流行り病
発熱、咳、頭痛、倦怠感。
それらを感じたときに
あぁついに来たか。
そう思った。
とにかく今日のお店はお休みだ。
お店のSNSを更新し、ベッドに伏せる。
頭の熱とは裏腹に冷静になっていく僕の頭。
「GWの営業は厳しいか。」
気分が鬱々とし始めると同時に、
感染したことは隠した方が良いのか?
どこから感染したのか?
誰にも迷惑をかけていないよな…?
なんてことを考えてしまったり。
僕は健康だな…笑
そう思った。
患う。
翌日保健所の指示に従い、
指定された小さな病院へ向かう。
駐車場には溢れんばかりの車が停まっていて、
事の重大さに気がつかされる。
程なくして、お医者さんがやってきて
車の窓越しに綿棒を鼻の中に。
「ほごっほごっ…!」
できるだけ迷惑をかけないように咳き込む。
15分後、
僕は陽性反応が出たと告げられる。
10日間の自宅隔離
嫌な数字だ。
きっと長い10日間になる。
だけれど、あっという間なのかもしれない。
何をしようか?
考えてみると、ワクワクもしたし
鬱々ともした。
あー
あーー
あーーー!!!!!
なんで僕なんだろうか。
客商売してるから?
いや違う。
僕はこの期間中、
お店でほとんど接客をしていない。
ってかここ数日で接触した人数数えてみたけどさ、
10人?
店サボっちゃった日もあったから、
そんなもん。
僕は文字通りの貧乏くじを引いてしまったらしい。
手洗いうがいだって、こまめな換気だって
マスクだって消毒だって。
僕は人一倍気をつけていた自信があったから。
どうしてみんなはかからないんだろう?
いや隠してんのか?
疑問は深まるばかり。。。
……
ってか、
僕元気じゃね?笑
10日間、
アニメを見た。
ゲームをした。
部屋の片付けをした。
収納棚を作った。
料理をした。
そして、沢山寝た。
大学時代の友人とオンライン飲み会をした。
やりたいことをやっているはずなのに、
人に会えない孤独感と、日光を浴びない生活(我が家は陽当たりが悪い。)
は僕の心を蝕んだ。
やがて、チュンチュンと鳥が囀り始める早朝に
床に伏す。
スマホ、PCばかりを眺め
特に動かない僕の身体には疲労感も無く、
時の流れ、体内時計も狂い始める。
ピンポーーン!
「宅配便でーす!」
ご苦労様です。
家の前に置いておいて下さい。
と伝えると、
「サインをくださーい!」
ぐぬぬ。
少し大きめの声でコロナなので無理です。
そう伝える。
くーー!
余裕が無い。
性格が悪くなってしまう。
荷物を回収し、
反省。
…僕元気じゃね?
保健所からの連絡も無く、
日々は過ぎていく。
「けんた。コロナ大丈夫?」
ラインが鳴る。
田舎の情報網は早い。
考え事?
瞑想?
等をしながら10日間を過ごした。
過ぎてみれば、あっという間だった。
思い出が無いからだ。
何をしていたのか、全く思い出せない。
こんな摩訶不思議体験が
この流行り病では体験ができる。
熱は2日で下がり、
頭痛は1日で治り、
咳は4日かかった。
ただ、
僕は至って健康だったし、
身体より心がすり減った。
会社員では無い僕ですら、
やはり感染をしてしまうと大なり小なり迷惑をかけてしまう人がいた。
やはり気を遣う。
まぁ、
でも症状は千差万別、十人十色。
残念なことに重症化してしまう人もいる。
僕の意見はあくまで個人の経験則に基づくものであり、
偏った主張をしたい訳では無い。
そう。
僕が結局感じたことは
”正しく恐れる”
というふんわりした言葉に、
個人的に騙されたということ。
得体のしれないものだったから、
僕は必要以上に恐れていたのかもしれない。
もちろん、
感染症対策を万全に行うことは必須だけれど、
この流行り病を理由に挑戦をやめたり、
逃げたり。
都合が悪くなったら、都合よく解釈してしまう
この現代病から
脱却しなければならないと。
強く思った。
10日間の隔離生活が終わって、
食べたラーメンがとても美味しかった。
筋トレがとても気持ちよかった。
大丈夫?って心配してくれるみんなの声と
久々に浴びる日光が暖かかった。
太陽まじラブ。