21/22 選手別講評【FW編】
この記事では「FW編」として選手別講評をしていく。
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7.エデン・アザール
昨年はスタンフォードブリッジでの談笑が話題性を生んだ。
そして今季は、優勝パレードにて大勢のマドリディスタの前で「来年は俺の年にする」と、やりすぎとも感じる宣誓をし、またもやゲームの外で話題をつくった。
来季活躍できれば賞賛の声は届くだろうし、出来なかったらまた批判される。だが、とりあえず今はマドリディスタはそう大口を叩いたアザールに期待するしかない。それがあの発言に隠された真意かもしれない。
個人的な今季のイメージは、招集はされるが使われないといった感じだろうか。
そんな彼の元にイングランドからエキセントリックな友人がやってくる。アザールのゴールは3年間で6つ。リュディガーがこの成績を先に越してしまうこともあるかもしれない。いや、あってたまるか。
ある程度、サポーターからの期待値も高いと感じる。3年分の裏切りを1年で返せるほどの期待をしてもいいのだろうか。
9.カリム・ベンゼマ
どこから語ればいいか分からないため、まずは今季の成績から。
今季のマドリーは重度のベンゼマ依存症だった。あとに登場するヴィニとベンゼマの関係性はBBC以来の新時代を呼んでいるようだ。
かつてはクリスティアーノが得意にしていたことからCristiano Leagueとも呼ばれていたあの大舞台が、今季はベンゼマのものになった。ただKarim Benzemaのどこを見ても「C」の文字がなく上手に文字ることができないのが悩みどころ(幸せな悩み)だ。
パリには「安心感という名の危機感」を覚えさせ、流れるプールで優雅に泳ぐチェルシーには水の吐き出し口を止め、マンチェスターシティ相手にもそれは続いた。
決勝T進出後、ファイナルに至るまでの決定打はすべてベンゼマだった。繰り返すが、ラストワン賞をすべてベンゼマが引いたのだ。
2019年に突如として、彼の右手小指に宿った9番魂はそろそろ神話となって言い伝えられるほどの年月を経ただろう。
ベンゼマのいないマドリーは、夏休みのない八月のよう(RA〇WINPS)。
P.S. バロンドールの発表は10月17日(現地)です。彼です。
11.マルコ・アセンシオ
今季も生き残りをかけたシーズンだった。
カーディフの地で、21歳の若さでゴールスコアラーにもなったスペイン人は今では居場所を探している。
リーガでの得点数を初の二桁に乗せ、キャリアハイの成績でシーズンを終えたことは非常にポジティブなことだ。昨季(20/21)に比べると出場時間は100分以上短かった中で、ゴール数は2倍となった。
一方で、同じポジションでプレーをするロドリゴのシーズン終盤の追い上げがチームの象徴となり、アセンシオの出る幕が減った感が否めないのも事実だ。
それでもインテル戦、グラナダ戦では十八番のミドルシュートでスタジアムを沸かせ、マジョルカ戦では故郷への愛も見せながらハットトリックを記録した。
フランスの「彼」の獲得失敗で急激な出場機会の減少は免れたようにも思えるが、クラブは来季も彼に背番号を与えてくれるだろうか。それとも…
16.ルカ・ヨビッチ
シーズン0ゴールの悲劇は回避できた。辛口かもしれないがポジティブなところは以上だ。いや、そもそもこれがポジティブなのかも怪しい。
ベンゼマのいるフットボールに慣れてしまっているマドリーは、ヨビッチになるとフットボールの勝ち方を見失う。
ゴールへの嗅覚とバリエーションの多さはフランクフルト時代に高く評価されていたはずだ。
彼のようなタイプのCFを味方につけたときにチームとしての完成度が低下することはジダン政権でも問題視され、カルロも重要な戦力として認めなかったようにも映る。
今後、手を挙げてくれるクラブは現れるだろうか。
18.ギャレス・ベイル
過去にあらゆるサッカー少年を釘付けにしたトリオ、俗に言う「BBC」が本格的に解体された。
