宇宙の果てに
先日、久しぶりに開いた本があった。何年も前に購入した本だ。一度読み切っており、その後ちょくちょく読み返す事を年に何度か繰り返していた。そして今回も何ヶ月かぶりに少しだけ読んだ。今回はその本の「序文」の文章に魅了されてしまった。アモラ・クァン・インの本の出版にあたり、バーバラ・ハンド・クロウが序文を寄せたのだ。1996年に寄稿したようなので、日本での翻訳の初版が2005年である事を考えると、日本で翻訳版が出版される10年以上も前に書かれていることが分かる。このお二人の本はプレアデスの光の流れを感じさせてくれる。プレアデス人に特徴的な、緻密で精妙な光輝くエネルギーと表現しておけば、これが大雑把な表現だとしても彼女たちには失礼に当たらないだろう。気軽にサッと読める本ではなく、膨大な情報量を与えてくれる本、特に知識という意味ではなくエネルギー的に受け取るので、最近はパラパラとしか読んでいない。だから今回目に留まった序文だけでも光輝いているのだ。
さて、今回はその序文の紹介ではなく、自分がその序文を久しぶりに読んだ事をきっかけに、宇宙の果てに旅立った話だ。空想物語として読むこともできる。もしくはヘミシンクを使わない変性意識状態での旅と言っても良いかもしれない。もっとも自分は変性意識など感じていないので、何やら自分の中に存在しているゲートらしき場所から繋がっているのかもしれない。どうなっているのかはよく分からない。確かな事は、音響的効果や誘導瞑想ではなく、自分には然るべき人が提供してくれた文章から別世界に入り込むのが好きだということだ。自分はその文章を読んだ時に銀河に想いを馳せた。銀河の中に流れる風、地球に吹いてくる風と、たゆたう様々な光の模様。とても柔らかく心地よい。それと同時に銀河の狭間からやってくる感情の起伏と輝き。こうした刺激が自分を銀河の果てに、宇宙の果てに行ってみたいという衝動に駆り立てたのだ。
さっそく銀河よりも遠く、宇宙の果てに行くイメージを作ってみた。意識は光よりも圧倒的に早く動き、そのイメージが明確であればあるほど一瞬で目的地へと到達する。自分はそこまで明確にイメージはしなかった。ただ、いつものように何となく望みが叶う事を楽しみにしただけだ。今回は宇宙の果てに行くことを。こんな気持ちで大丈夫かなと思いきや一瞬で宇宙の果てらしきイメージがやってきた。ジョディフォスター主演の映画「コンタクト」に登場した異星人の惑星の海岸に似た景色がやってきた。そして異星人も一緒に登場。見かけは人型だが明らかに地球人的な容姿ではない。まるでダークブルーのメタリックな皮膚を連想させると同時にゼリーのように柔らかそうなプルンとした肌質を感じる。半透明で金粉が混ざっているかのように小さくキラキラと全身から光を放っている。さっそく話しかけてみる。
「あなたが案内してくれるんですか?」
「そうだよ。でも宇宙の果てに行くにはそこの空間をこじ開けて」
そんなふうに言われて、すぐに実行に移す。
ちなみに、淡々と進んでいるが、自分は普段から断片的にこういう景色やらストーリーを空想する事がままあるので、いざ本格的なイメージの世界が訪れても違和感なく前に迷わず進んでしまうのだ。
話を戻そう。何を実行したかというと、空間のこじ開けだ。この海岸の空は夜空になっているのだが巨大な満月の夜の空のように周りは明るい。その明かりの中で両手を広げて空間を広げてみる。こちらも、まるでゼリーのようなプニプニした物質に手を入れてムニュっと広げている感触だ。だが広げようとすると意外と力が要る。この矛盾した2つの事に翻弄されながらも両手に力を入れ続けた結果、10分ほどしてようやくこじ開ける事ができた。こじ開けた空間の形は細長いマフィンのようであった。その中へ入ってみる。すると、そこには宇宙が広がっていた。もちろん、空気など無いが自分は非物質で訪問しているので、さきほどの海岸と同様に体は大丈夫だ。
「ここが宇宙の果てだよ。正確には果ての近く。本当の果てはもう少し先だけどね」
彼と呼んでいいのか、性別で言えば男性をイメージさせるその異星人が答えた。
「私は男だよ。君と同じくね」
「君の考えている事は伝わってくる。だから私に対する質問などには後で応えよう。それよりも見てごらん。君が望んだ場所だよ」
そこには一般的な宇宙のイメージが広がっていた。遠くに見えるいくつもの星々、比較的近くにある大きめの惑星が2~3個見える。紫、青、赤、その三色が織り交ざった光が周囲に放たれている。もっと暗いのかと思ったが意外と明るい。その景色にしばらく見入ってしまった。すると彼が話しかけてきた。
「なぜ私が君の案内役に選ばれたかというと、この果ての近くに住んでいるからさ。この場所から20光年くらい先さ。そのくらいの距離なら体を物質化して宇宙船で来ることもできるよ」
