究極の旅 100万年前の世界 その1
最近ゆっくりと読み始めた本がある。ロバート・A・モンローの「究極の旅」だ。古本屋で購入したのは昨年の秋頃なのだが、読んだのは数ページだけであった。それ以降、なかなか読む気になれず本棚に置いたままだったのだ。それがここ1週間ほどで何となく読んでみようと思い、続きを読み始めた。
ちなみにロバート・モンローであるが、体外離脱現象(体脱)の研究者であり、20世紀最高の体脱能力者といわれている。音響システム「ヘミシンク」の開発者だ。
いろいろ書くと前置きが長くなるので、さっそく私が気になった個所をところどころ紹介したい。今だから読むことになったのかもしれないと思っている。
ロバートが体脱の世界を体験する際に、初期にはインスペックという非物質存在の案内役がいた。第3章の「インターステートを行く」では、その存在に案内されながら訪問した世界を描いている。
以下の『 』は本から抜粋した個所であるが、自分が興味深いと思った箇所だけなので前後のつながりは途切れている場合もある。その間については各自で想像してもらうか、興味のある方は実際に本を購入して読むのが良いと思う。
第3章の初めでは前章の内容に触れている。ロバートの故郷を体験した時の話だ。< >内はロバートのガイド(非物質存在)であるインスペックの言葉。前半はロバートとインスペックの対話が中心になっている。
「究極の旅」 ロバート・A・モンロー著
第3章 インターステートを行く
『
<あのエネルギー・パターンは・・・君が、人としての人生で学んだものではなかったね>
ああ。だから「故郷」を離れたんだ。あの、繰り返しだけの限られた世界をね(※ロバートの故郷とは渦巻きの世界のこと。渦巻きを体験するだけの世界)。成長もなければ、何かを新しく学んだり経験したりということもない。地球に生きていれば、四六時中学ぶことばかりだ―――変化や新しい知識が絶えずおしよせてくるんだから。でも、もう「故郷」に帰れないという事実には、何とか慣れていかなくちゃならない。簡単なことじゃないけれど。
<それでも、慣れるものさ。人間には戻れなくなる時が来れば、それになじんでいくのと同じだよ。こう言った方がいいかな―――単に戻れなくなるというより、戻る必要がなくなるんだ。君の言葉を借りれば、人間というコートや手袋がきつくなってしまうときにはね>
そんなことが起こるのかい?人間でいたくなくなるなんてことが?いったい、どうしたらいいんだ?
<その時が近づいてくれば、今思うよりも簡単に対処できるさ>
うーん・・・あなたがそう言うなら、信じるよ。
<ただ「信じる」のではなくて「知る」時が来るよ。君がよく言うようにね>
力になってくれてありがとう・・・・こんな言い方じゃ足りないけれど・・・・・
<わかっているよ。どういたしまして>
光輝く姿は薄れはじめ、やがて瞬いて消えた。私は何事もなく肉体に戻った。』
上記の体験の後、ロバートは畏怖を感じさせるけど暖かい、インスペックのような存在になりたいと思うようになった。そう決めると自身に向けられた優しい励ましを受け入れた。すると、心の中に安らぎと興奮の入りまじった不思議な感覚、単純であると同時に複雑な、言葉にできない親近感と一体感のようなものが生まれてきた。
『頼み込んで、インスペックの世界の周縁部に少しだけ連れて行ってもらったとき、この感覚は急激に高まった。私を突き抜けていく豊かな共感と放射以外は、ほとんど何も感じとることができなかったのだが、それでも、大勢の者が幸せに暮らしているという印象を強く受けた。さらに、この共同体(コミュニティ)に流れ込んでくる新参者たちもいて、その流れはライフ(Layered Intelligence-Forming Energy———知性を形成するエネルギー層)として感じられた。奇妙なのは、そこが新しい故郷のように思われたことだ。まるで、その住人たちをすでに知っているかのようだった。いや、知っているというだけではない。私が彼らの一員であり、彼らが私の一部であるかのように感じられたのだ。
活気と穏やかさが一体となったその世界を知って、私は考え込んでしまった。どうして地球に暮らす人類も、あのような調和のうちに存在することができないのだろう?次にあったとき、私はインスペックの友人にそう質問してみた。それは、私が後に「信念体系領域」だと気づくことになる環体(リング)世界の外縁を越えて漂っていたときのことだった。その領域は、(M)フィールドのスペクトルのうち、地球の生命系と隣接する部分で、肉体の生を終えた人間精神の多くが住むことになる場所だ。中心に地球があって、光芒を放つ半透明の球体がそれを幾重にもとりまいているのだわかった。』
——— 中略 ———
<君の言う通り、君たちの文明が構造のこの側面について何も知らないなんて面白いね>
実際、それを知る時が来るのかね。
<君の望むような完全なかたちでは、無理だろうな>
もしこれを知っていたら、混乱も収まるだろうになあ。何もかも、無意味に思えることばかりだよ。痛み、苦しみ、残酷な感情。あんな大混乱が、何かの目的で引き起こされているとはとても思えないね。
<機会が来れば、君の言う「異なる世界観」が得られるかもしれないよ>
機会?そのことで、私が何かをするチャンスが来るっていうのかい?
