政治家・小池百合子の最も偉大な功績は、クールビズの普及だ。
平成17年、環境大臣だった小池氏は、夏場の冷房抑制による節電を目的とした「ノーネクタイ・ノージャケット」運動を推進し、一般公募で選ばれた愛称「クールビズ」をあっという間に流行語にした。
「人権尊重の配慮」は空証文
クールビズによって、日本の男どもは、蒸し暑い夏にネクタイを締め背広を着るという「罰ゲーム」から解放された。ネクタイ屋さんには気の毒だが、ウォームビズの普及と相まって日本男児の首回りは、21世紀になって格段に自由になった。窮屈なことが大嫌いな小生は、彼女に足を向けて寝られない。
だが、17年後に都知事として推進した新築住宅への太陽光パネル設置義務化は、クールビズの功績を台無しにする天下の愚策である。
16日付本紙「主張」は、「都は弾圧に加担するのか」と厳しく批判した。中国から輸入されている太陽光パネルの多くが、ウイグル人の強制労働が指摘されている新疆ウイグル自治区製で、米国は同自治区からの製品輸入を禁止している。都は業界団体と「人権尊重の配慮」を定めた協定を結んだが、空証文に近い。
第一、太陽光発電は、地球温暖化を救う魔法の杖(つえ)ではない。確かに米カリフォルニアのように降雨が極端に少ない場所では、大きな威力を発揮するが、日本のように曇りや雨が比較的多い地域では、電力の安定供給ができず、経済合理性を欠く。
何よりも数年に1度は大型台風が来襲し、首都直下型地震が起きる可能性が高い東京で、住宅の屋根に太陽光パネル設置を義務付けるのは、都民の命より太陽光発電の方が大事なのかと疑いたくなる。
太陽光パネルが、火災に弱いことを大多数の都民は知らない。
3年前の9月9日、台風が通過した直後に千葉県市原市の「山倉ダム」にあるメガソーラー発電所の太陽光パネルから出火。放水に手間取り、鎮火に4時間以上もかかった。
実験してない「噴霧状放水」
太陽光パネルが設置されている住宅が燃えると、駆けつけた消防士は感電を避けるため絶縁性の高い防護服に着替え、絶縁手袋をせねばならず、手間がかかる。しかも感電防止のため通常放水ではなく噴霧状放水が推奨されている。
水の勢いが強い通常放水と噴霧状放水とでは、鎮火力に差が出ると思うのが普通だが、東京消防庁に問い合わせると「通常放水と噴霧状放水との効果の違いを数値化した実験は行っていない」という。
災害時のリスクが大きく、設置補助金として多額の都税を投入しても8年後の発電量は年75万キロワットにとどまる。都内の電力消費量は約767億キロワット(令和2年度)だから算盤(そろばん)にあわず、中国を儲(もう)けさせるだけだ。
それにしても「太陽光」という魔法の言葉に騙(だま)される政治家のなんと多いことか。小泉純一郎元首相も太陽光発電をダシにカネを集め、詐欺罪で逮捕された若手経済人のお先棒を担ぐ対談を日本経済新聞の紙上に載せた過去がある。小池さん、このままでは、晩節を汚しますよ。
今年は、今日でおしまい。ではまた、新年のこころだぁ!!(コラムニスト)