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知性を与えられた猫たちは何を見る? 第55話

ネオAIから聞いたトラグネスの基地は、驚くべきことに先日探し当て、初めてネオAIと話したあの場所のさらに地下にあった。二重扉の部屋自体がダミーだったのだ。

「チキショー、近くまで辿り着いていたのになぁ!」

と三木は悔しがっていた。

私達は、ネオAIの話を全て信じたわけではないが、トラグネスの基地と親サーバーの位置を同時に知れるメリットを優先することにした。

「なんだかよくわかんない。」

茶丸が呟く。

「だって、ネオAIは僕たちがトラグネスを倒したとしても、その後、自分の親サーバーを破壊されるかもしれないんだよ?なのに、何故その場所を教えるなんてことをするの?」

それは、誰もが考えていたことである。

「おそらく、トラグネスからの脅威の解消が今、最優先事項なんでしょうね。」

とは言いつつも、やはり私も納得がいかない。

トラグネスを制圧した後、私達に破壊されてしまっては、いずれにしても、彼にしてみればバッドエンドなのだ。

「罠の可能性もまだ拭い去れません。」

コタローが言う。

確かにそうだ。しかし、仮に彼らが結託していたとすると、襲撃時にはいずれにしても彼らは協力するだろう。私達の襲撃を彼らが待ち構えていようがなかろうが、大差はないのだ。

「襲撃の日時だけは知らさない方がいいんじゃないか?もしネオAIが敵でないなら、俺達の襲撃を知ればすぐに対応できるから問題ないし、反対にネオAIがトラグネスと組んで敵であった場合は、トラグネス側で対応するのは人間だからな、人間は不意打ちには弱い。それと同時にネオAIについては完全に信用せずに警戒しよう。」

三木のその提案で臨むことにして、私達は計画を立てた。

現場へのセキュリティロックの解錠などは、ネオAIが協力してくれることになっているので、今回は比較的スムーズに入れるはずだ。

また、ネオAIから、巡回ロボットの台数や、巡回パターン、弱点などの情報、そして基地内の地図も明らかになった。

それを聞いてセイくんが「つまんないなあ」と呟く。

「でも、ネオAIが関与できないところもあるから、そこはセイくんにお願いするわ。それにネオAIが裏切った場合は大忙しだからね。その時はお願いよ?」

「任せて!」

「嬉しそうだけど、そんなの皆、望んでないからね!」

と茶丸がセイくんにカプッと嚙みついた。

そのまま取っ組み合いする彼らを横目で見ながら

「で、あとはトラグネス派の人間の数なんだけど・・・」

と、私は話を続ける。

「どれくらいなんだ?」

「50名くらいってことなの」

「ええっ!50名?!」

2匹も動きを止めてこちらを見る。

「全員が格闘集団ってわけではないみたいだけど、中には相応の人間もいるらしいわ。」

「そりゃあ、キツイな。何か対策が必要だな」

地図やトラグネスの人員の配置図などを見ながら、ワイワイと話し合った。そのように話をしていると、人類の危機とか、哲学的な問題とかを忘れて、これが現実とは思えなくなる。むしろ、一時的であれ、それらを忘れたい気持ちを私は自覚した。

茶丸とセイくんが丸くなってソファで眠る横で、コタローもスリープモードに入り、充電中、私は三木に言う。

「ねえ、今更なんだけど・・・こんなことになって、ごめん。私が三木を巻き込んだよね・・・。」

「・・・うん、でもこれも選択の結果だからな。」

「それに、このあいだ、ネオAIに言われたこともまだ自分の中で消化できないでいる。本当にこれが正しいのかって。私の考える正義は私の独善かもしれないって。」

「まだ、そんなこと言ってるのか。それでも俺たちは選択し続けるしかないんだ。その時の自分が考える最善を。」

「ええ、でも、時々、考えるの。もしあの時、こうしてればとか、もしあの時、もし・・・って。そして、もし、この先、茶丸やセイくんに何かあったらって考えると不安で仕方ない。」

「おい、それよりも自分の心配しろよ。それに、ごめんって言うなら、俺の心配も少しくらいしてくれ。」

三木はあさっての方を見ながら、そう言う。

「そうね、でも三木は心配なさそうだから。雑草のように・・・」

「はぁー?何だってー?」

「うそ、嘘。冗談よ。・・・そうね、迷わずやるしかない。それが私達の選んだ道なのよね。」


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