2024年(令和6年)4月23日
女性スペースを守る会
共同代表 森氏みのり
横浜地方裁判所 第二民事部合議係 御中
1 私は一人の女性として生きてきました。還暦を過ぎております。亡き父は大正生まれです。私の兄弟で幼稚園教育を受けたのは男児だけです。大学への進学を父親から肯定されたのも男兄弟だけで、私は大学に進学する意欲を持てませんでした。「女に学問は要らない、従順であれ」と言い聞かされて育ち、成人後も苦労を重ねて生き抜いて現在があります。
2 女性女児は性暴力やセクシャルハラスメント被害を多く受けています。私も小学1年生頃に公園で見知らぬ男性に身体を触られた性暴力被害を受けています。この被害については、幼いながらも嫌過ぎたせいでしょう、長年、誰にも被害を言えませんした。高校生以降は電車内で勃起した男性器を見せられた被害や、身体を触られた被害も受けました。こんな事実を話すことは、当時の恐怖を思い出すので、今この法廷での緊張状態で告白することにも不安があります。
女性や子どもへの性犯罪をする圧倒的多数は男性です。その人の自認する性別は分りませんが、生得的な男性です。女子トイレなどの女性スぺースは、そんな身体が男性の人から避難し、安心していられる場所として成立しました。ですから、女性が女性スぺースでの「安心安全を」と言うことは正当な権利です。身体男性が、いわゆる女性装を着ることも自由で、尊重すべきです。「らしさ」や「社会的役割」はそれぞれの人の自由だからです。ですが、女性と自認するからといって性別で分けられた女性スぺースを利用して良いかどうかは、別の話です。
ところが、それを聴こうとも、議論もしようともせずに、一部のトランスジェンダーの希望を最大に配慮すべきだとする方々がいます。間違っていると思います。
まして、被告の劉さんのように疑問を言うと「差別だ」とすることは了解できません。
3 私は2021年9月18日、女性スペースを守る会の趣意書に賛同しました。翌年の5月にスタッフとなりました。会の共同代表には、どこの誰なのか探られ、職場に不審な電話が来るなど過去にありました。それで降りる人がいて、私が2022年10月22日から共同代表の一人になりました。そして誰かが顔を出さなければ説得力をもてないことから、昨年5月の記者会見から顔を出し、今日この法廷に初めてきました。
昨年12月15日の期日は警備のために延期されたということです。延期されたことは残念でしたが、今日はそれなりに安心してくることができました。ありがとうございます。
4 当会は、2021年9月、LGBT法について立ち止まって考え、慎重な議論をもとめて発 足しました。現在賛同者は3250名ほどです。うち600名程のレズビアンを中心として性的少数者が約730名もいます。劉さんは性的少数者も多く賛同する当会に対して、差別団体だとレッテル付けをしたのです。
この背景には、劉さんが男性なので、「女性と自認している」という人であっても、身体男性とともに女性スペースを利用することが女性にとってどれほど怖いか、分らないことがあるかもしれません。身体男性は、身長は平均10数センチ高く、体格も筋肉も女性より強いのです。そして女性を襲うことのできる陰茎を持っています。真実女性と自認しているかどうか、外見が女性に見えるかどうかは関係ありません。女性スペースに入れるということとなれば、性犯罪目的の人も入りやすくなります。女性のふりではなく、「トランス女性」のふりで入ってこられるのですから。劉さんにはそんな当会の主張を聞く耳も持ってほしかったです。
私たちは、女性が安心・安全に暮らすために活動しています。様々な女性スぺースや女子 スポーツで女性を守る方法についての具体的な話し合い、建設的な討論を求めています。この裁判で出した多くの証拠から分かるように、私たちはさまざまな情報や調査結果、意見を発表しています。可能であればどこでも議論を重ね、行政、自治体、各政党や国会議員に働きかけ、参議院では事務局弁護士が参考人として陳述するまでしました。今は、性犯罪被害者、その支援者そして性同一性障害の方など様々な性的少数者の団体とともに作った「女性スぺースを守る諸団体と有志の連絡会」に参加し、議員や行政、メディアに向けた院内集会や勉強会を開催しています。連絡会では、「女性スぺースに関する法律案」「女子スポーツに関する法律案」といわゆる特例法の改正案を提案し、国会議員にも議論の材料にしてもらっています。当会はとても真面目な団体です。
