日朝外交回顧録から五味洋治 Yoji Gomi五味洋治 Yoji Gomi2024年7月15日 09:41 国交正常化の対価は114億ドル規模の経済支援五味洋治 Yoji Gomi五味洋治 Yoji Gomi2024年7月15日 09:26PDF魚拓



過去から何を学べるかという章をまとめてみた。
当たり前の内容ともいえるが、こういったバランス感覚は今も必要なはずだ。

筆者は日本外務省で勤務していたベテラン外交官だ。

北朝鮮との交渉から学ぶ教訓

一貫性と忍耐の重要性

北朝鮮との交渉は一筋縄ではいかず、何度も合意が破棄されてきた。例えば、2002年の小泉純一郎首相の訪朝で5名の拉致被害者の帰国が実現したが、残りの被害者の問題は未解決のままである。2004年の再訪朝以降も同様に交渉が進展せず、拉致問題に対する北朝鮮の姿勢は一貫して「解決済み」というものであった。日本政府は一貫性を持ち、忍耐強く交渉を続ける必要がある。

国内世論の影響

北朝鮮の挑発行動や拉致問題に対する対応により、日本国内の世論は急激に変化し、北朝鮮への制裁が強化されることがあった。例えば、北朝鮮が相次いでミサイル発射や核実験を行った際には、日本国内での反発が強まり、独自の制裁措置が次々と発動された。日本政府は国内世論を慎重に考慮しつつ、国益を守るための戦略を練る必要がある。

多国間協力の重要性

北朝鮮問題は日本だけで解決できるものではない。例えば、六者会談の枠組みや米朝間の交渉が北朝鮮の核開発問題解決に向けて重要な役割を果たしてきた。しかし、米朝枠組み合意が崩壊し、六者会談も北朝鮮の離脱によって機能しなくなったことから、多国間協力の重要性が再確認された。日本政府は、他国との連携を強化し、共同で問題解決にあたるべきである。

柔軟な対応とタイミングの見極め

2008年に北朝鮮が拉致問題の全面的な調査に合意した際、福田康夫首相が退陣を表明した直後に北朝鮮は調査を見合わせる旨を連絡してきた。このように、タイミングが交渉の進展に大きな影響を与えることがある。日本政府は、柔軟な対応と適切なタイミングの見極めが求められる。

北朝鮮の内部事情の把握

北朝鮮の内部事情や指導体制の変化も交渉に影響を与える要因である。例えば、金正恩体制の発足直後には交渉が再開され、一定の進展が見られたが、内部事情の変化により再び停滞した。日本政府は北朝鮮の内部事情を十分に把握し、それに応じた戦略を立てることが重要である。

長期的な視点の重要性

北朝鮮問題の解決には長期的な視点が必要である。短期的な成果を求めるのではなく、長期的に安定した関係を築くための戦略を立てることが求められる。北朝鮮が核兵器開発を放棄し、地域の安定に貢献するためには、持続的な外交努力と経済支援が不可欠である。

国際社会の圧力と支援

北朝鮮に対する国際社会の圧力と支援も重要な要素である。例えば、国連の制裁措置や他国からの経済支援などが北朝鮮の行動に影響を与えることがある。日本政府は国際社会と協力し、北朝鮮に対する適切な圧力と支援をバランスよく活用する必要がある。

以上の教訓を踏まえ、日本政府は北朝鮮との交渉において一貫性と忍耐、柔軟な対応、多国間協力、そして長期的な視点を持つことが重要である。これにより、拉致問題や核開発問題の解決に向けた進展を期待することができる。

