HamCup学園 I-side
『アイスの旋律(メロディー)~文化祭編~』
学園の文化祭が近づいていた。
「アイス、文化祭で一緒にベース演奏しないか?」
同級生のパンから突然の誘いを受けるアイス。
「悪いが、俺は丸腸様のためにベースを弾いているんだ。バンドは無理だ」
即座に断るアイス。しかしパンは諦めない。
「お前の才能、もっと多くの人に聴いてもらうべきだと思うんだ。一度でいいから、俺たちと演奏してみないか?」
パンの熱意に押され、渋々とスタジオに向かうアイス。そこで出会ったのは個性豊かな面々だった。
ドラムのまつる。
「よっ!俺、まつる。ドラム担当、よろしくな!」
ギターのいとま。
「僕はいとま。君の噂は聞いてるよ。よろしく!」
キーボードのひぐま。
「ひぐまです。キーボード弾いてます。よろしくね!」
そしてボーカルのパン。
「俺たちで最高の音楽を作り上げようぜ!」
初めての演奏。アイスのベースが、他の音色と絡み合う。
「こんな感覚、初めてだ...!」
今まで一人で練習してきたベースとは違う、仲間と奏でる音楽の楽しさ。アイスは瞬く間にその虜になっていた。指が踊るように弦を爪弾き、音が重なり合う心地よさ。演奏が終わっても、興奮が冷めやらない。
「もう一曲、行こうぜ!」
パンの呼びかけに、アイスは我を忘れてベースを構える。
スタジオを後にした後も、アイスの脳裏には演奏の余韻が残っていた。
「こんなに楽しいなんて...」
音楽に没頭した喜び。しかし、ふと丸腸の顔が脳裏をよぎる。
「俺は...お嬢のためにベースを...」
情熱と忠誠心。二つの想いがせめぎ合い、アイスの心は揺れ動くのだった。
アイスは、自室で一人、ベースを抱えて思い悩んでいた。
「俺は、お嬢のためにベースを弾いてきた。でも...」
指先でベースの弦をなぞりながら、アイスは葛藤する。
「あの時、みんなと一緒に演奏した時の喜び、あの感覚を、もう一度味わいたい...」
パンたちとの演奏を思い出し、アイスの心は躍る。しかし、同時に丸腸への想いもよみがえってくる。
「お嬢のために尽くすのが、俺の生きる道だ。それなのに、俺は何を迷っているんだ...」
忠誠心に揺さぶられ、アイスは頭を抱える。
一日が過ぎ、二日が過ぎ...。
アイスの心の中で、音楽への情熱と、丸腸への忠誠心がぶつかり合う。
「俺は、音楽がしたい。でも、お嬢のためなら、その想いも捨てられるのか...?」
ベッドの上で、アイスは何度も自問自答を繰り返す。答えの出ない問いに、心が疲れ果てていく。
三日目の夜。
「あのなアイス。お前、元気ないけど大丈夫か?」
心配そうに声をかけてくるござ。
「ああ、ござ...。実は俺...」
思い悩む心情を、アイスはござに打ち明ける。
「そうか。お前、音楽とお嬢の間で迷ってるのか」
ござは、真剣な面持ちで頷く。
「お嬢のために生きるのが、俺たちの使命だ。でも...お前の音楽への想い、俺にはよくわかる」
ござの言葉に、アイスは驚きを隠せない。
「ござ...」
「お前の答えがどうあれ、俺はお前の味方だ。だから、自分の心に正直になれ。自分のために生きることがお嬢のために生きることに繋がるんじゃないか?」
ござは、アイスの肩に力強く手を置く。
「ござ...ありがとう」
友の言葉に、アイスの心は少し軽くなるのを感じた。
三日間、悩み続けたアイス。
「俺は...俺は...!」
心の奥底から、答えが浮かび上がってくる。
「俺は、音楽がしたい!お嬢のためにベースを弾きながら、自分の音楽も追求したい!」
アイスの瞳に、新たな決意の炎が宿る。
「よし、決めた!俺は、お嬢に話をしてくる!」
そう言い残し、アイスは丸腸の元へと向かうのだった。
数日後、しゅん、ヒーローがアイスを捕まえる。
「よっ、アイス!お前、他のやつらとベース弾いてるって本当か?」
「お嬢一筋じゃなかったのかよ?」
仲間たちの詰問に、アイスは言葉に詰まる。
「いや...俺...」
そこへ、丸腸とジュニア、ござが現れた。
「お前ら、アイスに何してるんだ」
丸腸の一喝に、しゅんたちは身を竦める。
