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知性を与えられた猫たちは何を見る? 第48話

私達は食事をしながら、話を続けた。

「けど、場所をどう突き止めるかだよな」

「ええ、そこが問題。コタロー、何か思いつく?」

「・・・その場所の条件を考えると、まず、考えられるのは、エネルギー消費が多いわけですから、大規模な電力ネットワークに近い場所が候補として挙がってきます。例えば、発電所、変電所などです。そして同時にこれには厳重なセキュリティが確保される必要がありますので、旧軍事施設や廃棄された政府施設なども候補です。」

「そうね・・・。人目についてはまずいから、おそらく都心は避けるでしょうね。該当する施設をリストアップできる?」

「はい。リストアップしました。」

コタローは早々とそれらの施設のリストを作成した。

「セイくん、後は出来そうかしら?」

「うん、もう、今のリストをこの間やったみたいに、衛星画像からセキュリティが厳重な施設を調べているよ。1時間もあればわかると思う。」
けれども1時間たっても2時間たっても相変わらずセイくんは端末と睨み合い、苦戦していた。

「おかしいなぁ・・・それらしいものが何も出てこない。」

「じゃあ、範囲を広げてみた方がいいのかしら?」

「でも、ここ最近の事件があった場所からそんなに外れるはずはないんじゃないか?」

三木が横で口を挟んだ。

「とすれば・・・。ねえ?コタロー、さっき言った条件って、電力ネットワークに近くてセキュリティが強固であるってことだったわよね?」

「はい。そして、都心から外れている場所です。」

「都心から外れてる・・・・まさか大都会のど真ん中ってことはないわよね」

「ああ、そうだよな。それなりの広さだろうし、人目につかない広い場所って、そんなの航空地図見ても見つからんよ。」

「じゃあ、地図に載ってないんじゃない?」

茶丸が横から三木に言う。

「そんなの・・・・あっ!」

私と三木は同時に声をあげた。

「地下か!」

「それならノヴィエルの衛星からの赤外線データを解析してみる。」

数分後、「これだ!」とセイくんが声をあげた。

「このあたり一帯、異常に高温だ。周りと比較しても10度以上差がある。」

「よし、そのあたりを調べてみよう!」
翌日、私達は、セイくんが見つけた場所を訪れた。

そこは都会の一区画にあり、特に繁華街というほどの場所ではない。オフィスビルの立ち並ぶところにあった。

「このあたりね」

私達はそれぞれ各自で探し回った。
とその時

「あれ?あの車、見覚えあるぞ」

セイくんが骨伝導通信で伝えてきた。

「あれは、例の金属片が入ったデバイスの会社を調べてた時に見た車だ!」

私達がその場に着くと、

「あの車だよ」

と、セイくんは駐車場にある車を示した。

「あれ?茶丸は?」

「止めたんだけど、車から降りた男たちの後をつけて行った。」

「ええっ!?いきなり?何の装備もなしに?」

「大丈夫だよ。茶丸は意外としっかりしてるから。」

しばらくすると茶丸が駆け寄ってきて、私の腕に飛び込んで得意げに言った。

「僕、入り口見つけたよ!」

「うん・・・ありがと。・・・でもあんまり心配させないでね?」

茶丸の頭を撫ぜながら、胸をホッとなでおろした。茶丸は頭を撫ぜられて、嬉しそうに目を細める。

「よし。じゃあ、次は俺様の番だな。」

そう言うと三木はスタスタと歩き始める。

「ええっ!?三木、ちょっと待ってよ」

私は彼を追いかけた。
茶丸が探し当てたそのドアは、よくある普通のビルにあった。ビルの入り口を入った通路のつきあたりにあり、グレーのペンキで塗られたドアには「ボイラー室」と書かれていた。

三木はためらいもなく、ドアを開ける。

「ちょっと、ちょっと待って、ダメだって!」

「何なのか、見るだけだよ」

その中は普通のボイラー室だった。

慌てふためく私をよそに三木は中をぐるぐると歩き回る。

「へえ、こんなふうになってんのかー」

大声でそう言いながら背伸びしたり、しゃがんでみたりしてキョロキョロと見回す。

と、その時、

「何だ !君たちは!」

と後ろで険しい声がした。警備員が二人、私達に近寄ってきた。

「あ、あ、・・・」

動転する私を無視して三木は

「ヒック・・・、何だー、あんたらー、」

と千鳥足で声の主の方へと歩き始める。どうやら、酔っぱらいを装うことにしたようだ。

「はぁー?おまわりさん?」

三木が言うのに私も調子を合わせた。

「すみません、この人酔っぱらっていて、止めたんですけど、入ってきちゃって・・・」

いや、本当に止めたし・・・って私は心の中で呟く。

「勝手に入っちゃ困るよ!」

そう言う警備員に三木は

「ん?ここトイレ、どこかな、ここか?」

と言って、用を足そうとする真似をする。

「わー、やめてやめて、すみません、すぐ出ます!」

そう言って慌てて三木を引っ張って外へ走り出た。
酔っぱらったふりをしながら車に乗り込み、

「な?大丈夫だったろ?」

と私を見てニヤッと笑った。

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