9月新学期案のメリット

17県知事が9月新学期制の検討を政府に申し入れるそうです。変えるなら今が千載一遇のチャンスです。

急すぎて一時的にいろいろ混乱が生じるとは思いますが、それが決定的な反対要因にはならないのではないでしょうか。

9月新学期に移行するメリットについて、出口の部分と、入口の部分に分けて考えてみましょう。

まず出口の部分から。
新卒一斉4月入社なんてのは、今やほぼ幻想で、現実は極めて少数派のための、世界的に見ても極めて珍しい制度となっています。4月始まりは1900年に決まったそうです。19世期ですよ。

入社の時期なんて本来いつでも良くて、個々の社の事情によって自由に決めたら良いのです。4月入社のままにしたければそれでいいし、学校に合わせて9月入社に変更したければそうしたらいい。それに、今や中途入社の方が多数派ではないでしょうか。

そもそも、卒業の時期と入社の時期を揃える必要がないです。時期が揃ってないと、学生によっては、卒業していきなり就職ではなく半年ほど社会に出る前のモラトリアム期間を持てることにもなります。

このモラトリアム期間に、内定辞退が起きることもあるでしょう。「結婚が決まって」「本当にやりたいことを見つけてしまって」など、好奇心旺盛で不安定な生き物である20才前後の若者に半年も自由時間を与えたら、心変わりすることなど日常茶飯事になるのかもしれません。

人事担当者にとっては目眩がするような事態ですし、人材獲得に多額の経費を掛けているわけだから経営的にも望ましくないでしょう。

でも、それは縁がなかったと捉えることもできます。莫大な採用予算をかけて獲得した人材がすぐに辞めてしまったり、まったく予算を掛けずにひょんなタイミングでスルッと入社した人間が意外と戦力になっていたり、人事なんて本来的にギャンブル的要素をはらんでいるわけです。

また、逆に考えるとそれでも入社してきた人材というのは、比較的腹が据わっている可能性が高く、就職後の定着率も高いのではないでしょうか。中にはそのモラトリアム期間で有用な経験を積んできて即戦力となってくれるかもしれません。

こういうパターンもあります。入社して4、5年働いて30歳を前に「自分の人生これでいいのか、やりたいことをやらなくていいのか」っていう自分探し退職も、あるあるですよね。多くの職場で毎年1人以上発生しているのではないでしょうか。

卒業してから入社までの半年、モラトリアム期間を設けることで、その期間に自分探しの旅をやり切ってもらうこともできます。そこでやりたいことを存分にやっていただき、気持ちの踏ん切りをつけてもらうことができます。結果、30歳前の自分探し退職を事前に予防することができます。

入社後、すぐに辞めてしまうのが珍しくないご時世です。モラトリアム期間を与えることは、企業側から見れば、人材を振るいにかける時間を与えているともいえます。

卒業即入社で適応できずにすぐ辞められてしまうよりは、モラトリアム期間の内定辞退の方がマシではないでしょうか。

それに、そもそも、学生の囲い込みっていう発想で卒業即入社を求めること自体が情けないです。そうまでしないと学生を繋ぎ止めておけない魅力のない企業だと自分で言っていることになってしまいますから。

次に入口に関して。

9月入学にすることで、小1プロブレムにぶち当たる児童が減るはずです。6歳入学と6歳半入学の半年の違いは、とても大きい。

この低年齢における発達段階の半年は極めて大きい。担任の負担も全然違う。よりきめ細かく一人一人に対応してあげることができるし、一年生が落ち着くことで、学校全体が落ち着き、より良い教育を提供することができることでしょう。

学齢によって学年の人数に大きく差が出てしまう問題は、翌年度から1ヶ月ずつ入学できる生まれ月をずらしていけば、5、6年で解消できます。

最後に。
9月入学は東大も実施を目指してましたよね。国際競争力を高めるために目指したのですが、経済界の反発で頓挫した経緯があります。

日本トップの教育機関が目指していることの意義をもっとよく考えてほしいです。学問の主要先進国と入学時期を合わせることで優秀な教師や留学生を集めやすくなるし、こちらからも海外に学びに行きやすくなります。

その結果、学問が一歩も二歩も早く進むことになります。企業人は、四半期ごとの売り上げでアタマがいっぱいという気持ちも分かりますが、ここは長い目で見てください。日本の成長戦略にも叶います。多少の混乱があっても、ここで投資しておけば、日本全体にリターンがあると、私は考えています。

文科省は「社会全体で考える問題だから」とお茶を濁しています。たしかにその通りなのですが、ここは教育を司る機関として、自分たちはどう思うのか、立場をはっきりとさせてほしいです。文科省は英語入試改革でチョンボしてますし、ここで失地回復を図れますよ。

みんなで未曾有のピンチをチャンスに変えましょう。
麒麟がくるの明智光秀ではありませんが、「時は今」ですよ。