一人一人の世界観を実現できるまちづくり ~石川県の地域コーディネーターが繋ぐ川と人々の暮らし~
株式会社御祓川
森山奈美(もりやま なみ)さん
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シゴトリップ
参画地域コーディネーターインタビュー
「コーディネーターっていったいどんな存在なの?」「どんな活動をしている人?」
シゴトリップに参画している地域企業のコーディネーターさんにお話をおうかがいして、その活動や人柄などを取材してみました!
「小さな世界都市・七尾」を目指して
ー会社でされている主な活動についてお聞かせください。
御祓川では「みせ育て」「ひと育て」「まち育て」の3つの柱を基に活動しています。みせ育てでは、能登スタイルストアというウェブサイトを開設して、能登の特産品をネットで買えるようなショップを運営しています。ひと育てでは、課題を抱える能登の企業や地域の現場に学生を送るインターンシップのコーディネートをしています。最近は副業や兼業という形で都市にいながら能登に関わっている社会人の方もいるので、そのマッチングも行っています。最後のまち育てでは、御祓川大学という市民大学で、チャレンジしている人達や一歩踏み出そうとしている人達の交流の場を提供しています。
ー3つの柱で能登を育てる活動をされているんですね。
3つの柱がありますがそれそれが分離しているわけではないと思っていて、みせ育てもひと育ても結果的にまち育てになると思っています。みせ育てで育った企業やひと育てで育った人材がまちで活動することが、まち育てになっているということなので。
ーご自身が活動される目的や想いを教えてください。
私たちは「小さな世界都市・七尾」の実現を目指しています。石川県七尾市を地盤として、持続可能な地方都市をつくるために事業展開しています。そのために、世界に通用する考え、世界に通用する商品、というように質の高いものをつくりたいと思っています。
もう一つ、一人一人が持っている世界観を実現できることも「小さな世界都市」に必要だと感じています。自分のビジョンを持っていて、それを実現する人がたくさんいるまちが素敵だなと思います。
ー「小さな世界都市・七尾」の実現は地域の協力あってこそだと思うのですが、一緒に進んでいく人達はどのような方々ですか?
私たちの考えに共感してくれる人達が集まってくれています。例えば「食で七尾を元気にしたい」という人達が私たちのビジョンに共感してくれて、「小さな世界都市・七尾」という言葉を使ってもいいかと言ってくれたんです。食で七尾を元気にすることがその人たちの世界観で、それを実現する人がいるっていうのが私たちの世界観。そうやって「自分はこれでやっていくんだ」っていう人がたくさんいるといいなと思っています。
「哲学・技術・実践」が3つの要
ー活動する上で大切にされていることをお聞かせください。
コーディネートをするときも大切にしているのは「哲学と技術と実践」です。どのような想いでプロジェクトを行うかというベースの部分が哲学で、その哲学を具体的に進めるときに必要なのが技術。でもその2つがあっても実践しないと絵に描いた餅で終わってしまいますよね。そこで実践することによって哲学も深まり技術にも磨きがかかる、というサイクルを大事にしたいと思っています。
ーその3つがあってこそ「小さな世界都市・七尾」の実現ができるということなんですね。なぜ七尾のまちづくりや御祓川の再生を掲げているのでしょうか?
元々七尾は港町として栄えていて、御祓川を通って物や文化が運ばれていたんですが、段々と汚染されていき、川の再生がまちづくりの一番の課題になっていました。川が汚くなるのは人が生活で使った水が川に流れるからなんですが、人々がそのことに無頓着になっていってしまったんです。学校で水は循環していますって習うけど、自分が普段飲んでる水がどこからくるか知ってますか?
ーあまり考えたことないです…。
そうですよね。水は生きるために必要なのに私たちは水がどこから来てどこに行くのか意識していないんです。川は、人間の暮らしや活動と環境が繋がっているということを気付かせてくれるんです。そういう意味で、御祓川はまちの課題を自分事化することの象徴なんです。
使命に気付くサインを見逃さないで!
