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こんな記事を書くつもりはなかった。

「彼」とマドリーの、恋人になる前の”探り合い”が終わった。

恋愛のチューニングは突然狂い出し、それは音が鳴らなくなるまでに破壊された。


マドリーは、チャンピオンズの舞台でパリをなぎ倒し、次のステージへと歩んでいく勝者の姿を、「彼」の目の前で二度も見せつけてきた。

一度目は17/18シーズン。最終的にはラモスがキエフでトロフィーを掲げていた。

二度目は言わずもがなだ。明らかにあのパリは強かった。「彼」は速く、強く、恐怖だった。

今では、あの、両手を脇で挟み腕をクロスさせた仁王立ちに魅力を感じなくなってしまった。


あの日の3-2というスコアは「ビッグイヤーを掲げたいなら待ってるからマドリーへ来い」というお告げのはずだった。移籍するには最高の理由とタイミングがそこにはあった。

だが、「彼」は捨てた。理由もタイミングも、夢も。拾ったのは話題性とお金だ。


ノルウェーの怪物はイングランドへ行き、フランスの「彼」は母国を愛でた。

一度は「懐疑」と裏腹に「夢」も見た、ノルウェーとフランスの若き戦士のコラボはお蔵入りとなった。

だが、何も心配はいらない。我々にはベンゼマも、ヴィニも、ロドリゴもいる。マドリディスモの体現者はマドリディスタに寵愛される。至ってシンプルだ。

大事なのは「彼」ではない。マドリディスモの体現者なのかどうかだ。



「彼」のために費やした月日は帰ってこないが、「彼」のために用意した札束は手元に残っている。

さて、この札束を何に使おうか。

贅沢な悩みが舞い降りてきた。


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