次期衆院選を意識してだろうが、各党が改革姿勢のアピール合戦に終始しているだけでは、信頼回復は 覚束 (おぼつか)ない。
政治資金は、与野党問わず、政治活動を支える共通の基盤だ。法改正の実現に向け、与野党は協力し合う時だ。
衆院の特別委員会で政治資金規正法改正案の審議が始まった。自民党の案のほか、立憲民主党と国民民主党が共同提出した案、日本維新の会の案などを議論する。
自民党の派閥の政治資金パーティーを巡る事件で、国民の政治不信は高まっている。政治資金の透明性を向上させ、国会議員の責任を明確にすることが重要だ。
各党は、政治資金の扱いに不正があった場合、議員の罰則を強化することでは一致している。
自民党は、会計責任者が収支報告書を適正に作成したことを議員が確認することを義務づけた。会計責任者が不記載などで処罰され、議員の確認が不十分だった際には、議員は失職する。
一方、立民、国民民主両党は、政治団体から議員側への150万円超の寄付について報告書に記載しなかった場合、議員に罰金を科し、失職することを定めた。
いずれの案でも、議員が「会計責任者に全てを任せていた」といった言い逃れは通用しにくくなるのではないか。
現行法が1件あたり「20万円超」と定めている政治資金パーティー券の購入者の公開基準については、自民が「10万円超」、維新や公明党、国民民主が「5万円超」への引き下げを主張している。
一方、立民が単独で提出した、パーティーの開催や企業・団体献金を禁止する案は、自民を不利な立場に追い込むための単なるパフォーマンスのように映る。
1995年に政党交付金の制度が導入された当時も、パーティーの開催や企業・団体献金は認められていた。立民は、議員が資金を集める手段を断ち、どうやって政治活動を続けるつもりなのか。
改正案について自民、公明両党で協議したのに、与党案がまとまらなかったのは異例だ。
公明党は「安易に自民党に譲歩すれば、自分たちが支持を失う」と警戒したのだろう。だが、議員立法とはいえ重要法案の採決で与党の賛否が割れることになれば、信頼関係に影響が出かねまい。
国会は会期末まで残り1か月しかない。各党は、独自姿勢を競い合って肝心の法改正実現を危うくすることのないよう、合意形成に向けて協議する必要がある。