ですから、当会は、被告が主張し、名誉毀損訴訟の判決を幾つも証拠として出してきた在日の人を差別する「在特会」などとはまったく違います。失礼にも程があります。このことは、劉さんの「悪質なトランス差別団体」というレッテル付けとともに、ここに強く抗議します。
5 劉さんは、当会を差別者だと決めつける言葉の暴力を使って他人の思想や表現にレッテルを貼り当会の活動の妨害をしました。今も、Xポストなどで、”差別団体だ”と記載されることがあります。「トランス女性は女性です」がスローガンの性自認至上主義の方々からです。その先駆けが、劉さんの「悪質なトランス差別団体女性スペースを守る会」という誹謗中傷、レッテル付による違法な名誉毀損です。
このような行為には一定の効果があり、いわゆる左派野党はとうとう当会や連絡会とは一度も正式な面談をうけいれませんでした。そのために左派野党は不勉強を続け、昨年6月の理解増進法の審議では最近の世界の状況につきなんら言及することがありませんでした。そして11月20日の参議院本会議でとんでもないことが起こりました。片山さつき議員が代表質問をしましたが、最後に女性の安心安全について質問に入ると大声でヤジられたのです。女性の安心・安全を訴える声を妨害し、”差別者”だなどとする状況は異常でした。劉さんのような行為が続いて一定の効果があったから、良識の府である参議院において、女性の安心安全を守って欲しいという女性議員の発言に対して、酷いヤジが飛ぶまでになったと考えます。
当会がこの訴訟を起こしたことで、劉さんの表現の自由が侵害されたのではありません。劉さんが真面目に活動している当会の表現活動、団体活動の自由を侵害したのです。さらに、同様の事態が続いたから国会では噛み合った審議とならず、「差別だ」「ヘイトスピーチだ」というだけで議論ができない議員がでてきたのです。
劉さんにはこのことをよく理解してほしいです。
6 今年の3月末、産経新聞出版から4月3日に翻訳本「トランスジェンダーになりたい少女たち SNS・学校・医療が煽る流行の悲劇」を発行することをめぐり、それを扱う書店への放火を予告する脅迫メールが届きました。この本は、性自認至上主義の立場から「差別本だ」と、読みもせず具体的な指摘もしないままに批判する勢力があって、別の出版社が出版をその直前に取りやめたところを、産経新聞出版が発行するところでした。この脅迫のために扱わないとした大きな書店グループも出ています。諸外国で高く評価されてきた本なのに、日本国民が読めない状態にしようとする方々がいるのです。
本日、会の共同代表として出席した私は、このような脅迫まであり、裁判所や警察が様々な近辺の警備をしていただいてもなお命がけの覚悟をしなければならないものとなりました。また裁判の様子を知りたい人もますます傍聴に来にくくなってしまいました。
今、基本的人権を守り、民主主義を維持するための表現の自由も、国民の知る権利も、裁判を受ける権利も、裁判の公開原則の実質も危機的状況なのです。
劉さんは、どんな風にお考えでしょうか。いくら何でも、出版活動に対する脅迫はいけないと言って欲しいです。大学で教える知識人として、出版されて批判するところは批判するという姿勢でいて欲しいです。多くの人が議論してほしい、国会でもしっかりと議論してほしいと言って欲しいです。そしてこのような脅迫事件まで起こったのは、当会を「悪質なトランス差別団体」とレッテル付けを続けている延長上のことなのだと自覚してほしいです。
7 ”差別者”とのレッテルを貼られることは社会的に大変マイナスです。私は差別をしていない、差別者なんて言われたくないのに、劉さんに差別者であると言われて、精神的に強い苦痛を受け深く傷ついています。様々な性的少数者とともに活動し、女性の安心安全を訴えている私のどこが差別者なのですか。会に集まった皆も、傷ついています。会自体も、その声明や冊子を普及する際に差別団体だとされては広がりを持てなくなり、先に述べた各政党の状況となりましたから、大きな被害を受けています。
裁判所におかれては、国民の知る権利とより良い政策を作るために活動する私たち女性スぺースを守る会の名誉を守って下さい。 以 上