日朝外交回顧録から

五味洋治 Yoji Gomi

2024年7月15日 09:41



2011年12月13日火曜日

張哲賢 2011 12 10 国際セミナー報告

過去に残していたメモの一部を再掲します。

拉致関係団体が開いたセミナーでの報告内容です。
日本語に直して、一部を再掲します。なお報告はこれ以上の内容がありました。


小泉総理の北朝鮮訪問前後の北朝鮮の状況

Ⅰ小泉総理の北朝鮮訪問に対する日本と北朝鮮の目的
1.北朝鮮の目的
-日本から過去の謝罪と植民地賠償を受け取れるようにする政治、外交的契機と転換点を準備しようとした。
-小泉総理の北朝鮮訪問を両国の政治外交的成果として浮上させることにより、北朝鮮が政権次元で敢行した拉致犯罪を縮小しようとした。
-国交正常化とともに日本が提供する莫大な外貨で、北朝鮮の経済難を回復しようとした。
-日本との国交正常化を成功させて北朝鮮は自主的、独立国としての権威と地位を対外的に誇示しようとした。
-日本国内の朝鮮総連の地位と権威を強化しようとした。
-米国と韓国内の反北勢力を孤立させる一方、融和的対話を引き出すための国際的環境を作ろうという意図であった。
2.統一戦線部が分析した日本の目的
-内外の悪材料に直面した小泉内閣が支持率反転の突破口を拉致問題解決に見いだそうとしたのではないか。
-拉致問題において、具体的提案よりも政権次元の謝罪と反省を受けることに注力して小泉内閣の支持率反転の契機に活用しようとしたのではないか。
-日本の最敵対国である北朝鮮政権を大胆に包容することで日本の国連安保理常任理事国への進出のための国際環境を有利にしようとしたのではないか。
-反日感情が濃厚な韓国を刺激するための北朝鮮を抱擁する戦略ではないか。
-ミサイル発射試験のような北朝鮮の軍事的行動に対して警告を与えようとしたのではないか。
Ⅱ首脳会談における日本と北朝鮮の立場の比較
1.日本と北朝鮮との初期の立場の比較
‐北朝鮮は国交正常化、植民地賠償金支払いを前提とする拉致交渉および首脳会談を提案した。
-日本は拉致問題解決を前提とする首脳会談と経済支援を提案した。
‐北朝鮮は日本の過去謝罪とその延長線での植民地賠償金支払いに関する公開宣言を提案した。
-日本は過去謝罪は可能だが賠償金支払いでなく国交正常化名目の経済支援を約束した。
‐北朝鮮は拉致問題に対する個別の関係機関の反省と謝罪、処罰は可能だが政権次元の公式的立場の発表は許さなかった。
-日本は過去への公開謝罪と北朝鮮政権の拉致犯罪への公開謝罪を交換をする形の両国の同時反省を提案した。
‐北朝鮮は国交正常化および過去賠償金支払い履行と監視のために、北朝鮮・日本駐在共同事務室の開設を要求した。
-日本は拉致の生存者の全員送還とその円満な解決のための日本・北朝鮮共同拉致事務室の開設を要求した。
‐北朝鮮は現金中心の経済支援を要求した。
-日本は物資中心の経済支援にこだわった。
2.日本と北朝鮮の立場の変化の比較
‐北朝鮮は拉致問題に対して政権次元でない形式での謝罪と反省を検討するといった。
-日本は公開的な拉致認定と謝罪以後の経済支援を約束するといった。
‐北朝鮮は植民地統治過程に資源収奪、人材収奪、それに対する物質的、精神的損害賠償まで含んで400億ドル規模の経済支援を要求した。
-日本は拉致問題解決のため北朝鮮政権が誠意ある努力と反省を見せる条件で日本政府が最大可能な範囲内での経済支援を約束した。
‐北朝鮮は日本国内朝鮮総連メンバーの自由往来解決とその手続き簡素化を要求した。
-日本は拉致された日本人の安全と早急な送還を要求した。
3.実務会談過程でのエピソード
-日本はめぐみ問題、拉致被害者身元確認要求など初めは具体的提案をしたが北朝鮮が拉致問題という大きいタイトルの会談に固執するとすぐに目に見える成果のために譲歩した。
‐北朝鮮側は政権次元の犯罪を否定して拉致に介入した個別の関係機関の謝罪と反省を公開、または、非公開でするとし、これさえ拒否する場合、会談を決裂させると脅迫した。
-しかし当時統戦部をはじめとする対南工作機関は部分的認定も認定だとして金正日の権威と連係させて外務省の実務交渉での発言自体を深刻に問題にした。
-賠償金400億ドルの根拠として北朝鮮が植民地統治期間の収奪金額とその利子を計算した結果だとするや、日本側は発電所、製鉄所、鉄道など植民地産業施設を北朝鮮が今まで無断で使った費用を支払えと正面から対抗した。
-結局、国交正常化以後の日本の経済支援金額を114億ドルとして暫定的合意をし、北朝鮮はこのような首脳会談の代価金額を金正日に報告した。
-しかし、統戦部は6.15南北首脳会談の代価を先に受け取った実績と比較して外務省の交渉結果を低く評価した。
‐北朝鮮側は小泉北朝鮮訪問の時期を8月と要求したが、これは日本と北朝鮮との首脳会談を今後「第2の8.15敗戦」として宣伝しようとする政治的意図であった。
‐北朝鮮の現金支援要求ごに日本側は現金支援をする場合、独裁国家および核開発支援の検証で米国が介入する名分を与えるとし物資支援の必要性と展望を北朝鮮に説明した。
-また、日本は過去謝罪と植民地賠償名目の現金支援は韓国をはじめとする他のアジア国家の再交渉要求につながりうる事案だと説明した。
4.実務会談以後の北朝鮮状況
-金正日の指示で社会科学院、人民経済大学などの経済機関により114億ドル規模の経済支援金で北朝鮮経済を再建するため多様なプロジェクトが企画された。
-特に経済再建では現在の単線を全国複線とする鉄道現代化が核心となった。
-金慶喜軽工業部長が主管することになる日本商品に対する期待も大きかった。
-日本の経済支援により北朝鮮は拡大生産的な輸出経済建設よりも自給自足の経済基盤構築に一層力を注いだ。
-そして国家計画委員会では日本が供給する経済支援金を各分野に分配する計画をすでに作成していた。
-日本政府を圧迫する目的で新聞、放送、講演らを通じて日本の過去植民地統治期間の被害を集中的に浮上させる対日心理戦を展開した。
-しかし、統戦部をはじめとする対南工作機関は拉致を主題とする交渉自体が望ましくないとして今後展開する国際的影響を非常に憂慮した。
(後半省略)



