道路使用許可なし、警察の職質シーンも――富士フイルムのカメラ販促動画炎上、削除までの一部始終2020年02月07日 20時00分 公開[谷井将人,ITmedia]. 「フジフイルムPV炎上」のモヤッと感を整理する2020年02月29日 08時19分 公開[小寺信良,ITmedia].「こんな撮られ方はイヤだ」富士フイルム『X100V』公式動画が炎上。公開後すぐ削除に→お詫びを発表.プロモ動画炎上後に「雑な謝罪」、富士フイルムの過ちは他人事ではない 本当に謝るべき相手は誰?PDF魚拓







肖像権vs.表現の自由

 この事件について多くの人がまず思いつくのが、「肖像権の侵害」である。人は「みだりに容ぼう等を撮影されない自由」があるはずだ、と。確かにその通りだが、では「誰に撮影されない権利なのか」がポイントになる。

 「肖像権」は、日本の法律の中では明文の規定はない。しかし憲法13条の趣旨を汲んで、さらには欧米では権利として認められている肖像権の趣旨も合わせ込んで、最高裁判例によって日本にも肖像権が存在するというのが通説である。憲法13条

すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
日本国憲法は簡単に改正できないようになっている。安倍政権は9条改正に向けて動いているが、簡単に変えられないのは、変えられないような制度設計になっているからだ。これを硬性憲法というのだが、それでも時代に合わせて対応できているのは、最高裁判例によって憲法の解釈が拡張されているからだ。肖像権の概念もその一つである。

 一方、憲法とは国家権力の暴走を止めるために存在するので、憲法が縛っているのは国の行為だ。つまり肖像権とは、「国によってみだりに容ぼう等を撮影されない自由」を保証するもので、個人が撮影する行為に対して「みだりに容ぼう等を撮影されない自由」は保証していない。憲法は個人の行為に直接適用されないので、裁判を起こしても敗訴するか、門前払いの却下判決が出させるだけである。

 だから多くの場合、憲法以外の法律を根拠に裁判を起こすことになる。多く引き合いに出されるのが、不法行為の損害賠償を規定した民法709条だ。第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。
だが実際には、こうした「みだりに容ぼう等を撮影されない自由」は、反対向きの権利、すなわち「表現の自由」とぶつかることになる。日本の司法は、表現の自由を非常に重視するので、よほど被写体側に具体的な被害が認められない限り、個人による撮影を不法行為であるとは判断しないだろう。

盗撮とパブリシティ権

 では、撮影されたくなくても我々一般人は甘受しなければならないのか。今回の撮影は盗撮にあたるのではないかという意見もある。

 盗撮の禁止は、多くの都道府県が持つ迷惑防止条例で規定されている。ここでは撮影が行われた東京都の迷惑防止条例にて、盗撮の定義を調べてみよう。

 盗撮とは、正当な理由なく、人を著しく羞恥させ、又は人に不安を覚えさせるような行為であって、人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、写真機その他の機器を用いて撮影し、又は撮影する目的で写真機その他の機器を差し向け、若しくは設置することです。東京都迷惑防止条例




東京都迷惑防止条例

とある。ここは法文の読み方の難しいところだが、前段の「人を著しく羞恥させ、」「人に不安を覚えさせるような行為であって」は、「or」の意味である「又は」で結ばれるので、どちらかが成立していれば良い。今回は「人に不安を覚えさせるような行為であって」が該当するだろう。

 そして前段とそのうしろの一文を繋ぐ「~であって、」は、この前後を「and」で結ぶ。つまり後ろの「人の通常衣服で隠されている下着又は身体を、」は必須条件だ。今回の撮影では被写体は下着姿や裸ではないので、迷惑防止条例には該当しないことになる。まあ、そもそも本人に隠れて撮ってない時点で、盗撮という言葉の定義にも該当しない気がする。

 そうだとしても、無断で自分の容姿が撮影されて、それを作品として売って利益を得ているとしたら、その分け前は請求できるはずだ、とする考え方もある。こうした、その容姿に一定の価値があり、それを表示するだけでなんらかの利益を誘導できる人物の容貌には、「パブリシティ権」が認められる。パブリシティ権は肖像権の中に含まれる権利で、これも最高裁判例によって認められた権利である。

