デモ行進や街宣と聞くと、まず思い浮かぶのは反戦運動や右翼の街宣だろう。ところが最近は、陰謀論者やカルト集団などが、「何者かが世界を裏で操っている」「ワクチン反対」などと主張するワケのわからないデモを頻繁に開催。特に都内では、毎週のように週末に何かしらのトン“デモ”行進が見られる。
そのひとつが、フリーセックス教団として知られる「ラエリアン・ムーブメント」(本部はスイス、教祖は沖縄在住)の反ワクチン運動だ。「人類は宇宙人の科学技術によって誕生した」と信じ、自由なセックスと平和を愛する団体だ。これが、コロナ禍が始まると、マスクやワクチンに反対して教育機関や自治体に申し入れを行うようになった。そして昨年11月、新宿でデモ行進も。
「脱退脱退脱退脱退脱退脱退脱退脱退脱退脱退脱退!」
ラエリアン日本支部の代表を務める女性が、デモの最初から最後までこう連呼する。感染症対策で各国の連携を強化する通称「パンデミック条約」を推奨するWHO(世界保健機関)から、日本は脱退すべきだというのだ。しかし「脱退脱退!」の連呼では、沿道の人たちには何のことやらわからないだろう。
このデモには、他団体のデモや街宣にも顔を出す陰謀論ラップユニット「韻暴論者」のメンバーも参加。新作の反パンデミック条約ラップを大音量で流していた。しかし音は割れ気味。デモリーダーがトラメガで「脱退脱退!」を連呼しっぱなしのため、せっかくのラップはほとんど聞き取れない。
「(韻暴論者メンバーから)曲を作ろうと言われたけど、パンデミック条約のことはあまり知らなかった。だからユーチューブを見て勉強しました」(作曲者のベノム氏)
世の中のことを勉強するなら、ニュースや本ではなくユーチューブ。陰謀論者の間では、これが“常識”だ。
■ワクチン接種済みの記者に「死亡宣告」
ラエリアンは、もともと宇宙人を招く大使館の建設を主張する展示も全国で行ってきた。昨年、千葉県内での展示に足を運んで、宇宙人について話を聞こうとしたが、まず言われたのがこれ。
「マスクは着けないほうがいいですよ」
ワクチンを打ってしまったが、まずかったか?と尋ねると……。
「ああ、もう死にますね」
死亡宣告を受けた記者だったが、今日も元気に、おかしなデモを追いかけている。(つづく)