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良い知らせはできるだけ早く、悪い知らせはできる限り後回しにしたいダサ男、それはオレ。

FIREしたい、脱サラしたい、小さな喫茶をやりたい、幾度となくここで唱和してきたので、フィーリングやノリで言っているような印象を与えているかもしれないが、いたってボクは大真面目である。

そのような人生転機となる良い知らせがあれば、リア友よりも、インスタよりも、Xよりも“真っ先に”ここで伝えようと思っているから、そのときはちゃんーと全力で応援してね。


氷河期だったボクの就職活動では、合否の結果はある程度予測できた。約束された期限前に何らかの返答、アクションがある場合、それは基本的にポジティブなものであり、返答が早ければ早いほど、そのポジティブ度は増す。つまり、事前に送られる連絡は桜咲く前のつぼみの状態を手に入れた、というわけだ。
実際に今の会社も、約束された期日よりかなり前にそれらしき連絡が来た。

世間一般でも、強制的な何かの力が働かなければ、良い知らせはできるだけ早く、悪い知らせはできる限り後回しにしようとする傾向があるように思う。


先月、超大型重要案件で最終プレゼンまで残った時のことだ。もしこれが決まれば、我が部署の向こう数年の数字は安泰あんたいで、この案件だけで数人の新規雇用もできる。最終プレゼンに向けて、営業担当、マネージャー、そしてボク、それに担当役員も加わり、必死のパッチで何度も打ち合わせを重ねていった。

最終プレゼン、決戦の時

最終プレゼンを明日に控えた前日夕方。
担当役員から
「さすがに、若手の営業担当にこの重大な責務を負わせるわけにはいかない。」
ということで、強引かつ一方的ではあったが、ここは幾多の困難を胡散臭うさんくさい切り返しで乗り越えてきた図太い神経を持ったボクに白羽の矢を立ててきた。

うっ。

ここ数年、信頼できる数多あまたの有能な部下たちに提案を任せ、顧客先ではほとんどプレゼンをしてこなかったボクにとって、この指示はそこそこのプレッシャーがあった。現に、それを払拭ふっしょくしようと1にも2にも準備準備、と。キモがられながらも家に帰るなり子どもを前にプレゼンの練習をしたほどだ。

睡眠時間を削って深夜まで練習。
翌朝、早起きして練習。
顧客先に向かう電車の中でも、今度は若いオネエチャンにキモがられながらもプレゼン資料片手にブツブツ練習。

それでようやく準備万端。
そして3年に一度あるかないかの大案件、大勝負に挑んだのだった。


練習の甲斐あったのか、
うん、あったのだろう。本番は準備の質で9割が決まる。
顧客先の経営会議の一コマで与えられた20分のプレゼンを寸分の狂いもなく、流暢にやりきった。

会場全体が終始にこやかな雰囲気に包まれ、プレゼン後の質問も採用後の期待を感じさせるものだったので、控えめにいっても手応え十分だった。

よしよし。
ニヤリ。

決まったな。
自信があった。

その日の夕方。
案の定、定番のアレもあったから。
予定調和どおり先方の部長から電話が鳴ったのだ。あいにく別の商談中で出られなかったが、着信画面に名前を見た瞬間、ボクの自信は確信へと変わった。こんなに早く連絡があるということは――。

うしうし笑笑
商談中なのにニヤケが止まらない。

商談を終えて車に戻ると、ボクはワクワクしながら即座に部長に折り返した。

「今日のプレゼン、相手の会社よりも経営陣の反応が非常に良かったです。ご安心ください。お返事は経営会議を経てという手続きとなりますが、その前に内々で内定するので、できるだけ早めにお知らせします」
と言われた。

あーいよ。
実質的に、採用通知だ。

営業という職業上、超どんでん返しもまれにあるっちゃあ、ある。契約書にサインを頂くまでは、浮ついた気持ちを持ってはいけない。それはわかっとる。
だが、数か月にわたるチームでのハードな営業活動を振り返り、ようやく「終わった…」という実感が湧いてとても嬉しかった。