「お嬢、アイスが他のやつらとベース弾いてるんです!」
「ええ、パンやまつる、いとま、ひぐまと一緒に文化祭に出るらしいですよ」
ジュニアの報告に、丸腸は眉を顰める。
「アイス、お前そんなことしてたのか」
「お嬢、すみません...でも、一度でいいから、他の人と演奏してみたかったんです...」
アイスは観念したように告白する。すると丸腸は、不敵な笑みを浮かべた。
「バカ野郎!」
鋭い腹パンが炸裂する。
「好きなことをやりたいなら、やればいいじゃん!」
丸腸の言葉に、アイスの目から涙があふれる。
「お嬢...!」
「ただし、文化祭ではそいつらと私たちのコラボステージをやるんだな」
「え...?」
「ジュニア、パンたちに伝えてこい。私たちも混ぜろって」
「かしこまりました」
ジュニアの言葉に、ござたちも喜ぶ。
「よっしゃ、俺たちも演奏に参加だ!」
舞台裏で、アイスたちは出番を待っていた。
「次は『さくりこ』だな。あの男女コンビ、なかなかの実力だぜ」
まつるが、ステージの様子を伺う。
「ああ、二人の息の合ったパフォーマンスは圧巻だからな」
いとまも感心した様子だ。
ステージでは、『さくりこ』の演奏が繰り広げられていた。
男性のパワフルなギターと、女性の伸びやかな歌声が会場を魅了する。
「お、すごい盛り上がりだな」
ひぐまが、客席の反応を見て呟く。
「でも、俺たちだって負けてないぜ」
パンが、自信満々に言う。
「そうだな。俺たちの演奏なら、もっと会場を沸かせられるはずだ」
アイスも、友の言葉に力強く頷く。
『さくりこ』の演奏が終わり、熱烈な拍手が送られる。
「やっぱり、あの二人は強敵だな」
まつるが、頬を緩ませる。
「次は『晴れりんご』か。あの2人の歌声も魅力的だよな」
いとまが、次のバンドの名前を口にする。
「ああ、あの透き通るようなハーモニーは、聴く者を惹きつけずにはおかないな」
ひぐまも、うなずく。
ステージ上では、『晴れりんご』の演奏が始まっていた。
二人の女性ボーカルが、息の合ったツインボーカルを聴かせる。
まるで、太陽の光を浴びているかのような、暖かく明るいサウンド。
「すごい...あの二人の歌声、本当に素晴らしいな」
パンが、思わず見とれる。
「でも、俺たちにはアイスがいる。最高のベーシストがな」
まつるが、アイスの肩を叩く。
「お前のベースが俺たちの音をつなぐんだ。だから、自信を持って弾けよ」
いとまも、アイスを鼓舞する。
「みんな...ありがとう。俺、全力で弾くよ」
アイスの瞳に、熱い決意が宿る。
『晴れりんご』の演奏が終わり、割れんばかりの拍手が巻き起こる。
「いよいよ、俺たちの番だな」
ひぐまが、マイクを構える。
「行くぞ、みんな。最高の演奏をしようぜ!」
パンが、気合を入れる。
「おう!」
アイスを始めとするメンバー全員が、力強く返事をする。
パンたちの演奏が始まる。アイスのベースが、音楽の中心となって躍動する。
「アイス、最高だぜ!」
「俺たちの音、会場中に響き渡ってるぜ!」
メンバー同士の掛け合いに、観客も湧き上がる。
そこへ突如、ステージ上にプロジェクションマッピングが浮かび上がる。
「なんだ、これは?」
驚くアイスたち。すると、マッピングの中から丸腸が登場。
「お前ら、私たちも混ぜろ!」
「お嬢!?」
予想外の展開に、アイスたちも驚く。
「ござ、この演出は?」
「へへっ、お嬢直々のご指示でやらせてもらいました!」
ござの得意のプログラミングで作り上げたプロジェクションマッピング。その迫力に、会場もどよめく。
「しゅん、今だ!」
ござの合図で、しゅんがステージに飛び出す。彼の手には、一枚のイラストが。
「AIが生み出した、最高のアートをくらえ!」
そのイラストがプロジェクションマッピングと融合し、幻想的な空間が生まれる。
「よっしゃ、俺たちも負けてられないぜ!」
まつるのかけ声で、バンドのテンションが上がる。
「まつる、ビートを刻め!」
「おう、任せろ!」
まつるのドラムが、リズムを加速させる。
「いとま、ギターで応戦だ!」