ーシゴトリップへの参加を迷っている学生にメッセージをお願いします。
シゴトリップに参加する学生さんたちは、自分の将来の生き方について考えている学生さんたちだと思います。自分が生きていく時間が有限だと思ったときに、その命の時間を何に使うかっていうのがすごく大事なテーマになるのではないでしょうか。自分の命を使うと書いて「使命」というんですが、この使命に気付くには3つのポイントがあります。まずは自分の人生を振り返ってみること、そして出会った人や本を大事にすること。最後はサインを見逃さないで飛び込む勇気を持つこと。もうこの記事を見つけたっていうことがサインだから、後悔する前に是非飛び込んで、色々な出会いを自分のものにしてもらいたいなって思います!
◆シゴトリップとは?
オンラインで全国各地の企業に訪問して社長の話や従業員の話を聞き、実際のシゴト体験ワークショップをしながら、自分の将来のキャリアについて考えるプログラムです。
詳しくはこちら!
https://www.challenge-community.jp/shigotrip/?fbclid=IwAR0ZIKmUngWlixyg5XoV0ptslWgRCSy8JI3zoRvbgLc1hMkcSme5DR-0gGE
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取材した印象
森山さんが取り組んでおられる活動内容やそれらの狙い、また活動への想いを丁寧に語ってくださいました。森山さん自身が高い志を持ちながら、まちづくりを楽しんでいるんだなということが伝わってきました。取材中も私に疑問を投げかけながら会話をしてくださり、学生と一緒に考えながらコーディネートをしてくださるのではないかと思いました。
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企業紹介
「小さな世界都市・七尾の実現へ」
石川県七尾市をフィールドに、市を通る御祓川の再生を通してマチ・ヒト・ミセの関係性を取り戻すために事業を展開する。小さくても世界に通用する思想や商品、文化を持つ都市「小さな世界都市・七尾」の実現に向けて、地域の課題を解決するチャレンジを支えるまちづくり会社。
会社概要
企業名:株式会社御祓川
所在地:〒926-0804 石川県七尾市生駒町3-3
設立:平成11年6月23日
役員:代表取締役会長 森山外志夫
代表取締役社長 森山奈美
取締役常務 高沢良英
取締役常務 今井富夫
取締役みせ育て課担当 田尻正志
取締役まち育て課担当 間蔵信行
監査役 北原良彦
従業員数:正社員 5名
非常勤社員 1名
インターン生 2名(2021年6月現在)
主な事業内容:
・御祓川大学
「未来を育てるひと」を育てる市民大学の運営。地域の課題解決にチャレンジする人々が学び、交流できる場と機会を提供する。
・リノベーション事業
地域の空き家や空き店舗を活用しリノベーションを行う。かつて銀行だった建物をリノベーションした「banco」は御祓川大学のメインキャンパスや参加型本屋「かえるライブラリー」の設置場所となり、人々の知恵や技の交流ができる場所となっている。
・能登スタイルストア
能登の特産品を販売するネットショップを運営。地域商社としてBtoB販売の仲介を行うほか、能登の素材を活かしたオリジナル商品の開発も手掛ける。
・能登留学
長期実践型インターンシップのコーディネート。地域や企業の課題解決に取り組むインターン生を現場に送り、プログラム設計やプロジェクト推進などのサポートを行う。
・副業・兼業のコーディネート
副業や兼業人材として能登の課題に関わる社会人と、能登とのマッチング事業。
・採用支援
能登の人材を募集している企業と他地域から移住して能登で働く人材のマッチングを行う。
参照:株式会社御祓川 HP
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取材:播磨菜月
国際教養大学4年生
秋田県出身で、大学では地方学やメディア学などを学んでいます。現在は、秋田県にあるNPO法人みらいの学校で4か月間の長期インターン生として企業への取材や企業と学生を繋ぐプロジェクトのサポート業務を担当しています。