特例法の全面廃止は、「陰茎ある法的女性の阻止」にはマイナス女性スペースを守る会女性スペースを守る会2024年3月23日 18:04PDF魚拓



1 性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(平成15年法律第111号)を廃止すれば、トランスジェンダーも性同一性障害も、戸籍上の性別は変わらなくなると思われている方がいる模様です。

 しかしそれは間違いなんです。その理由、特例法の制定過程と最高裁の違憲立法審査権の怖さについて、以下で説明します。





① 戸籍法113条「戸籍の記載が法律上許されないものであること又はその記載に錯誤若しくは遺漏があることを発見した場合には、利害関係人は、家庭裁判所の許可を得て、戸籍の訂正を申請することができる。」という規定があります。

② 2003年特例法の成立前、この規定により、性分化疾患以外の場合でも、家裁の許可で性別が変更できた先例が幾つかあるんです。2018.7.14のシンポジウムで三橋順子氏が話したレジュメでも報告されています。(LGBTをめぐる法と社会 谷口洋幸編 2019/7日本加除出版)男→女への「戸籍訂正」が、性同一障害の人につき、認めた家裁先例があるのです。

③ しかし、2000年2月9日、東京高裁がこれを認めず判例となりました(判例時報1718号62頁、判例タイムズ1057号1255頁)。

 そのために、法律制定での解決を図れ、という声が強くなり、2003年特例法ができたんです。それも全会派一致でです。

④ そして、2023.10.25、最高裁は特例法の生殖能力喪失要件について違憲と判断してしまった。憲法上の相応の権利として性自認を認めてもらう権利があるとしても、この形での権利として認めるのが最高裁の状況なのです。



3 ですから、特例法を単純に廃止した場合には、2000年東京高裁の段階に戻るのではなく、それ以前の家裁段階で戸籍法113条による「戸籍の訂正」を許可したところに戻るんです。この適用または準用にて、戸籍を変えてしまうのです。家裁が仮に認めなければ、高裁そして最高裁は、変更を認めなければ憲法違反になるとして認めるんです。

 それどころか、上記違憲決定までもでているのだから、家裁は、外観要件の具備さえもまともに求めずに戸籍の訂正として性別変更を認めてしまう可能性が高いものです。静岡家裁浜松支部は最高裁決定が出る前の2023.10.11に女性から男性への例ですが、違憲と判断し変更を認めました。それと同じことが、戸籍法113条解釈の場面において起きるのです。



4 以上から、特例法を廃止すれば、戸籍上の性別を変わる道がなくなると考えるのは間違いなんです。

 特例法を廃止すれば良い筈だという考えは、法を知る国会議員の誰も相手をしないでしょうし、法制局もそれは無理と当然言うでしょう。議員は「そのお気持ちはわかりました、何とかしたいと思います」とかは言うでしょうけれども。

 以上のことは、杉島幸生弁護士も同意見だとされました(2023.3.21のXポスト)。氏は、こちらの性自認主義の問題の所在が分かりやすい図を作り説明した弁護士です。

https://note.com/sws_jp/n/n593d6fb4ca76
特例法の全面廃止は、「陰茎ある法的女性の阻止」にはマイナス

女性スペースを守る会

2024年3月23日 18:04



平成十五年法律第百十一号

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律

(趣旨)

第一条 この法律は、性同一性障害者に関する法令上の性別の取扱いの特例について定めるものとする。

(定義)

第二条 この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そのことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。

(性別の取扱いの変更の審判)

第三条 家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。

 十八歳以上であること。

 現に婚姻をしていないこと。

 現に未成年の子がいないこと。

 生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。

 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。

 前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければならない。

(性別の取扱いの変更の審判を受けた者に関する法令上の取扱い)

第四条 性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令の規定の適用については、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わったものとみなす。

 前項の規定は、法律に別段の定めがある場合を除き、性別の取扱いの変更の審判前に生じた身分関係及び権利義務に影響を及ぼすものではない。

https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=415AC0100000111
平成十五年法律第百十一号

性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律