美人という孤独。
「美人すぎて愛されない」
と悩む人がいる。はたから見ればふざけんなと思うだろうけど、当人は真剣だ。
「金持ちすぎて尊敬されない」
という話と似ている。
自分が尊敬されているのか、お金が尊敬されているのか分からなくなるのだと言う。
「器用すぎて好かれない」
というクリエイターの悩みにも通じる。次のコメントが典型だ。
大江千里、47歳で始めた僕の「ライフ・シフト」 米国での活動から小室さんの引退までを語る | ワークスタイル - 東洋経済オンライン
『APOLLO』(1990年9月発売のアルバム)を出してオリコンランキング1位を取った直後ぐらいに、ライブツアーの会場で不思議な光景を見たんです。前回のツアーでいた人が、1列分ぐらいいないんです。地方の公演でしたね。あれ? 今オリコン1位なのにどうしていなくなっちゃったんだろう?って。ヒットして最大公約数のファンを得ることは、本当に好きな人を減らすんだな。これは覚悟しなきゃいけないときが来るんじゃないかな、って直感しました。
平均的に好かれるものは広がりはするが、深まりはしない。より平均的なモノが出てくると、客はあっさり流れてしまう。
「平均思考は捨てなさい」という本のエピソードが面白い。「平均的な人間に基づいて設計されたシステムは最終的に失敗する」という話だ。
一九四〇年代の末、アメリカ空軍は深刻な問題を抱えていた。パイロットが飛行機を制御できなくなったのである。最悪の時点では、一日に17人のパイロットが墜落事故の犠牲になった。
関係者はコックピットを作り直すことになった。4063人のパイロットの体のさまざまな部分、140箇所を測定した。平均値が正確に割り出されれば、コックピットの環境は改善され、事故は減少すると誰もが信じた。
そして平均値にあった「平均的なパイロットの数」を調べて驚く。結果はゼロ。4063人のパイロットのなかで、主要10項目のサイズすべてが平均の範囲内におさまったケースはひとつもなかったのである。
平均的なパイロットなど、存在しないのである。つまり、平均的なパイロットにフィットするコックピットをデザインしたら、実際には誰にもふさわしくないコックピットが出来上がるのだ。
これまで空軍は平均像に近いパイロットに合わせて設計してきたが、この調査をうけ、パイロット個人に合わせてコックピットを調整するように方針を変更した。それから事故は減るようになった。
最近だと「ZOZOSUIT」の発想が近い。
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――体型に合わせた個別生産では大量生産に比べて手間がかかります。
カスタマイズされて、ワンツーワン生産に適した機械が世の中には出始めている。そういうものを掛け合わせると、大量生産していたときと何ら変わらないコストや時間で、オーダーの大量生産ができる時代になりつつある。
このような「ダイバーシティ生産」の流れは今後さまざまな領域で出てくるのだろう。マスメディアと大量生産の時代、「平均値」は生産性の鍵だった。ただ技術によって「個性×生産」が成立すると、話が違ってくる。
この流れはプロダクトだけでなく、世の中全体にも影響していく。
はたして、美人の孤独が癒される日はくるのだろうか?
前述の「平均思考は捨てなさい」では、もう一つのエピソードとして、かつて行われた、究極に平均的なプロポーズをもつ女性を探す「ノーマ」が紹介されている。
果たして優勝者は誰だったのか。結果は予想できるだろう。
また、その他の美人ならではの悩みはマンガ「女の解体新書」で紹介されている。
ちなみに「美人すぎて愛されない」という方の話を女友達にしたら「美人にかまけて努力を怠ったクソ女のことですね、わかります」と即答してた。
読んでくれてありがとう!