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台風とは



台風は夜のあいだに厳かに通り過ぎた。
やはり台風というのは
誰もいない真夜中の通りをびゅーびゅーザワザワ翻りながら通り過ぎるのが美しい。
その姿を
暗闇の中ふと目が覚め、カーテンをそっと開け覗き見する時の神妙な心持ちたるや。
怖いけれど心惹かれる。
まるで生き物。
さらさら柔らかく吹く風も
ごうごうけたたましく吹く風も
同じ生き物な風なのねごめんなさい。


職場へは徒歩で通う。
引越しを機に車を一台手放しほぼ完全なペーパードライバーになった。良かったと思う。
何故ならもともと運転は苦手だし、維持費もバカにならないし、徒歩二十分の職場への旅は運動不足の解消にも少しは役立つ。

と言っても出勤は徒歩だけど、帰りは車でお迎えがある、夫の。
夫は今職業訓練校へ週五日通っていて、ちょうど帰りが私の退勤時刻に合うのだ。
だからお迎え。
これがとても嬉しいデートのようで。

普通に帰ると2、3分で到着するのだけど時にはコンビニ、そのコンビニでアイスを買って駐車場で食べたり。
いつもと違うスーパーにちょっとだけ寄ってみたり。
夫の実家におかずや野菜を貰いに行ったり。
その時々によっての道草は、まるでデート。
夫が学校に通うようになって完全に休日がすれ違いになったので、一緒に出掛ける時間はとても貴重で嬉しい時間。

そして昨日。
お迎えに来てくれた夫が
台風で停電になるといけないから、もう今日はスーパーでお弁当でも買ってサッと食べないかい?と言う。
もうこれだけでウキウキワクワク。

スーパーへ入り各々夕方の割引シールの貼られた弁当ともう一品ずつ追加で買う。
そしていつもの「アイス買う?」
会計を終え駐車場でのアイスタイム。
牧場しぼりのバニラを初めて食べたけど、とても美味しいね。

帰り着き弁当をサッと食べ、
お風呂に入り就寝。
のはずが、やはりなかなか寝付けず。
寝たと思っても途中で何度も目が覚め、起きては水を飲み、起きてはトイレへ行き。
その時の
カーテンの隙間から覗く道道の風の通りと言ったら。
厳かで、これこれと思う。

決して建物をバキバキなぎ倒したり、川の水を溢れさせたりする規模でなく、こんなふうに夜の町をごうごう通り過ぎてゆくだけの大きな風。
子供の頃の台風の記憶。
都合のいい好みだけれど。

そんなこんなで通り過ぎた、ひとまずの台風。
次に控えるのは、大きな台風。
都合よくて申し訳ないけれど、無事に終えられますように。










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