<そうさ・・・君と君の友人たちが、ね。どうだろう、君の世界とはまったく異なるありかたも存在するってことを確かめに行ったらいいんじゃないかな。たとえば、今とは違って、君が考えている理想に近い人間社会がある時代を訪ねるんだ>
そんなことができるのかい?
<君が望むならね>
一緒に来てくれる?
<いいとも。用意はいいかい?>
ゆっくり行ってくれれば、やり方を覚えられるかもしれない。
<もうわかっているはずだよ。君が「故郷」と呼ぶところへ行ったときのやり方と同じだからね。知らないのは目的地だけだ>
その通りだな。先に行ってくれ。ついて行くから。
光輝く姿は動きはじめた。私は間をあけずに続いたが、その姿は突然小さくなりはじめた。私は自動的に反応していた。地球のエネルギーパターンが闇に溶けてゆき・・・そして、暗闇の中から景色が浮かび上がってきた。すぐ前に、光を放つインスペックがじっと止まって待っていた。
私たちは、幅広い谷の上方三百メートルほどのところにいた。その谷は長さが15キロ前後、幅が8キロくらいに見えた。雪に覆われた峰々が谷の三方を囲んでおり、開けた一方の側には、森や野原が地平線まで広がっている。明るい太陽が、白い積雲をいくつも浮かべた青い空にかかっていた。
私たちのすぐ下には大きな集落らしきものがあって、それが山の麓まで続いていた。形も大きさも様々な木々がかたまって生えていたが、ありとあらゆる色あいの緑の葉でまだらになって見えた。木々の間を縫って走る狭い小道が、入り組んだ大規模なネットワークを形づくっている。しかし家や建物はなく、煙やスモッグもなかった。空気は完全に澄みきっていた。
私はインスペックの方を向いた。
家はないのかい?建物も?
<眠る場所は地下にあるんだよ。職人たちの働く場所もね>
みんなどこにいるんだ?
<木々の間さ。それぞれ、与えられた働きをしているんだ>
何人くらいいるんだい?
<二百万を超えたくらいだね、私たちの知るかぎりでは>
二百万だって!
<そうさ>
ここみたいな集落はどれくらいあるんだ?これは、我々の惑星、地球なんだろう?
<確かにそうだ。でも、このような場所はここだけだよ。人間が住んでいるのはここだけさ>
地球上で、ここだけ?
<その通り>
何が起こって、何十億という人口がこんなに減ってしまったのかは、訊かないことにするよ・・・つまり、これが我々の将来に待ち受けているものなんだね?
<君、間違った方に考えているよ>
どういうことだい?
<これは、過去の世界なんだよ、君たちの時間の表し方でいえばね>
過去だって!我々の歴史には、これに少しでも似たようなものは、何も残っていないよ!すごく遠い過去に違いないね。
<ああ。君たちの数え方で、百万年近い昔だよ>
住人達は・・・人間なのかい?私のような?
<若干の違いはあるけれど、確かに人間だよ>
降りて行けるかな?
<もちろんさ。そのために来たんだから>
あっちの人たちに、私たちは見えるのかい?コミュニケートできるのかな?
<ああ、問題ないよ>
私たちが入って行って、怒らないかな?
<その逆だとも。歓迎してくれるさ>
私たちは木々の方へ舞い降りていき、フットボール競技場くらいの大きさの開けた場所に降り立った。それは公園か、さもなければ花園のようで、手入れの行き届いた不規則な形の花壇に花や植物が植わっていたが、どれも知らない種類のものばかりだった。草の生い茂った広い歩道が、花壇の間を緩やかなカーブを描いてのびている。足の裏に草の感触が感じられるような気さえした。
<確かに感じるはずだよ。目に見えるのと同じことさ、肉体にいるときと同じようにね。ただ、今は肉体にいるわけではないけれど>
私が振り向くと、インスペックの輝く姿が傍らにあった。そして、足早にこっちに向かって歩いてくる人が四人。背丈は百五十センチくらいで、おのおの髪と肌の色あいが異なっている。髪の長さはみな一様で、耳のすぐ下まであった。顔と身体は、活動的でたくましい三十歳くらいを思わせたが、筋肉隆々というわけではない。二人は男性で二人は女性だった。これは簡単にわかった。みな、服を身につけていなかったから。
<服の必要がないのさ>
身体の保温はどうするんだい?気候の変化からどうやって身を守るんだろう?
<そのためのコントロール・システムを、各自が持っているんだよ>
何も見あたらないけれど。
<みんな心の中にあるのさ、君の言い方でいえば>
あなたは、前にここに来たことがあるんだね。
<ああ、そうさ・・・ある意味ではね>
続く