 ただしこれは、タレントや俳優、プロスポーツ選手など、すでに広く認知を得ている人に対して財産権として認められるもので、一般人にはパブリシティ権は認められない。つまり今回の行為は、どの法令に当てはめても違法行為を成立させるには足りないのである。

結局どこが問題なのか

 今回炎上したPVの制作責任はフジフイルムにある。公式の広告宣伝の一環として公開しているわけだから、このような制作プロセスによって撮影されるストリートスナップも、同社法務部のチェックを受けて、法的に問題ないと踏んだのだろう。

 ただ、法的には違法行為ではなくても、すでに今の日本の社会の中で、こうした行為が許容されそうかどうかは、考えておくべきだった。

 日本の社会は、法律以外の目に見えないルール、時にモラルとか常識とかマナーとか呼ばれるものによって縛られている。それはときに我々を窮屈にするが、理不尽に不愉快な目に合わないという一定の効果は認められる。キモいキモい、やめてね、が通用する社会なのである。

 もっとも、常識の中からは芸術は生まれないので、あとは社会の許容力の問題であろう。正直日本の許容力は、かなり小さい。尖った芸術は生まれにくく、多くの人は芸術よりも自分の快適さを優先する。

 今もどこかでストリートスナップは行われているのかもしれない。そして今回のPV炎上事件を通じて、その行為や方法論を広く周知したことは、広く一般にまで同様の行為を助長させる可能性がある。ただ、その責任を取れといわれても、もはや取りようがない。富士フイルムをずっと責め続けても、これ以上どうにもならない。

 ストリートスナップは、日本の社会には馴染まない手法であるというコンセンサスは、どこかでとっておいたほうがいいのだろう。

※2月29日13時36分、本文の一部表現を変更しました。

「フジフイルムPV炎上」のモヤッと感を整理する

2020年02月29日 08時19分 公開

[小寺信良,ITmedia]



https://drive.google.com/file/d/1OGXh_t9duZpyMOXc7uOoALUpejBEkn0d/view?usp=sharing

https://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/2002/05/news136.html

 https://drive.google.com/file/d/1WdUqV0gtle6gsTY14bH_W5kWDS_91zPH/view?usp=sharing



東京大学は、大学院情報学環 大澤昇平特任准教授(以下「大澤特任准教授」という。)について、以下の事実があったことを認定し、1月15日付けで、懲戒解雇の懲戒処分を行った。

<認定する事実>
 大澤特任准教授は、ツイッターの自らのアカウントにおいて、プロフィールに「東大最年少准教授」と記載し、以下の投稿を行った。
(1) 国籍又は民族を理由とする差別的な投稿
(2) 本学大学院情報学環に設置されたアジア情報社会コースが反日勢力に支配されているかのような印象を与え、社会的評価を低下させる投稿
(3) 本学東洋文化研究所が特定の国の支配下にあるかのような印象を与え、社会的評価を低下させる投稿
(4) 元本学特任教員を根拠なく誹謗・中傷する投稿
(5) 本学大学院情報学環に所属する教員の人格権を侵害する投稿

大澤特任准教授の行為は、東京大学短時間勤務有期雇用教職員就業規則第85条第1項第5号に定める「大学法人の名誉又は信用を著しく傷つけた場合」及び同項第8号に定める「その他この規則によって遵守すべき事項に違反し、又は前各号に準ずる不都合な行為があった場合」に該当することから、同規則第86条第6号に定める懲戒解雇の懲戒処分としたものである。

<添付資料>
東京大学短時間勤務有期雇用教職員就業規則(抄) (PDFファイル: 68KB)
東京大学における懲戒処分の公表基準 (PDFファイル: 12KB)

東京大学理事(人事労務担当)
里 見 朋 香 

https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/press/z1304_00124.html
本部広報課


掲載日:2020年1月15日

懲戒処分の公表について

令和2年1月15日
東京大学

https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400130020.pdf


https://www.u-tokyo.ac.jp/content/400130021.pdf