1週間後。 

先方部長から
「やはり経営会議参加者での多数決で御社が勝ちました」
との連絡があった。
「ありがとうございます」
謝意を伝えた。

すると担当者は
「ですが、今回は長年付き合いのあるもう1社に、もう一度チャンスを与えると言い出しまして…」
と言ってきた。

はあ?
こいつは何を言っているんだ。

気を取り直して
「どういうことですか?」と尋ねると
「すみません、会長の一声です」
と言う。

……電話口で脱力してしまった…

「プレゼンの際にもお話させていただいたように弊社は来年に創業70周年を迎えます。70周年に向けてコア事業の回復が至上命題、経営方針。そのためにはパートナー企業も含めた『原点回帰』、これを弊社では『再生力』と呼んでいるのですが、より強い『再生力』を求めて取引先の見直しを行い貴社にもご協力頂いたのですが、最終的に既存企業の『再生力』を来年はもう一度期待しようじゃないか、と、会長が言い出しまして…」

……覚えていないが、ボクは電話口で先方の熱い情熱的な『再生力』の話を薄ら笑いで聞いていたと思う。いや、たぶん聞いていない。
途中からもはや、そんな断り話を聞くのはどうでもよくなり、それよりも不採用になってしまったことをどうやって会社に伝えたらいいかで頭の中はいっぱいだった。

一般的に、良い知らせはできるだけ早く、悪い知らせはできる限り後回しにしようとする傾向がある。

先方部長から実質内定の電話をもらったときは、出先から速攻で全員チャットに共有したのに、この報告に至っては
「この報告は、メンバーに失礼にならないように出社したときにすべきだな、さすがに」
と、それらしい理由で自分を納得させ、結局、連絡を受けた翌日の夕方に苦笑いを噛み殺したブッサイクな引きつった顔をしながら、みんなに共有する始末となった。

で、ボクは今日、なにを書きたかったのか…。本題に入ろうか…

きっと嬉しい報告なら、終わったその日にでも自己note更新ルールを破ってまで、報告していたであろう。

今日までしなかったということは、まあお察しのとおり。そういうことだ、諸君。

良い知らせはできるだけ早く、悪い知らせはできる限り後回しにしようとする、

ボクに限っては確実にそれだ。

遅遅の報告になったが(3年連続3回目)、丹後100kmウルトラマラソンは大惨敗だった。

今回はフルマラソンの距離にも達しない
30kmでのDNF(リタイア)。

ここ数年悩まされ続けてきたふくらはぎの痙攣けいれんが今回は18kmで発症し、もはやどうにもならず試合終了。ただ、それを抜きにしてもゴールは到底ムリだった。

悔しいという感情はとくになかった。
その感情をもつということは、過去にゴールした自分に失礼になると思ったから。

至極当然。
今回ボクは、まったく努力をしていない。

ウルトラマラソンというと
凄いものへの挑戦に思われがちだけど、実は特別なものは何もない。己を知る。相手(コース)を知る。敵(気温等)を知る。与えられた時間を最大限に活かして戦略をたてる。考えうる最高の準備をしておく。

10年近くウルトラマラソンに挑戦する中で、その“当たり前”を避け、その時々に流行った短期集中型の練習メソッドや有能シューズに向かったこともあったが、自分のような三流にはしっくりこなかった。だからもしかしたらマラソン以外のスポーツ、もっと言うなら恋愛でも仕事でも子育てでもnoteでもインスタでも、成功する根底にあるものはウルトラマラソンで距離を踏むというくらいな地味でシンプルなものかもしれない、と思っている。

シンプルであるけれども勝者と敗者をわけるものは、それを愚直に続けられるかどうかじゃないか、って。

確かに、今年に限っていえばプライベートで色々と事情はあった。それでもスタートラインに立つ以上は最低限の準備、つまるところシンプルに距離を踏むことが必要であった。

大会でウルトラの神様に「甘すぎる」と一蹴されたのだと思う。

本当にどうしようもなかったのは間違いないが、しかしはっきりいえば、僅差であれ、惨敗であれ、負けは負け。ひとつの負けなのである。グッドルーザー(Good Loser)として、潔く力不足と努力不足を認めることから、次の機会のリベンジは始まるのだと、頭を切り替えた。

大会の翌日から、平日毎晩10km走り始めた。

これからは地味に、シンプルに、この日課を続けていこうと思う。
『原点回帰』、これをボクは『再生力』と呼んでいる。そう、より強い『再生力』を求めて、来年、スタートラインに立つための準備を愚直に積み重ねていくのだ。

と、熱く語ったが、

薄ら笑いで聞かないでね♡



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