明治天皇の玄孫(やしゃご)で作家の竹田恒泰氏が代表を務め、教科書づくりに新規参入した令和書籍が申請した中学校の歴史教科書が文部科学省の検定に初めて合格した。採択されれば、令和7年度から授業で使われる。「日本史の光も影もさらけ出し、その本質的な面白さを伝えたい」。既存の教科書とは異なる、どのような工夫がなされているのか、竹田氏に聞いた。
経験不足で不合格に
平成30年度に初めて申請して以降、6年目にして初めて検定を通過した。1、2回目の申請時は、もう全てがだめだと、具体的にどこが問題なのかという指摘すらもらえない状態だった。検定終了後に教科書調査官と面談する時間が設けられるが、その際、どこに問題があったのかを時間が許す限り、個々の問題点を確かめて次回に生かすようにした。
3回目でようやく、文科省側から検定意見(修正を求める意見)が示された。回数を重ねるごとに修正意見を減らし、今回の合格に至った。合格までに6年もかかったのは経験不足が原因だと思っている。新規参入が少ない世界に突っ込んでいったわけなので。
生徒を楽しませる
保守系の教科書をつくったという意識はない。一部のメディアからは、戦争を礼賛している、教育勅語を美化しているなどといわれているが、最も戦争を戒めている教科書になっていると思う。
例えば、原爆投下を巡る描写を例に取っても、何度の光線が何秒でどこに達し、爆風でどういう状況になったか。これほど克明に書いている教科書は他にない。戦争に勝者はない。だから、戦争は絶対に避けなければならない、ということを全体でうたっている。
最も力を入れたのは、生徒たちを楽しませるということだ。日本の歴史は本質的に面白い。誇らしいこともあれば、苦い経験も山ほどある。光も影もさらけ出したというのがこの教科書だ。
巻頭には、王朝別に各国の略年表を掲載した。アジア諸国も欧州や中東の各国も王朝の交代を繰り返しているのに、日本だけは王朝の交代がない。なぜ、日本だけが、(ヤマト王権発足から)皇室が1800年も続いてきたのか。この教科書を読んで議論してほしい。その答えの探究を大課題として設定した。
難関高校受験にも対応
日本をよくするためにも、将来のリーダーとなる中学生にこそ、この教科書を読んでもらいたい。そう考え、最難関の高校受験に対応するため、偏差値上位15位までの高校の入試問題を過去10年分解析し、本文に加えて欄外にトピックスを立て、多角的に深掘りして記述している。
例えば、「江戸の水上交通」。よく出題されるテーマだが、その観点でワントピックとしてまとめた記述を読んでいるかいないかで、受験の出来も変わってくる。
高校向けの歴史総合、日本史探究、世界史探究の教科書づくりにも着手している。小学校向けの社会科教科書も参入していく予定だ。(玉崎栄次)
令和書籍の歴史教科書、視点工夫のコラム充実