すごいな。それが正直な感想だ。いったいどうやって…。きっと科学も何もかも地球より進んでいるんだろうな。でも、なぜかあまり憧れのようなものを感じなかった。彼があまりにも地球人とは異なる外見だからだろうか。同じ人型のようでいて外見だけでなく細胞に至るまで自分達とはかなり異質に感じた。だからだろうか。自分達とは全く違う道を歩んでいるのだと感じるからだろうか。
「他の星の文明と比較しても意味のないことさ」
彼は微笑みながら言った。
「地球と私達の星までの距離を考えれば分かると思うけど、君たちとは星も銀河の環境も異なる。優劣をつける事に意味がないことを理解しやすいだろう?これがもし地球に近い他の文明、プレアデスやオリオンだったら地球との関係性もあるから比較してしまうだろう。でも本来は意味のないことなのさ」
そうかもしれないなぁ。地球の姿が一瞬頭に浮かんだ。
「逆に他の銀河の文明を知ることで地球の良さに気付くはずさ。私達と違って同じ人型でも感情の欠落した文明も存在する。ほとんど無表情なんだよ。科学技術は進んでいるけどね。でもそれが地球人だったら幸せだとは思えないだろう?地球人には他の惑星の文明には無い様々な魅力があるんだよ。感情の豊かさや、希望などの不思議なエネルギー、男女の恋愛、家族のあり方。そして人間以外の動植物の種類の豊かさ。君たちはいずれ宇宙の中で地球がすばらしい環境である事に気付くことになるだろう。宇宙を知れば知るほど逆に地球のすばらしさに気付くことになるよ」
でも、地球にはいろいろな問題が存在しているんだよ。外見の美しさとは違って中身は大変なことになっているんだ。そんなふうに思った。この宇宙の果てに近い彼らの文明には抱えている問題は無いのだろうか。すると彼は自分が考えていることを読み取って答えた。
「それはあるよ。種類や程度は違うけどね。どんなに文明が進歩したって同じさ。でも前に進んで進歩していく過程は面白いだろう?」
おもしろいだって?それは進んだ文明の奴らが言う上から目線の言葉さ。当事者たちは大変なんだよ。やっぱり分かってないな。
「いやごめんごめん。あまり分かりもしないで言ってしまったね。私達は地球のことは知っているけど実際に訪れた事はほとんど無いから、詳しいことは分からないんだよ。でも、私達は今や単一民族に近いのだけれど、君たちの地球は人種のるつぼだからね。その点では大変だろう事は想像がつくよ。地球や宇宙の神聖さに気付いている者もいれば、まったく興味の無い者もいる。各自の魂のルーツが他の惑星にまで遡る者達が多いから、まさに宇宙の人種のるつぼさ。そういう意味では多様性に富んだ実験場としての惑星が今後どうなるのか宇宙から注目されているのさ」
宇宙の果てに来ても、こんな話になるのか…。自分は少しため息をしてから周りの宇宙を再度見まわした。そういえば彼の名前は何というのだろう。
「アルファで良いよ」彼は笑いながら言った。すると自分の頭には彼の本当の名前が情報として頭に入ってきた。文字も発音も何となく分かるが、とても表記するのが難しい。だから彼の言うとおり仮の名前でアルファと呼ぶことにした。
「せっかくだから君たちにアドバイスしておこう。まずさっき言ったとおり地球は宇宙の中でも素晴らしい環境の星なのさ。そしてもう一つは、他の宇宙人達に自分達の力を預けてはいけないってことさ。君たちと同じ銀河の宇宙人達が地球の為に何とかしてくれる、救いに来てくれると考えてはいけない。もちろん、いざとなったら助けようとしてくれる宇宙人達もいるだろう。しかし、地球人と同じで宇宙人も全員がいい奴らとは限らない。悪い奴らもいる。それは惑星の中も外も同じさ。地球人のそうした想いを利用して地球侵略を考えている輩も本当にいる。彼らは科学技術では圧倒的に地球より進んでいるから武器の面では地球の兵器なんておもちゃみたいなものさ。彼らはそんな武器のことよりも地球人の目に見えないエネルギーについて恐れているのだよ。それは彼らが持っていないものなんだよ。さっきも地球人の魅力について語ったけど、感情や希望のエネルギーさ。そういう物を持っていない彼らにはそれらが脅威で簡単に地球の植民地化なんて出来ないのさ。ただし、多くの地球人が好んで彼らのような第三者に力を預けようと願っているのなら、惑星の自由意思の原則が働いて彼らを招き寄せてしまうんだよ。かつて君たちの太陽系の他の惑星で起きてしまった事と同じことがね」
あぁ、それはたぶん火星のことだろう。正しいかは分からないが自分はそう思った。だが火星の時はより強い敵を望んだ結果、そうなったのではないだろうか。でも起きる現象としては同じことか…。
