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【逗子市ストーカー殺人事件、国家賠償訴訟】 冷静な目線を持って!

 今回は【逗子市ストーカー殺人事件の国家賠償訴訟】について少々。

 ヤフーニュース記事はこちらです。

 【ストーカー殺人  夫「警鐘には十分」】



1、概要

 神奈川県逗子市で元交際相手の男性に女性が殺害された事件です。

 その際、ストーカーに住所等を調べられないように逗子市に対して戸籍の不開示請求を行っていましたが、ストーカーが依頼した探偵に住所をバラしてしまいました。


 探偵は夫を名乗っていたそうですが、電話で開示されたようです。

 そして、開示の次の日に女性は自宅でストーカーに殺害されました。

 その後ストーカーは自殺しました。


 この一連の流れで、逗子市に対して

「不開示情報である情報を、第三者に開示したのは違法だ」

として賠償を求める訴訟が提起されました。


 記事では賠償請求とだけされていますが、要は国家賠償訴訟です。



2、判決

 裁判所は逗子市に違法性があるとしました。

 しかし、職員は電話相手が夫だと信じ、更に住所の利用目的も知らなかったとして110万円の支払い命令となりました。



3、感想

 ネット上では

「人が死んでいるのに安すぎる!」

「国家賠償で自治体しか訴えられないのではなく、公務員個人を訴えらるようにすべき!」

の意見が多いようです。


 正直私はこれらの意見には賛同できません。


 <「人が死んでいるのに安すぎる」について>

 これに賛同できない理由は、今回の訴訟内容には関係ないからです。

 今回の訴訟はあくまでも、不開示請求をされている個人情報の漏えい行為であり、ストーカー殺人に関してではありません。


 つまり、この部分は切り離して考えるべき部分だからです。

 結果部分を除いて考えた場合、情報漏えいについてのプライバシー権の侵害についてのみの損害賠償ですので、110万円が必ずしも安すぎるとは言えないかと思います。


 とは言え、異論もあって、

◎、そもそも電話で開示している部分。ましてや不開示請求がある情報。

◎、利用目的を知らないで情報開示している部分。

 これらを理由に裁判所は賠償額を減らしているようですが、私から言わせると逆だと感じます。


 不開示請求のある情報なのに、開示請求者の身分証明書の請求もせず利用目的も聞かないで電話で開示しているのは、公務員の不法行為を更に重くする材料にすべきでは?と考えます。


 ここでそんなことを言っても、控訴しないようですので、これで終結ですが。


<「国家賠償で公務員個人を訴えられるようにする」について>

  これは

「何故国家賠償で個人ではなく、自治体を訴えなければならないのか?」

 この理由を知らない人だと思います。

 つまり論外です。


 感情論で言うなら個人を訴えたい気持ちは理解できます。

 しかし、それによって得られる法益は何でしょうか?

 被害者の感情の捌け口が個人になるって程度かと思います。


 一方現行法での自治体を訴える場合の法益は何でしょうか?

 それは被告人を特定する必要がないことです。


 国家賠償は民事訴訟です。

 民事訴訟は通常、被告人を特定し、被害の証拠を集めるのは原告(被害者)側です。


 そのため、自治体ではなく、公務員個人を訴えるようにしてしまうと被害者の労力はとんでもなく拡大します。


 更に特定できなければ訴訟自体を起こせませんので、既に退職して逃げられていたら泣き寝入り確率が格段に増大します。


 そんな制度にしてしまって本当に被害者のためになるのでしょうか?

 そのような泣き寝入りを無くすためと、労力軽減のために、国家賠償は自治体を訴えることになっているんです。


 部外者が自分の感情だけで

「公務員個人を訴えられるようにして欲しい」

と言うのがいかにずれており、論外なことか分かりますよね?


 だから賛同できません。



 余談ですが、懲戒処分は訴訟とはまた別問題です。

 懲戒処分に関しては裁判所は介入できませんので。


 たまに事件等の処分として懲戒処分の内容に文句を言う人がいるので、一応付け加えておきます。

 懲戒処分は裁判所が介入できない部分ですので、罰ではありません。


 そのため、判決が無罪でも理由さえあれば懲戒処分を与えることも不可能ではありませんし、逆に有罪でも懲戒処分に処さないことも可能です。



4、最後に

 どうしても

「人が亡くなっている」

と言う部分で感情が強く前に出てしまうんですよね。


 気持ちはわかります。

 私だって大切な人が殺されたら、被疑者には自殺させませんし、法定刑ではなくて生き地獄を味あわせ続けると思います。


 そもそも大切な人を傷付けられないように、防犯の素人である警察に頼らず、自習的に防犯対策はガッチリと行いますけどね。


 その方法はこちら!

【ストーカーを解決したいならこれを読め!】


 しかし、事件を考える上で感情による思考はNGです。

 国家賠償の部分でもそうでしたが、感情を満たそうとすることで結果として被害者を更にどん底に突き落とすような意見になってしまうこともありますので。


 そのため、冷静に、客観的に見る目線は必要なのかと思います。

 だから法に関係する人は「現実的な被害者のため」と考えて行動していても「冷たい」と言われるんですけどね。


 被害者保護のためだろうと、感情論に則しているわけではありませんからね。

 難しいところですね。



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