【超短編小説】 雨の輪
あれは何度目に生まれたときだっただろう。僕は初めて君に出会った。
君はベビーカーに乗り、純粋無垢な目で不思議そうに僕を見上げていた。
僕が生まれるときは世界は暗いことが多い。だから世界の始まりのような輝く君に惹かれ、君の鼻にトンっと着地をした。君は少し驚いた様子でパチパチと手を叩いてくれた。僕は嬉しくて、もう一度君に会いたいと思った。
それから何度生まれ変わっても、僕は君を探し君の元へ向かった。
「オレは雨が避けられる!」と友達に豪語しているから、仕方がないから僕が避けてあげたことが何度もあるし。
君の初デートのときも、僕が真っ先に君の元へ知らせに向かったんだ。君は少し鈍いからね。
それなのに、君はめっきり僕のことを忌み嫌うようになった。
前髪がどうとか、洗車したばかりだのと言い。終いには「オレは晴れ男だ」と意味不明なことを断言する。
君は雨に愛された人だ。僕が雨でいられる束の間、君に一目会いにいくんだ。
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