「もっとも、対等な関係を築こうと考えて他の惑星の来訪を期待するのであれば良いことだけれどね。何を期待するのか。そこが大事さ」
そうかぁ。そうだよなぁ。最近読んだ別の本にも同じようなことが書いてあったっけ。
そして自分はここで無邪気さを取り戻した。この宇宙の果てにまで来た無邪気さを。そうして彼のエネルギーに触れてみたくなった。そうすれば彼の事や彼の惑星のことが分かる気がしたのだ。彼に断わって肌に触れさせてもらった。非物質ながら彼の腕に触れると思考や映像が伝わってきた。今やとてもシンプルになった彼らの思考は日々の暮らしを豊かにしていた。惑星の全員が共にあろうという姿勢、生き方をしている。そして食べ物の共有、惑星との調和。無邪気な遊びを楽しみ、シンプルな生活の中にも刺激を失わずに好奇心旺盛だ。岩盤の強い土地の所々に何百メートルもの高さのある塔のような建物が見える。これが住居なのか何かの施設なのかは分からない。そこから時々乗り物が出入りしている。個人用の宇宙船だろうか。やはり科学技術はかなり進んでいるようだ。そして、彼からは同時に心地良い癒しに似たエネルギーが伝わってきた。この時、自分はふと女性のことを考えてしまった。そういえば彼の惑星の女性はどのような存在なのだろうか。少し興味を持ってしまった。会ってみたい。そして自分はアルファから手を離した。
「私達の惑星も男性と女性がいるよ。彼は笑いながら言った。君たちの地球と同じさ。お互い大変なこともあるね、男として」
彼は笑った。何が大変なのかは分からなかった。きっと大変さの種類は人それぞれ違うのだろうが、きっと自分の何かが彼に伝わってしまったのだろう。話題のレベルを自分に合わせてくれたに違いない。と言うのも、彼は男性だと言っているが、中性的な雰囲気も漂わせているからだ。
「君たちが進んだ科学技術に興味を持つのは無理もない。しかし、さっきも言ったとおり、優劣をつけて比較することにあまり意味はないよ。こう考えて欲しいんだ。私達は私達が生きる環境でそれが必要だったから今の水準まで科学技術が進歩した。それは衣食住に必要だから、生活のために自然と進歩したんだよ。例えば地球の車と一緒さ。住む場所によっては生活する為に車を持つことが必須の地域があるだろう。それと同じことだよ。それが無いと困るから進化したんだよ。他の惑星の文明には全く科学技術が無い文明もある。でも精神レベル、霊性レベルはずっと進化している惑星もあるんだよ。だから他の惑星と優劣をつけて比較することには意味はないのさ。対等に、友好関係を築こうとするのなら別だけどね」
彼はもっともな事を言ってくれた。彼のような存在から言われると妙に説得力があった。そしてありがとう。
そろそろ戻ろう。
最後に、彼に聞いてみた。自分のような訪問者が他にも存在しているのかと。
「いるよ。地球にも他の惑星にもね。地球についてはまだそれほど多くない。こんな所まで来るのは非常に稀だよ。そうだ、さらにアドバイスできる事があるとしたら、君は君独自のその内面の豊かさを大切にしたほうが良い。私が見る限り、君は宇宙の広さを認識しつつあるよ。宇宙の各地域を訪問する基盤としてね。まだ旅は始まったばかりさ。それには興味と無邪気さを失わないことさ」
彼の言葉を聞いてなぜか中学1年生だった時の男の数学の先生の言葉を思い出した。その先生は担任ではなかったが、自分が入ったクラブの担当の先生だったのだ。その先生からはこう言われた。「君は自分の持っているよいところを大切にしなさい」と。性格について言ってくれた言葉だったと思う。
文系の自分がどちらかと言うと苦手科目だった数学の先生から言われた言葉がいまだに心に残っているのをずっと不思議に思っている。
自分はいつの間にか帰還していた。アルファと名付けた彼に別れを言ったことすら記憶にない。これはただの空想だったのだろうか。それとも実際に訪問したのだろうか。はっきりとは分からないが、自分の内面の世界を大切にしていこうと思うきっかけになった。
そしてこの事は敢えて無理に人に伝えて共有する必要もない。世界を変える意図で広める必要性も感じない。ただただ自分が自分の世界を楽しめば良いのだ。こうして書きたくなった時、もしくは直接共有したい人が現れた時、その時はお互いに楽しめば良いのではないだろうか。
宇宙の果ての景色を見て、そのエネルギーを感じるだけで良かったのだが、今回の案内役になってくれたアルファのおかげで貴重なアドバイスをもらえた。そういえば、彼の惑星の名前も聞いておけば良かった。あと何星人なのかも。まぁ、いっか。本当の名前って翻訳するの難しいから。
プレアデスの銀河のエネルギーのおかげで今回は遠くまで訪問できた。また今度、別の場所を訪れてみようかな。気が向いたら。そんなふうに思うのだった。