
カナダに来た!㉟
自分と向き合う時間が教えてくれたこと
カナダで学生生活を送る中で、普段の生活や文化が大きく違うため、自分と向き合う時間が増えました。新しい環境や文化、そしてたっぷりとした時間が、私にとってはとても大切な経験になっています。今までの人生を振り返ると、特に10代や20代の頃は、深く考えることなく日々を過ごしていました。そして、教員として働いていた時期も、忙しい仕事に追われて、自分自身をじっくり見つめる余裕なんてほとんどなかったように思います。
でも、ここに来て初めて、自分の感情や思考の癖、そして思い込みに驚かされることが多くなったのです。その中で、ある出来事が私に大きな気づきを与えてくれました。
私が住んでいるアパートでは、よくいろいろな不具合が起きます。洗面所やバスタブの排水口が詰まったり、洗濯機が壊れたり、裏口の鍵が壊れたり。そんな時にいつも助けてくれるのが、ハンディマンのクリスです。クリスは、どんな修理も温かい笑顔で一生懸命にしてくれる、とても良い人です。数年前にコロンビアから家族と一緒に移住してきたそうです。
ある日、「アパートを一人で管理するのは大変な仕事ですね」と言ったところ、クリスはいつもの笑顔でこう答えました。「そうでもないよ。毎日楽しいよ。」その言葉を聞いたとき、私は驚きと恥ずかしさで何も言えませんでした。心の中には、「ハンディマンの仕事は大変なだけで楽しさなんてないだろう」という思い込みがあったのです。恥ずかしながら、それは偏見に近い考えだったと今ならわかります。
もちろん、クリスが楽しさを感じる理由を詳しく聞いていませんが、彼がコロンビアからカナダに移り住み、家族と共に安定した環境で暮らしていることも影響しているかもしれません。さらに、修理を通じて多くの人と出会い、物を修復することで喜ばれたり、感謝されたりすることに楽しさを感じているのでしょう。そして、私はその笑顔の理由をようやく理解した気がしました。
どんな仕事でも、大変な部分はあります。しかし、その中で楽しさを見つけ、日々充実感を感じながら仕事をしている彼の姿は、私にとってとても素敵で心に残るものでした。