析眼のリハビリがてら、このノートにまとめられればと思います。今回観たのは再開一発目のドルトムントvsシャルケ。ちなみに今回は画像なしの文章のみでお届けしようと思います。見にくい、理解しづらいところもあるかもしれませんが最後までお付き合いいただけると幸いです。
お互いのシステムの噛み合わせ
最初から話がちょっとずれるんですけども、最近『フォーメーションは単なる数字に過ぎない。』っていう意見が世の中を席巻してるんですけど、自分はそうは思ってないわけで。最初にフォーメーションの噛み合わせがあってからこそ最初の守備の基準点(誰が誰の守備を担当するのか)が定まるわけであって、結構大事にしているポイントでもあります。身勝手ながら静かに最近の風潮に抗おうとしている所存です。
話を試合に戻します。この試合はお互い3-4-3システム。最初の噛み合わせはがっぷり4つ。
ここからどう守備の基準点をずらしていくかが大事なのであって。それを今から説明していきます。
ドルトムントのボール保持
ドルトムントは大きいポジションチェンジはせず、3-4-3のままボール保持。これに対するシャルケはマンツーマン式でディフェンスを行うが、ドルトムントのCHが自分のマークの相手がプレスに来られないポジションに降りていき、ボールを循環させていく。このポジショニングが非常にうまい。
DFは降りていくマークの相手についていくと、もともと自分がいたスペースを空けてしまうことになるので、マークについて行ってスペースを明け渡すのか、マークをフリーにさせてでもスペースを死守するのか葛藤するわけである。
ただここでフリーにさせるまいとマークについていくと、その空いたスペースにシャドーが入ってくる。このドルトムントのCHとシャドーの関係がえぐい。シャルケのプレスを分析してこれを実行したのかどうかは不明だが、非常に効果的であった。ドルトムントは中央で味方が創り出したスペースを使う動き、いわばスペースの共有ができていたため優位に試合を進めることができていた。
もう一つドルトムントが優位に試合を進めていけた要因は2シャドーの度重なる横移動である。最近流行りの5レーン理論通りにいけばシャドーが同じレーンにポジショニングするのはご法度だが「5レーン?なにそれおいしいの?」ばりに同じレーンに入りまくる。なぜかというと先程言った通りドルトムントのCHの降りる動きに対してシャルケの中盤がついていき、そこのスペースをシャドーが使おうとすると、通常であればシャドーのマークであるシャルケのCBが出てくる。そこで自由にさせてくれないはずなのだが、シャドーが縦並びになることで一人で二人をマークしなきゃいけない状況に陥ってしまう。普通に考えてそれは無理なのでどちらかがフリーになり(DFは原則としてゴールに近い相手を優先的にマークするので基本的にゴールから遠い方)そこから自由に展開できるようになる。
こうしてドルトムントは時間とスペースを手に入れ、優位に試合を進めていくのであった。
シャルケのボール保持
変わってシャルケのボール保持は結構特殊であった。3CB+左WBの4バック化、2CHのうち片方が左のハーフスペースに入り、前線が左から左シャドー、CH、1トップ、右シャドー、右WBとドルトムントとは対照的にゴリゴリに5レーンを埋める形となっている。ボール保持の形は4-1-5である。これは相手のプレスがどう来ようがこの形を作っていたので、おそらく自動式でこの形を作るようになっていたと思われる。ちなみにドルトムントは5-4-1守備であった。
正直シャルケのビルドアップは機能していなかった。なぜかというと運べない、広げられない、越えられないからである。順に説明していく。
まず相手の1トップに対して2CBで十分スペースがあるのだが運んで相手の中盤を釣りだす意図が見られなかった。これではせっかくの数的優位も無駄である。
広げられないというのは横のボール循環が遅く、大外のSB自体が列を超えようとする意図がなかったためと思われる。だったらタッチライン踏むポジションとるなよ。しかもよく考えると前線に大外レーンで待機している味方がいるためレーンで被っているのである。なおさらポジションおかしいじゃねぇか。
そのため相手のプレスラインを越えられないまま効果的なボール保持ができず、ドルトムントにじわじわ追い詰められロングボール、もしくは強引に一対一を突破しようとするか、という場面が目立った。
シャルケによる後半の修正
前半ドルトムントにボコボコにされたシャルケは後半から修正を開始する。システムを4-3-1-2に変更したのである。これの意図はボール保持時と非保持時で別にあるので順に説明していく。
まずボール保持時は幅取り役を一人に任せることで効率的に選手を配置しようとする目的であった。そして幅取り役を一人にすることで中央に選手を密集させようとする意図があった。それによって相手のWBも押し込み、味方のSBに時間を与えようとしていた。形自体は4-1-5のままであったが、この方が時間を与える選手が明確であったため、前半に比べ効果的であったといえる。
ボール非保持時はボールの奪う形を明確にしようという意図が見られた。前半はマンツーマンになっていたが、後半の守備の形は4-3-1-2。プレッシングのスイッチは相手のサイドCBにボールが渡った時である。サイドCBにボールが渡ると2トップがその選手と中央のCBにプレス、シャドーはボールサイドのCH,そしてWBには3センターの魂スライドで潰しにかかる、そして前半に散々いなされた2シャドー1トップに対しては4バックで数的優位に対応しようという計算であった。
ただこれに対しドルトムントは、WBが低めにポジションを取ることで相手の魂スライドが間に合わないようにしたり、シャドーがポジショニングで3センターを動けないようにしたり、そもそも数的優位な中央(ここがただのシャルケの誤算なのかどうかは謎である)を使って逆サイドに展開したりということで苦としていない様子であった。
シャルケの修正はむなしくもドルトムントによって砕かれたのであった。
エピローグ
ドルトムントのスペースを共有するチームとしての連携は素晴らしいものがあった。特にCHとシャドーの共有、そしてCBのパス供給能力も高い。それに対し、シャルケは特に前半の意図がよくわからん。オートマチック4-1-5可変はどういう意図なのか監督に問いただしてみたい。パターンと原則の違いってやつ。
今回は以上です。感想、意見、文句ぜひ待ってます。
最後まで見ていただきありがとうございました。次はいつになるかわからないですが、また。