地球へ


光の速さを超えて進んでいる。船の外の景色は真っ暗だ。時々明るくなる時もあるが、それ以外の時間は暗黒の世界。
だから船内の窓から外を眺めるのはやめた。
船内は400mトラックくらいの広さがあり、高さは4階建てだ。



「もうすぐだな」
艦長が皆に語り掛けた。
そう、もうすぐ地球に到着する。あと3日くらいかな。
1か月かけて慎重に移動してきた。
地球についてあらためて船内でも勉強した。

「あなた、やっぱり特殊よね。何種類の混血?」
相手の混血度や転生の回数に興味のある同僚の女性が話しかけてきた。
「レプティリアンとゼータレチクル。それにプレアデスやリラ、アンドロメダの人型や、非物資生命体としての転生の経験も含まれているよ」
「へーやっぱり~何か他の人と違うと思ったのよね」
彼女が目を輝かせて答えた。

我々は地球に向かっている。
地球での目的を達成するために。
そして同時に体験するために。
この時期の変化を。
既に自分たちと同じような目的で何度も船は地球の5次元を訪れ、転生システムを利用して人間として誕生しているものが大勢いる。
我々の一世代前にはプレアデス人が地球人として数多く転生した。

それはいわゆるライトワーカーとして、そしてライトウォーリーアーとして。彼らのリーダー的存在は君たちの指針になるだろう。彼らは地球では歌手、作家、役者など、目立つ形で世の人々に光をもたらす任務がある。彼らは第三世代と呼ばれる。そして君たちは第四世代だ。
さらに同じ世代でも様々な国に派遣されるが、君たちは日本という国に降り立つ。

第三世代は君たちが10代の年齢になる頃までに頭角を現し世の中に光をもたらす事になっている。世に愛と慈愛の光をもたらし、あるいは世の不正と戦い、そう人々に訴え正しい方向に導こうとするだろう。
特に男性として生まれるライトウォーリーアーはその生き方が強烈で、君たちにすら理解するのが難しいほどだ。だが、確実に彼らを支持する人たちが現れ受け継がれていく。そのくらい強烈な光を放つのだ。それゆえに短命で役割を終える予定だ。つまり早々に地球を離れる。後に残された君たちに希望を託して。

君たち第四世代は彼らと性質が違って、どちらかと言うと隠密に実行するタイプになっている。できるだけ目立たず闇の者たちに芽を摘まれずに成長し任務を遂行するのだ。第3世代の光は強烈だが、それゆえに目立ちすぎ潰されやすい。ゆえに君たちは平凡な一般民として生まれるのだ。

そんな事を言ってたっけ…
もうだいぶ前のことだ。
記憶には残っていないが、そうかもしれないと想像してしまう。
でも、そんな事を気にせずに別の機会で宇宙船に乗れたらなぁ。
様々な異星人達が行き交い、食事をし、何かしらを学び合い語らい合う。時に笑い合いしがらみなく自由に咲き方する。
自由に研究したり研修したり…

そんな巨大な宇宙船にのんびりと短期滞在できたらなぁ。

そういえばさっき宇宙船の中で話しかけてきた同僚の女性、あの時に君の後ろには…いや君自身の頭からはバッタやアリのような昆虫のような長い触覚が伸びている姿がボーッと見えたよ。
そのうちに顔も昆虫みたいな顔に変わってみえた。
目も複眼だった。
透けてる感じにだけど。
君こそ特殊なんじゃない?
と思ったけど、なんとなくその女性には言えなかった。

そして今から5年ほど前、彼女を近くの大手電機店で見た気がする。
何でそう思ったのだろうか。
彼女は同僚の男性店員と一緒に店にいた。
何か話していた感じだった。
大きな家電製品とかを買うと普通のレジではなく、店の中央にあるテーブルとイスが設置されている場所で説明を受けるが、その辺りにいたと思う。
2人で何やら仕事の話をして微笑んでいる様子は、まるでカマキリのように見えた。
彼女、カマキリ型の宇宙人の人生が色濃く出ているのかもな…
チラッとこちらを見て目があった気がしたが、何も気づかなかったようだ。
本当にあの時の彼女だったのかは分からない。
宇宙船で会った彼女だったとしても、もはやあの船の中の記憶は微塵も思い出せていない様子だった。もうこの地球人生に埋没しているようだ。
今はどうか分からない。少し思い出すきっかけでも起きたかなぁ。
そして少しでも思い出したら雑談してみたい。
地球人の男はどうだった?なかなか良かった?
あ、でも彼のほうがよりカマキリ型の宇宙人に見えた。
けっきょく彼も同じ宇宙船に乗っていた仲間の人物だったのだろうか。
ところで俺?
そうだね、地球人の女性もなかなか良いよ。でもさ、自分と惹きあう女性って結局自分達と同じように他の惑星の転生が多い女性か、母性の強い女性かもしれない。
いや、そんなの関係ないか。惹かれあうのに理由はいらない…

宇宙船で艦長はこうも言っていた。君たちは遅くとも転生から50年経過する頃までにはおおよそ思い出す事になっている。思い出せない者には多少の強制介入があるだろう…とも。


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