門倉貴史エコノミスト/経済評論家
見解物流業界では残業規制の強化に伴う人手不足に対応するため、4月1日以降、総重量8トン以上の中大型トラックについて、高速道路上での最高速度を、従来の時速80キロから90キロに緩和する。 輸送効率を改善させるのに、高速道路上の制限速度を引き上げれば、交通事故の発生確率が高まるし、交通事故が起きたときの被害も大きくなるのは必定だ 本来、残業規制強化の目的は、トラックドライバーの健康維持と長時間労働による事故の発生を抑制することであったはずだが、このような対応では本末転倒の結果を招く可能性が高い。
石川智久日本総合研究所 調査部長/チーフエコノミスト
補足今回の残業規制についてわかりやすくまとめた記事だと思います。日本では超過勤務が恒常化しており、働きすぎは是正すべき問題です。一方で、人手不足が様々なところで顕在化する中、単純に残業を減らせば、サービスの低下が発生してしまいます。こうしたなか、わが国で求められているのはITなどを積極活用して生産性を上げることが重要です。人口が少ない国では極力少ない人数で事業を回すことを考える傾向があります。わが国においても、労働投入量を極力減らして売上や利益を最大化していくことを考えていく必要があります。人海戦術で対応する時代から、少数精鋭で対応する時代に変わったと認識することが重要でしょう。
牧野和夫弁護士/弁理士/米国ミシガン州弁護士(芝綜合法律事務所客員)
補足自動車運転業(トラック、バス、タクシー)では、残業時間が年間960時間(月平均80時間)に制限されますが、「月80時間」は、そもそも過労死ラインとされており、このレベルでは根本的な過労働問題は解決していません。労働者保護の観点からはあくまで経過措置であり、今後更なる改善が必要となると考えるべきです。同時に運送サービスが逼迫しない様に、物流全体のプロセスの効率化(例えば運搬ケースの規格統一など)を図るべきです。