強靭な肉体美を持ち、爆発的なスピードとパワーで一時代を担ったベイルは契約最終年にもう一度カルロと手を組むことになった。
右サイドで戦えるレギュラー的存在がいないマドリーは、ベイルをイングランドから買い戻し、開幕後数試合は彼に期待を寄せていた。
しかし想像以上に苦しむシーズンとなり、リーガでプレーした時間はわずか283分。4試合分にも満たなかった。
リーガ優勝が決まったエスパニョール戦。そこにベイルの姿はなく、彼だけSNS上で喜ぶ形となった。
ベイルが投入されるとベルナベウにいたサポーターたちがブーイングを響かせたのも記憶に新しい。それでもリヴァプール戦後のセレモニーに駆けつけたサポーターたちは拍手で彼を見届け、喧嘩別れではなく理想的な別れといえる雰囲気を作りあげた。
P.S. 祝、W杯本大会出場
20.ヴィニシウス・ジュニオール
時は19/20シーズン 第6節 オサスナ戦。ヴィニはこの試合でゴラッソを決め、歓喜の余り、その場でしゃがみこみ涙を流した。それまでたくさんのブーイングを浴びてきた成長段階の少年がそこにはいた。
18歳にしてクラシコを経験し、19歳でスペインの頂点を知った。そして21歳で欧州王者を視界にとらえ、自らの足でチームを頂上まで連れていった。
カルロはヴィニに完全なる信頼を寄せ、特別なことがない限り彼をスタートから躊躇なく送り出した。
彼を語るには、ベンゼマの存在なしでは不可能だ。最愛なるベンゼマとのコンビネーションは阿吽の呼吸そのものであり、レアル・マドリーの面白さはそこに詰まっていたと言っていいかもしれない。
シュート前のタッチ数を調整したのは有名な話で、それ以外にもロングカウンターを待つチームシステムも彼の良さを引き立てた。
散々だった決定力を弱点から武器と変え、アシストの醍醐味も知った。得点数もアシスト数も大幅に自身の成績を塗り替え、彼にとってもう二桁は大台ではない。
来季も左はヴィニに決まりだ。彼以外に誰もいらない。
P.S. あと2ゴールで得点ランキングがワンツーフィニッシュだった。惜しい。
21.ロドリゴ・ゴエス
決して順風満帆なシーズンではなかったはずだが、彼を称える声はとてつもなく大きい。
本来は左サイドを得意とするロドリゴは、1年先輩のヴィニの覚醒を受けて右サイドへと追いやられた形で数年を過ごしてきた。
今季もリーガではなかなか好成績を残せず、結果が出るようになり始めた頃にはシーズンは終わりかけていた。一方、CLでは右サイドにバルベルデが起用されることが多く、ロドリゴの投入は試合展開に委ねられる形が定番となっていた。
カルロはパリ戦以降、ビハインドの打開策として何度も重役をロドリゴに託した。もちろんCL男は黙っていなかった。ロドリゴはチェルシー戦(H)で同点ゴール、シティ戦でも3-5(Agg)から2分で2点を取り、90分からスコアをイーブンに戻す大役を果たした。
ロドリゴがチームに電気ショックを与え、ベンゼマがチームを生き返らせる。そしてヴィニで頂を掴む。
ドラマとしては出来すぎた数々の夜だった。CLは一種のドラマ作品ということを思い出させてくれたのはロドリゴとベンゼマだった。
来季こそはリーガでも成績を残したい。
24.マリアーノ・ディアス
CLファイナル直前の練習で、レギュラー・メンディに猛チャージを試んだ男、マリアーノ。
他にも彼を紹介する文はあったが最終的にこれに決めた。
彼が試合に出るとなんだかいろいろカオスに見える(悪口ではない)。やる気が空回りしてるというのは言い過ぎかもしれないが、伝えたいことを理解してくれるマドリディスタがいることを切に願う。
今季の彼の思い出を語ろう。第12節エルチェ戦ではヒールをつかった上品なポストプレーでヴィニのゴールをアシスト。マドリディスタは歓喜より賞賛の声で溢れかえった。第37節カディス戦ではロドリゴの6人抜きの美味しいところをごっつぁん。CFなのでそれもひとつの仕事なのだが、すごく嬉しそうにしてたのがやけに印象的だ。
来季はどのクラブでどの背番号を背負っているだろうか。
最後まで読んでいただきありがとうございました。そして、21/22シーズンもお疲れ様でした。