性同一性障害特例法を守る会
10月2日に千葉県人権啓発指導者養成講座で行われる予定だった作家・森奈津子氏による「女性に関する人権」講座が、直前の9月26日に千葉県の側から一方的に中止されました。
私たちはこのようなあからさまな「キャンセル」に強い抗議の意思を表明します。また、このような「キャンセル」の理由が「知事決裁による中止」だと聞き及んでいます。知事が恣意的に人権に関する講演を「キャンセル」するという暴挙に出たとするのならば、千葉の民主主義が正面から問われなくてはならない重大な事態であると、私たちは憂慮します。
この状況に至るまでの経緯を見ると、私たちは性同一性障害当事者の団体として、直接私たちの利害とも密接に関連する事情が明らかになってきており、当事者としてけして看過できない背景があることに気づきます。
9/13 人権啓発指導者養成講座の内容がホームページ上に発表。
9/20頃 LGBT活動家たちからの抗議が始まる。
9/21 C.R.A.C(対レイシスト行動集団)と台湾人LGBT活動家の劉靈均(アリエル・クッキー・リュウ)氏がX(旧ツイッター)にこの件をポストし、人権啓発指導者として不適切だと中傷。
9/22 熊谷俊人千葉県知事のX公式アカウントの上で、このC.R.A.Cと劉靈均氏へのリプライとして「経緯を確認します。私も驚いています」がポストされる。
9/24 Transgender Japan 畑野とまと氏が千葉県と面談し、講座中止の要求を受け付ける。
9/25 女性スペースを守る会より、講座の実施を要請する上申書をFAXで送信。
9/26 女性スペースを守る会・滝本太郎弁護士ほか数名が千葉県の担当課と面談し、講座の実施を強く要求。その際に担当者は「円滑に開催することができない可能性があるから」と説明したが、「中止は知事決裁」と明言。
9/26夕 講座の中止を発表。「諸般の事情により」と理由をぼかす。
この経緯を見るかぎり、LGBT活動家たちの抗議を熊谷知事が受け入れて、自ら主導して講座の中止を決定した、という事実が見えてきます。
もちろん抗議が正当であったとしても、知事がその権力を行使して市民的な活動を制限することには、十分な抑制と説明責任を伴うことは言うまでもありません。この経緯を見る限り、知事は「軽々しく」一部団体の抗議を受け入れて権力を行使して「言論・集会の自由」を制限し、その理由についての説明責任を果たそうとはしていないことが明らかになります。
そしてこの「抗議」を行い森奈津子氏を誹謗中傷した、C.R.A.C.(対レイシスト行動集団)と台湾人LGBT活動家の劉靈均氏、また Transgender Japan といった団体個人は、左翼過激派LGBT活動家であることは広く知られています。それだけではありません。C.R.A.Cは「レイシストをしばき隊」を前身として持つ、暴力的な行為や脅迫的な言動によって悪名を轟かせ、幾多の暴力事件・不祥事を引き起こした団体です。
劉靈均氏は森氏と行動を共にする「女性スペースを守る会」への誹謗中傷をX上で公然と行い、このため現在訴訟が継続中であり、私怨による抗議であると見られても仕方のない行動をとっています。
Transgender Japan も共同代表である浅沼智也氏のセクハラ問題が刑事事件にまで発展しています。
このように社会的に問題ある行動を起こす団体による「抗議」に、公職にある者が軽々しく肯定的な反応を返すということ自体、大きな問題がある、とさえ言えるでしょう。
まさか、熊谷知事は暴力と脅迫に屈したのでしょうか?
ましてや、唯々諾々とその極端な政治的主張を受け入れて、正当な言論活動を抑制するのであれば、熊谷知事の政治姿勢に大きな偏向があると批判されるのは当然のことではないのでしょうか。
森奈津子氏はよく知られる通り、去年のLGBT理解増進法の参院審議において、日本維新の会からの参考人として参考意見を述べた人物でもあります。森氏自身、レズビアン・バイセクシュアルであることを明言する性的少数者の一人です。その主張が「差別的」であるのならば、国会での審議自体が「差別的」であると中傷するがごときものです。熊谷知事の行動は極めて軽率なものであったと言わざるを得ません。
百歩譲って Transgender Japan のようなLGBT活動家組織の主張に一理があるとしても、私たちの「性同一性障害特例法を守る会」は、性同一性障害当事者の団体として、森奈津子氏を全面的に擁護します。「トランスジェンダー」を巡る問題については、当事者の間でも意見が分かれています。この問題については、直接利害を持つ当事者の間でさえも、何の合意もなければ多数意見を代表する立場にある者もいないのです。千葉県・熊谷知事は性的少数者の意見の中で、恣意的に Transgender Japan の意見だけを聞き入れて、森氏の講座を応援する私たち当事者の意見を踏みにじったことにさえなるのです!
私たちはこのような不公平についても、千葉県と熊谷知事に抗議いたします。一旦決まった県の事業について、県知事自らが恣意的かつ強権的に「あれはダメ・これはOK」と口出しすることの異常性について、広く千葉県民および国民すべてに知って頂きたいと考えます。
千葉県と熊谷知事は、このような状況に至ったことに対して、十分な説明責任を果たすことは最低でも必要です。そして、森奈津子氏に対して真剣な謝罪と、代替的な措置を千葉県自らが講じることを、私たちは性同一性障害当事者の団体として求めます。
以上