2024年8月23日(金)
主張
離婚後共同親権
子どもの権利守る取り組みを
多くの不安と批判を押し切って、離婚後「共同親権」を導入する民法の改定が先の通常国会で強行されました。2年以内に施行されます。子どもに被害を及ぼさないための取り組みが急がれています。
離婚する父母が合意していなくても裁判所が離婚後の共同親権を定めることができるようにする改定には、「子どもの証言があるのに裁判所がDVを認定してくれなかった」「話し合って解決できないから離婚に至るので、離婚後に子に関わる問題を話し合うことができるとは思えない」などの声がよせられました。採決後もDV被害当事者や医療・福祉などの現場から怒りの声が上がっています。
反対署名が短期間で24万人以上集まり、与党からも懸念が相次いだ法案を短期間の審議で採択したことは重大です。
■意見聴取の保障を
改定民法が「子は親権に服する」という規定をやめ、親の責務として「その子の人格を尊重し」「自己と同程度の生活を維持することができるように扶養しなければならない」としたことは一歩前進です。しかし依然、「親権」の用語が残り、子どもの意見表明権の明記がありません。
子どもの意向や心情を把握し子どもの福祉に向き合うために、「子どもの権利と福祉を実現する親と社会の責任・責務」という位置づけを法律で明確にすることが必要です。
現状のままでは、裁判所が共同親権をすすめてきた場合、子ども自身や児童精神科医師・児童心理士など専門家の意見を踏まえる保障がありません。子どもの人権を保障するには、それらの意見を聞く場や公費による弁護士制度、政府から独立した子どもの権利救済機関が必要です。国による養育費立て替え払い制度も求められます。
家庭裁判所の増員・物的体制の強化も必須です。全司法労働組合は業務激増の恐れを指摘しています。国家予算の0・3%の司法予算のもと、公務員削減で、現状でも家裁の業務はパンクしています。人員不足によって子どもやDV被害者の意見が封じられる事態があってはなりません。
高校無償化など各種の子育て支援策で、親権者2人分の収入が合算され受給資格を得られなくなり、困窮するひとり親世帯がさらに追い込まれる事態は絶対に防がなくてはなりません。
■正しいDV理解を
これまで、多くの離婚の背景にあるDVについて裁判所が十分に認識せず、面会交流が命じられるケースも相次いできました。裁判官や調停員がDVや虐待の実態を学ぶ研修を受ける体制が必要です。
日本共産党国会議員団は身体的暴力に限らない圧迫や訴訟乱発の懸念を問いただし、一方の親が望むからといって「自由に共同親権になるわけではない」「さまざまなDVのおそれもないか検討され、少なからず(親権者として)排除されるケースもある」「どうしても合意ができない場合には単独でいくということだ」という小泉龍司法相の答弁を引き出しました。
法施行に向けこれらの観点をガイドラインに反映させると同時に、日本社会にDVや虐待への理解を深めていく必要があります。