令和書籍の歴史教科書、視点工夫のコラム充実 教育勅語、慰安婦問題、原爆投下など2024/6/13 13:17.「光も影もさらけ出す」…令和書籍の中学歴史教科書、検定初合格 竹田恒泰氏に聞く2024/6/13 12:17PDF魚拓


文部科学省の検定に初合格した令和書籍の中学歴史教科書。明治23年に発布され徳目を示した教育勅語や、先の大戦を巡る「慰安婦」問題、原子爆弾投下といったテーマを読み解くコラムが充実しており、他社版とは異なる視点で歴史を追う工夫が凝らされている。

教育勅語については、現代語訳の要約の掲載にとどまっている教科書が多い。令和書籍版では、「修身道徳の根本規範『教育勅語』」と題したコラムを設け、1ページ半にわたって紙幅を割いている。

「父母ニ孝ニ兄弟(けいてい)ニ友ニ夫婦相和シ…」などの原文を引用した上で、現代語に訳して解説。「先人たちがよき伝統を残してきたから今の日本があるといえる」と勅語の本質を読み解いている。

慰安婦問題については、「蒸し返された韓国の請求権」というコラムを掲載し、日本軍が朝鮮の女性を強制連行した事実はないと解説。「従軍記者や従軍看護婦のように『従軍』させ、戦場を連れまわした事実はありません」と記述し、「従軍慰安婦」という用語が誤解を招く恐れがあるとした政府見解を分かりやすく説明している。

先の大戦中に朝鮮人女性を軍命令で「狩り出した」とする吉田清治氏の虚言を「証言」として報じた朝日新聞にも言及し、事実無根の強制連行説が広まった経緯が読み取れるようになっている。

米国による原爆投下は本文の記述に加え、安倍晋三政権下の平成28年にオバマ米大統領(当時)の広島訪問が実現した意義を伝えるコラムを2ページ半にわたって設けた。被爆者とオバマ氏が抱擁する写真も掲載された。

後段のディスカッション(討議)を促す項目では「原爆投下は正しかったか」を議題として例示。「一つの落としどころを見つけることが目的」と説明し、対立ではなく融和的な対話によって歴史認識を前進させる取り組みを実践できるように編集されている。

異例の検定「未了」も無事合格

令和7年度から中学校で使われる教科書の検定は3月下旬に結果が公表されたが、令和書籍版の検定内容が事前に外部に漏れていた可能性があるとする通報があり、文部科学省が検定「未了」として結果を留保する異例の経過をたどった。

教科書会社が検定に申請していることやその内容などについて、情報を事前に外部に漏らした場合、不合格とすることが規則で定められている。外部の動きによって審査に影響が出ることを避け、静かな環境で検定を行うための措置だ。

文科省の調査で、令和書籍側がインターネット番組で「申請を予定している」との発信があったことが分かったが、申請後に内容を公にするなどの事実はないことが判明。審査にも影響を与えていないことが明らかとなり、他社版よりも1カ月近く遅れる形で4月19日に合格が発表された。

令和書籍は平成30年度の検定から中学歴史教科書を申請。これまでに3回にわたり不合格となっており、「検定不合格教科書」として市販し、その売り上げを教科書づくりの資金に充てている。

令和書籍の中学歴史教科書、検定初合格 竹田恒泰氏に聞く

令和書籍の歴史教科書、視点工夫のコラム充実 教育勅語、慰安婦問題、原爆投下など

2024/6/13 13:17


明治天皇の玄孫(やしゃご)で作家の竹田恒泰氏が代表を務め、教科書づくりに新規参入した令和書籍が申請した中学校の歴史教科書が文部科学省の検定に初めて合格した。採択されれば、令和7年度から授業で使われる。「日本史の光も影もさらけ出し、その本質的な面白さを伝えたい」。既存の教科書とは異なる、どのような工夫がなされているのか、竹田氏に聞いた。

経験不足で不合格に

平成30年度に初めて申請して以降、6年目にして初めて検定を通過した。1、2回目の申請時は、もう全てがだめだと、具体的にどこが問題なのかという指摘すらもらえない状態だった。検定終了後に教科書調査官と面談する時間が設けられるが、その際、どこに問題があったのかを時間が許す限り、個々の問題点を確かめて次回に生かすようにした。

3回目でようやく、文科省側から検定意見(修正を求める意見)が示された。回数を重ねるごとに修正意見を減らし、今回の合格に至った。合格までに6年もかかったのは経験不足が原因だと思っている。新規参入が少ない世界に突っ込んでいったわけなので。

生徒を楽しませる

保守系の教科書をつくったという意識はない。一部のメディアからは、戦争を礼賛している、教育勅語を美化しているなどといわれているが、最も戦争を戒めている教科書になっていると思う。

例えば、原爆投下を巡る描写を例に取っても、何度の光線が何秒でどこに達し、爆風でどういう状況になったか。これほど克明に書いている教科書は他にない。戦争に勝者はない。だから、戦争は絶対に避けなければならない、ということを全体でうたっている。

最も力を入れたのは、生徒たちを楽しませるということだ。日本の歴史は本質的に面白い。誇らしいこともあれば、苦い経験も山ほどある。光も影もさらけ出したというのがこの教科書だ。

巻頭には、王朝別に各国の略年表を掲載した。アジア諸国も欧州や中東の各国も王朝の交代を繰り返しているのに、日本だけは王朝の交代がない。なぜ、日本だけが、(ヤマト王権発足から)皇室が1800年も続いてきたのか。この教科書を読んで議論してほしい。その答えの探究を大課題として設定した。

難関高校受験にも対応

日本をよくするためにも、将来のリーダーとなる中学生にこそ、この教科書を読んでもらいたい。そう考え、最難関の高校受験に対応するため、偏差値上位15位までの高校の入試問題を過去10年分解析し、本文に加えて欄外にトピックスを立て、多角的に深掘りして記述している。

例えば、「江戸の水上交通」。よく出題されるテーマだが、その観点でワントピックとしてまとめた記述を読んでいるかいないかで、受験の出来も変わってくる。

高校向けの歴史総合、日本史探究、世界史探究の教科書づくりにも着手している。小学校向けの社会科教科書も参入していく予定だ。(玉崎栄次)

令和書籍の歴史教科書、視点工夫のコラム充実

「光も影もさらけ出す」…令和書籍の中学歴史教科書、検定初合格 竹田恒泰氏に聞く

2024/6/13 12:17