【超短編小説】 人の不幸

 わたしは人の不幸をおかずに白米を食べる。
 飼い主に「ニャー」と鳴くと、巨峰一粒程の白米を分け与えてくれる。わたしはそれを人の不幸と共に咀嚼する。これが実に甘いのである。
 
 わたしには好かない女がいる。
 その女は、飼い主の元に来ては愚痴を言う。どんなことでも被害者になりたがる。都合が悪いと開き直り、いかに自分に非がないかを声を張り上げ主張する。
 
 何ヶ月か前のこと、わたしが病院へ行くのに何故かその女がついてきた。その行く先、女が白いクリームが乗った飲み物を買い、飲み終わると道端の見えない所へポイッと捨てた。「だってゴミ箱がないんだもん」これが女の言い分だ。
 
 今日、女がその飲み物を持ってまた家にやって来た。
 女はストローを摘み
「この紙のストロー、ホント最悪。口当たり悪いしさ、紙なんて口に入れたくないっつーの」
 などと言っていた。
 口に異物を入れたくないのは、他の動物も同じである。
 いい気味だ。今日も白米が美味い。

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