「よし、俺の出番だな!」
いとまのギターが、プロジェクションマッピングに呼応するように鳴り響く。
「ひぐま、お前もキーボードで参戦!」
「了解!私のアルペジオをくらえ!」
ひぐまのキーボードが、幻想的な音色を奏でる。
「ヒーロー、お前も行けっ!」
丸腸の号令で、ヒーローがマイクを握る。
「YO!俺とお嬢のラップ、聴けや!」
力強いビートに乗せて、二人のラップが炸裂。
「パン、お前は?」
「もちろん、俺も行くぜ!アイス、一緒にいくか?」
「ああ、パン。お前の歌に、俺のベースをくれてやる!」
パンの歌声とアイスのベースが、完璧なハーモニーを生み出す。
テクノロジーとアート、音楽が融合したその演出に、会場のボルテージは最高潮に。
「みんな、最高の演奏をありがとう!」
パンの言葉に、メンバー全員が笑顔で応える。
「アイス、お前のベースが、全ての音を繋いでるぜ!」
丸腸の言葉に、アイスは熱い想いを込める。
そこへ、司会者の声が響き渡る。
「皆様、お待たせしました!今夜、特別なゲストをお迎えしています!」
その言葉に、会場がざわめき立つ。
「シークレットゲスト?誰が来るんだ?」
「もしかして、あのバンド?」
観客たちの期待が高まる中、ステージ上に二人の影が現れた。
「きゃー!ラチエンブラザーズだ!」
あこの叫び声に、会場が沸き立つ。
「ラチエンブラザーズ?あの伝説のデュオか?」
「マジで?生で見られるなんて夢みたい!」
観客たちの興奮が、会場を包み込む。
そして、ラチエンブラザーズの演奏が始まった。
二人の男性シンガーが、息の合ったハーモニーを聴かせる。
「すごい...二人の歌声が、まるで一つになってる...」
まつるが、息を呑む。
「音の波が、心に直接響いてくるようだ...」
いとまも、圧倒された様子だ。
観客席では、あこが感動のあまり、涙を流している。
「ラチエンブラザーズ..が聴けるなんて...夢みたい...!」
その姿を見て、アイスたちも音楽の力を再認識する。
『ラチエンブラザーズ』の演奏は、まさに圧巻の一言。
透き通るようなファルセットから、力強い胸声まで、自在に歌い分ける。
「こんなハーモニー、今まで聴いたことない...」
アイスは、自分の歌声を思い浮かべながらつぶやく。
「アイス、俺たちも負けてられないな」
パンが、アイスの肩に手を置く。
「ああ、もっと練習して、もっと上手くならないと...」
アイスの瞳に、新たな決意が灯る。
『ラチエンブラザーズ』の演奏が終わり、鳴り止まない拍手が会場を包む。
「やっぱり、プロは違うな...」
ひぐまが、感嘆のため息をつく。
「でも、俺たちにも可能性があるはずだ。一緒に頑張ろう」
パンが、仲間たちを見渡す。
「おう、俺たちなら、きっともっと上に行ける!」
まつるが、力強く拳を突き上げる。
「そうだな。今日の経験を糧に、もっと成長しよう」
いとまも、前を向く。
「みんな、ありがとう。俺、もっと練習して、もっといいベースが弾けるようになる!」
アイスの言葉に、仲間たちが笑顔で頷く。
あこも、感動の涙を拭いながら、アイスたちに話しかける。
「みんなの演奏も、本当に素敵だったよ。これからも応援してるからね!」
その言葉に、アイスたちは新たな力をもらう。
演奏が終わり、アイスたちはステージから降りてくる。
「お前ら、最高だったぜ!」
そう言って放たれる、丸腸の腹パン。
「お嬢...!ありがとうございます!」
「アイス、お前のベース、よく鳴ってたな。惚れ直したぜ」
その言葉に、アイスの目から涙があふれる。
「アイス、お前のベースなくちゃ、俺たちのバンドは成り立たない!」
「また一緒に演奏しようぜ!」
仲間たちに祝福されるアイス。
「俺、ベーシストとしても、お嬢の子分としても、頑張るぜ!」
新たな決意を胸に、アイスは未来への一歩を踏み出すのだった。
こうして、文化祭は幕を閉じた。
しかし、アイスたちの音楽への情熱は、新たな始まりを迎えるのだった。
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