3Keysホーム » 白書 - 日本の子どもたちの今 » 不登校やいじめの数って?~文部科学省の資料では見えない現状PDF魚拓
ないものにされていた、いじめ
いじめの認知件数についても見てみます。2019年度に文部科学省の認知した小・中・高・特別支援学校でのいじめの件数は61万2496件で、5年連続で過去最高を更新しました。10年前の2009年度にはいじめの認知件数はわずか7万2778件で、この10年間で8倍以上に膨れ上がっています。特に小学校、それも低学年の認知件数が増えているのが近年の傾向です。
認知件数が急増しているのは、2013年度に「いじめ防止対策推進法」が公布されたことが背景にあります。
2011年、大津市の中学2年生が同級生らのいじめを苦に自殺。担任や学校は本人から相談や報告を受けていましたが、学校側は事件発覚当初いじめについて「知らなかった」「気づいていなかった」などと主張していたことから対応が問題視されました。この事件を受けて同法が国会で成立し、いじめの定義について「いじめられている側の視点に立つ」ことが明確化されました。またいじめに対する国の対処方針が、軽微なものも含めて積極的に学校が認知し、対策を講じることで事態の重大化・深刻化を防ぐというものになりました。
これにより、調査の回答者である学校や教育委員会が「いじめはないほうがいい」とする姿勢から「できるだけ認識する」姿勢へと変わったと考えられます。それに伴い、「冷やかしやからかい」「嫌なことを言われる」といったこれまでは見過ごされていたものもいじめとみなされるようになり、件数増加につながっています。小学校低学年の増加率が大きいのも、教室での悪口といったことが表面化し担任が把握しやすいことなどが要因だと考えられます。こうした方針転換により、それまで3-4割だった「いじめがあった」とする学校が全体に占める割合は、2019年度に82%に達しました。ちなみにいじめが発見されたきっかけは、同調査によれば全体の67%がアンケートなどによって「学校の教職員等が発見」したとされています。
文部科学省は、認知件数の増加については学校側が積極的に関わろうとしている結果だとして、肯定的に受け止める姿勢を示しています。ただ同調査での不登校や自殺、身体へのけが、財産の侵害といった「重大事態」の発生件数(※こちらは発生ベースです)は、19年度に前年度比121件増の723件でした。いじめが原因となった自殺者数は317人で、前年度の332人を下回ったものの平成以降で過去2番目に高い数値で、自殺という最も重大な事態が減っているとは言えない状況にあります。
学校がいじめを隠ぺいせず、積極的に認知しようとする姿勢に変わってきたことに関しては、専門家からも肯定的に受け止める声が出ています。他方、いじめを認知した学校の割合は都道府県で大きな差があり、取り組みへの温度差が指摘されています。また認知件数の増加が小学校低学年に偏っていることは、大人の目の届かない場所で行われる高学年のいじめについて、十分に把握できていない可能性も感じさせます。
不登校やいじめの数って?~文部科学省の資料では見えない現状
https://www.mext.go.jp/content/20201015-mext_jidou02-100002753_01.pdf
https://www.nippon-foundation.or.jp/app/uploads/2019/01/new_inf_201811212_01.pdf
https://www.mext.go.jp/kaigisiryo/content/20201204-mxt_syoto02-000011235_2-1.pdf