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「後ろはなるべく振り向かない」



夫がコツコツ進めていた詩集作り、とうとう先日出版されAmazonの電子書籍Kindleで販売が開始されました。
初めての事なのでしかも電子書籍。形式や何か私にはさっぱり分からない細かな調整に夫も四苦八苦しながら、やっとここまで辿り着きました。


これは第一詩集。
まだまだ沢山の詩を持っている夫は、次の詩集作りへとまた少しずつ取り掛かる予定です。その詩集に相応しい詩を選ぶ作業が一番時間を要するのだと、傍らで見てて思います。楽しみ。

そう、私は楽しみなんです。
夫は高校の時から詩を書いていて今が五十三歳。当然私の知らない詩は沢山あって。夫がこの詩集出版のお知らせをFacebookで投稿すると、高校時代の同級生が「高校の時の詩を今でも覚えてる、とてもよかった」とコメントしてくれてた。

すごいな、いいなーと思った。
私もその同級生だったらよかったなと、子供じみた事を思ったりなんかして。
分かりますかねこの気持ち。
味わいたかったと思いましたよ、当時にその衝撃を。

ところで、夫が夫がと、もはや当たり前のように言ってますが、
どんな人と聞かれても、とてもとても一言や二言では表せないような人なので、また夫の文章を載せます。こういうのを書く時は、ちょっとカッコつけてるなーと思います。。
そうそう、この中で「先生」と呼ばれてますが先生ではないです。事務補助員(用務員)です。

最近、新たな趣味を見つけた。

草刈り。

草刈り機で刈る。ひたすら刈る。
これが、とても気持ちがいい。

〇〇農場様のご厚意により、草を刈る場所を提供していただき、あろう事か給与まで頂きながら最近この趣味に没頭しております。
高校での仕事が終わった後、すぐに草刈り場へ向かう。
「井上先生。先生もこの暑いのに草刈りのアルバイトをして、いやはや大変だねい。頭が下がります。」
などと、教師等は言う。
彼らは知らないのだ、草刈りの楽しさを。
草刈り機のエンジンの振動がもたらす高揚感を。混合油の香りを。
陽炎に揺れるトンボの舞いを。
カラス、ああカラス。どんなに群れたところで影にはなれない。
夏の炎天下、1時間を超えたあたりから、いるはずのない坊さんが目の前に現れ読経を始める。
南無阿弥陀仏。南無阿弥陀仏。
空にジミ・ヘンドリクスの"Voodoo Chile"のギターソロが揺れている。
無心。
まさに無心となって草刈り機を右から左に振る。
汗は滴り落ちない。右から左に飛んでゆくのだ。
後ろはなるべく振り向かない。
今日のぶんの草刈りが終わって初めて、今日刈ったところを振り返る。
爽快だ。
草がなぎ倒され、土の上に寝ている。
その様を眺めるその瞬間が爽快だ。

趣味は何ですかと問われたら、草刈りです、と答えるだろう。
夢は何ですかと問われたら。
どこまでも続く広大なモンゴル平原。
そこで思う存分、草を刈る。
それが夢です、と答えるだろう。
譲れないものは何ですかと問われたら。
ナイロンカッターはいらない。
チップソーを持って来い!
と答えるだろう。

昨日、5回目の結婚記念日を迎えました。
おかげさまの夏。
生きています。


夫の詩は、私は好きです。
初めて夫の詩を読んだ時、震えましたもん。
何故この人はこんなところに普通に居るんだろうと不思議で仕方なかった。
世界が見えます、詩の。
褒め過ぎですかね。
いいんです、夫婦ですもの。
褒め過ぎたって、バチは当たりません。















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