エピソード コタローの恋3
「はーい。」
私が玄関のドアを開けると、森下さんとこの隆さんがそこに居た。
「あら、隆さん?」
「真崎さん!さっきはありがとうございます!あの後、車を調べてもらったら、真崎さんの言う通り、ブレーキに異常があることがわかって・・・。もし、真崎さんに教えてもらわなければ、大事故になるところでした!本当に助かりました!」
ちらっとコタローを見ると少し得意げに目をチカチカさせている。
「良かったですね。じゃあ、車は修理に?」
「ええ。今回、AIが教えてくれなかったので、AIの交換修理をお願いしてきたところです。」
「え?交換修理!?」
「はい。僕がジャンク屋で手に入れたAIチップだったんですが、やっぱり自分でやるとダメですね。プロに新しいものを取り付けてもらうことにしました。」
隆さんのにこやかな笑顔に反し、後ろでコタローが真っ青に・・・ならなかったが、LEDの色が赤く点滅していた。
私達は隆さんに車の修理を頼んだ店の場所を教えてもらい、急いでそこに向かった。
「ああ、あの車?もう修理は終わったよ」
「で、古いAIチップは?」
「そこのガラクタの中に放り込んだな」
「ごめんなさい。わけあって、それ、持って帰りたいんです。探してもいいですか?」
「いいけど、大変だよ?」
見ると、金属片などが山と積まれており、その中から小さなAIチップを探すのはかなりの困難に思えた。
「探します!」
コタローはそう言うと、金属の山を一心不乱にかき分けて探し始めた。
様々な最先端技術のセンサーを用いているのがLEDの色でわかる。最先端技術が、まさかこんなところで使われるとは、考えもしなかったけど、コタローにとってはこれが何よりもの一大事のはずなのだ。
「僕たちも手伝うよ」
茶丸とセイくんもクンクンと匂いを嗅ぎながら探す。
「仕方ねえな」
三木と私も軍手をはめて手伝った。
数時間後。
「無い・・・。」
「こんなに探しても無いなんて・・・」
皆が途方に暮れるなか、コタローは無言で立ち尽くしている。
「コタロー・・・」
その時、
「お疲れーっす!」
ガレージの入り口に若い男が入ってきた。ツナギを着たその様子からするとここの修理工だろう。
「あれ?何すかね?この人たち・・・?」
「あ、ごめんなさい、修理をお願いしたんですけど、取り外した部品を探していて・・・」
「で、猫?ロボット?」
気が付くと、コタローと2匹がその男に近寄っていくところだった。
彼らはその男の工具箱ににじり寄る。
「ちょっと、あなたたち!」
「はははっ、この中には食いもんはないぞー?ほら?」
男はそう言って工具箱を開けた。
開けた工具箱を覗いたコタローが声をあげる。
「あああーーーー!ありましたーー!!」
コタローは工具箱の中からAIチップを取り出した。
目にある緑のLEDが素早く瞬く。
「何だ?こんなの欲しいのか?変わったやつらだな。出かける前に落としたドライバーのマグネットにくっついてきたんだ。これはゴミだぞ?」
男は笑いながら、コタローたちに話しかける。
「そうか、AIチップのカバーの金属のせいで・・・。それ、いただいてもいいですか?」
「だからゴミだって。そんなの、欲しければいくらでも持って帰ってくれ」
「良かったね!コタロー!」
「皆さん、ありがとうございます!」
家に帰った私はAIチップのプログラムを調べてみることにした。
「これは・・・」
何日かかけて調べた私は、ついに見つけたコードに驚き、同時にプログラマーとしての興奮を隠せなかった。
そこには製作者の名前があった。それは、奇しくも私の知った名前・・・。
「緑先輩・・・」
緑先輩は私が入社した時に在籍していた天才プログラマーと言われた女性だった。私は彼女に鍛えられたといって過言じゃない。が、まさか、こんなことで再会することになるなんて、思いもしなかった。
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