以上


2011年12月11日00:38

この講演の記事です。

【みんな生きている】北朝鮮人権週間編

「北朝鮮による人権侵害啓発週間」初日の12月10日、北朝鮮による拉致被害者の家族会・救う会のセミナーが開かれ、脱北した元統一戦線部幹部が「1977年当時、世界各国から子供を拉致して工作員にするよう金正日(キム・ジョンイル)総書記の指令が出ていたと聞いた」と初めて証言しました。
「(工作員養成の)現地化教育は大人になってからでは難しいので、全世界から子供を拉致して来て、子供に北朝鮮の教育をして北朝鮮のスパイとして使おうということも考えた。『海外で工作活動が終わって帰るときに拉致をしろ』という指令が工作員に出て、(世界の)各地域から子供たちが拉致される事例が多かったという話を聞いております」
(元統一戦線部幹部・張哲賢〈チャン・チョルヒョン〉氏)
北朝鮮の元統一戦線部幹部の張哲賢氏は
「横田めぐみさんが拉致された1977年に金総書記の指令により世界各国から子供を拉致した事例があったと聞いたが、子供の工作員教育が上手くいかず、代わりに北朝鮮の女性工作員が外国人との間に子供を産み、工作員とする方針に変更された」
と述べました。
また、山岡賢次拉致問題担当大臣主催のレセプションで挨拶した藤村 修官房長官は
「拉致問題対策本部の態勢を強化する」
と述べ、近く対策本部の人員を増員する考えを明らかにしました。
【統一戦線部】
対南(対韓国)工作を担当する部署。

国交正常化の対価は114億ドル規模の経済支援

五味洋治 Yoji Gomi

2024年7月15日 09:26