![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/20482382/rectangle_large_type_2_c6239aeb168d58b420cda393815c9bb2.jpeg?width=1200)
コロナが教えてくれたもの Vol 2
病院でもいよいよマスクが足りなくなってきたようだ。母の病院では今日ついに「これで口元を覆ってください」と看護師さんからガーゼの布切れを1枚渡されたという。必要な場所に必要な物が行き届かない状況は、患者を不安にさせる。
病院内にあるLAWSONでマスクを販売していたけれど、棚が空っぽになってスタッフが困っていた。そのLAWSONは基本、入院中の患者さんと面会者のみが利用できるコンビニだが、面会者のふりをした一般の人がこっそりやってきては買い占めたらしいのだ。来訪者の警備を強化するべく警備員が増員された。警備員はみなさん70代後半の年齢で、中には80代もいる。患者も高齢者、掃除のスタッフも高齢者。日本社会の現実を突きつけられた。
コロナの記憶を残そうとnoteを投稿した時から、さほど日数は立っていないが、世の中は刻々と変化している。
ドラッグストアにトイレットペーパーを買い占めにお客さんが走る騒動は、欠品が常態化したために落ち着き、町はいよいよ閑散としてきた。タピオカ屋だけは人気が衰えないが、ほかの店は客足が減っているように見えた。バーガーキングに立ち寄ると、紙ナプキンが足りないのでお客様おひとり1枚ですと言われた。レジでお渡ししますと言われ、今までぎっしりナプキンが詰まっていたあの容器ごと店から消えていた。
「勝手に持っていかれちゃったんですよ」と店員さんは困ったように打ち明けた。あんなにパリパリした硬い紙ナプキンを盗んで、いったい何に使うのだろうか? お尻を拭くのだろうか?
行きつけの上島珈琲店では、コンディメンツ(ガムシロップやクリームやスプーンなどの置き場)がきれいに取り払われて、床はピカピカに磨かれていた。テーブルとテーブルの距離が広げられて、配置も変わっていた。レジでチャージしてくださいと、6000円を渡すと、顔なじみの店長さんが「チャージしてくれるんですか! ありがとう」と大げさに感謝されて、気の毒になった。大好きな上島珈琲店、なんとかこの苦境を乗り切ってほしい。
シンガポールに暮らす友人から、日本を訪れる計画をキャンセルしたと連絡を受けた。彼女は日本人だが日本語はいっさい話せないし書けない。シンガポールでは、日本がカオス状態になっていると怖がっている人が多いそうだ。人口密度が高いことや島国で土地が狭いことなど、日本の一部のイメージがウイルス蔓延のニュースと結びついて、恐怖映像が勝手に独り歩きするらしい。
「どうして中国からの観光客を日本に入国させたの? 入れるべきではないわ。まったく日本政府は信じられない!」と彼女は怒った。初期段階での日本の対応を批判しているのだ。彼女と同じように思う日本人も多い。私が注目したのは、彼女がChinese ではなく Travelers from Chinaと言ったところだ。中国からの旅行者。この小さな言い回しの違いによって、差別だと批判されることを回避できる。
日本のTwitterでは「中国人はコロナを持っているから入国させるな」といった投稿を目にするが、これでは差別表現と捉えられても仕方ない。というか差別感情そのものを露呈しているように見える。「中国の人でコロナの患者がいるかもしれないから、念のために全員を入国禁止にしよう」にすれば、だいぶ表現が的確でマイルドになる。
シンガポールの友人は、こうした細かいデリケートな表現の違いを常日頃から意識して、しかも無理なく使いこなしているのだ。シンガポールは多文化多民族国家。キリスト教徒もイスラム教徒も華僑も白人もアフリカ系も暮らしている。日本語ができない日本人として生きていくのに、シンガポールは快適なのだろう。
そんな多様性社会の理想郷のようなシンガポールでも、マスク不足が続き、デマに踊らされたトイレットペーパーの買い占めが起きているというのだから、人間とはじつに面白い。
WHOの発言が世界を騒がせた。North Korea, Iran, Italy and Japan are the greatest concern. コロナに関してこの4か国が世界で最も懸念すべき国だというのだ。 もっともだとは思う。しかし私が不思議に思うのは、ウイルスは風に乗ってどこまでも自由に飛んでいくはずなのに、それぞれの国が何とか努力をしろと呼びかけるのだ。まるで国別対抗戦のように、先にコロナを封じ込めた国が勝ちだといった様相を世界は呈してきた。
韓国からの観光客の入国を規制することを決めた日本に対して、韓国が怒って対抗措置を取ると言ってきた。日本からの旅行者のヴィザを止めるのだと。日韓で競いあってどうする!と思う。風向きひとつでウイルスは韓国へも日本へも飛んでくるのだから、こんな時こそ互いに知恵を出し合って協力すべきだと思う。反日や嫌韓をやっている場合ではない。
コロナ・ウイルスは、東京2020オリンピックより早く、国同士が戦う機会を与えてくれた。嬉しいことではないが、前を向くしかない。
いいなと思ったら応援しよう!
![カワカミ ヨウコ](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/162817123/profile_2c9a23031a41f05034627e20176c798d.jpeg?width=600&crop=1:1,smart)